退職勧奨・解雇・配置 / Q&A

退職勧奨が違法か迷うとき:しつこい面談と退職強要の判断材料

この記事のもくじ
  1. 裁判例で示された考え方:勧奨と強要の境目
  2. 自分の状況を当てはめる7項目
  3. しつこい面談を記録するときの順番
  4. 迷ったときの相談先:違法かどうかより、経緯を見てもらう
  5. 辞めさせるための嫌がらせに変わっているとき

退職勧奨そのものは、直ちに違法とされるわけではありません。ただし、頻度・時間・言動が社会通念上許される範囲を超えると、不法行為になり得るという考え方が、裁判例で示されてきました。違法かどうかの結論は、個別の事情による判断なので、この記事では出しません。 代わりに、判断の材料になる点と、相談の場で役に立つ記録の残し方を並べます。応じる義務がないことなど全体像は「退職勧奨は断れる?応じる義務の有無と、断り方・応じる前の条件の確かめ方」にあります。

裁判例で示された考え方:勧奨と強要の境目

厚生労働省が公表している2つの資料から、境目の考え方を確かめます。

事件 勧奨の状況(資料の記載) 判断の要点
下関商業高校事件(最高裁 昭和55年7月10日) 市立高校の教員2名が、退職勧奨の基準年齢(57歳)に達したとして勧奨を受け、初回から一貫して応じないと示していたが、市職員から多数回かつ長期にわたり執拗に勧奨された 勧奨される人は自由に意思を決められる。その任意の意思形成を妨げ、名誉感情を害する勧奨は、不法行為となる場合がある。本件は許される限界を超えたとされた
全日本空輸(退職強要)事件(大阪地裁 平成11年10月18日) 客室乗務員に対し、約4か月に三十数回の面談、約8時間に及ぶ面談もあり、社員寮への訪問や家族への働きかけもあった 退職勧奨は直ちに違法ではないが、頻度・時間・言動が社会通念上許容される範囲を超えると、違法な退職強要として不法行為になる

下関商業高校事件の資料には、年度を超えて勧奨を続け、退職するまで続けると述べたことが心理的な圧迫として挙げられています。全日本空輸事件の資料には、「寄生虫」といった発言や、大声を出す、机をたたくといった言動も記されています。

ここから読み取れるのは、回数だけで違法かどうかを決める基準は示されていないということです。裁判所は、回数・期間・1回の長さ・場所・言葉・断った後の続け方を合わせて見ています。また、全日本空輸事件の資料は、慰謝料を判断する際の考慮事情に、本人が退職していないことや弁護士が付いていたことなどが挙げられたと説明しています。事情のそろい方で結論が分かれることが分かります。

自分の状況を当てはめる7項目

自分の状況を整理するために、判断材料を表にしました。「当てはまる/当てはまらない」の答えを出すためではなく、記録を取る項目として使います。

判断材料の7項目:記録票のもとになる表
項目 確かめること 記録の例
回数と期間 何か月で何回呼ばれたか 「9月3日、9月10日、9月24日、10月8日」
1回の長さ 開始と終了の時刻 「14:00〜16:15」
場所と人数 会議室か、人数は何人か、出入りは自由か 「会議室、上司2名、ドア閉鎖」
言われた言葉 一語ずつ、できるだけそのまま 「辞めるまで続ける」「ほかに行くところはない」
断った後の続け方 断ったことへの返答、次回の予告 「断ったが翌週また呼ばれた」
呼び出しの手段 自宅・家族・業務外の連絡の有無 「帰宅後の電話が3回」
仕事・待遇の変化 断った後に仕事が減った、評価が変わった 「担当の仕事が外された(10月15日)」

この7項目のうち、言われた言葉と断った後の続け方は、後から思い出すのが難しいため、面談の直後にメモを残します。メモの取り方や録音の考え方は「退職勧奨の面談でその場で答えない準備:録音・持ち帰り・文例」にあります。

しつこい面談を記録するときの順番

状況を整えるのに、次の順で動くと無理がありません。

  1. 断った意思をメールで残す:口頭だけだと、断ったという記録が自分の側に残らない。例文は「退職勧奨の断り方:面談での言い方と断った事実をメールで残す例文」にある。
  2. 面談ごとに、7項目のメモを作る:その日のうちに。1回分を1枚にそろえておく。
  3. 呼び出しの連絡を残す:メール・チャット・メモで面談を指示されたものは、消さずに保存する。
  4. 変化が出たら、前後を比べる:断った後の仕事・評価・席・連絡の変化を、日付つきで書く。
  5. 時系列表にまとめる:相談の前に、1枚の経緯にまとめておくと、相談員や弁護士が状況をつかみやすい。

面談直後のメモの書き方(例):「10/8 14:00〜15:40 会議室 人事課長・部長と本人。『考え直してほしい』を6回。『辞めるまで毎週話す』と言われた。私は『辞める意思はない』と2回伝えた。」

証拠全般の考え方は「パワハラの証拠集め:有効な証拠の種類と今日から残す記録の手順」で扱っています。

迷ったときの相談先:違法かどうかより、経緯を見てもらう

窓口に違法かどうかだけを聞いても、その場で答えが出ないことが多いでしょう。その代わり、経緯の記録を見て、使える手続きを案内してもらうことはできます。

相談先 渡せるもの 得られること
労働局の総合労働相談コーナー 7項目の記録、時系列表 無料・予約不要の相談。対象は職場のあらゆる労働問題とされ、助言・指導やあっせんの案内がある
弁護士 記録の全体、断ったメール 個別の事情に即した判断。請求や交渉の可否の相談
労働組合 経緯の概要 組合として会社に申し入れる方法の相談

窓口の番号と受付時間は「パワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表」で確かめられます。

辞めさせるための嫌がらせに変わっているとき

勧奨を断ったあとに、仕事を与えられない、部署から外される、といった扱いが続く場合は、退職を強いる目的の嫌がらせとして整理する必要が出てきます。この場合は、辞める前に残す記録が重要になります。「パワハラで退職を強要されているとき:辞める前に残すべき記録」に、記録の項目を分けています。

次に読む記事として、面談そのものの準備を扱う「退職勧奨の面談でその場で答えない準備:録音・持ち帰り・文例」があります。

よくある質問

Q. 退職勧奨を何回受けたら退職強要と言えますか?

回数だけで線は引けません。厚生労働省の判例集が紹介する下関商業高校事件では多数回かつ長期にわたる執拗な勧奨が、全日本空輸事件では約4か月で三十数回の面談が問題になりましたが、どちらも時間の長さや言動などを含めた全体で判断されています。自分の回数が多いか少ないかより、時間・言葉・断った後の続け方を合わせて記録するほうが、相談で役に立ちます。

Q. 退職を強要されたら、会社に損害賠償を請求できますか?

裁判例には、退職勧奨が社会通念上許される範囲を超えたとして、会社側の責任を認めたものがあります。ただし、自分の場合に認められるか、いくらになるかは個別の事情で変わり、この記事では判断できません。請求を考えるなら、経緯の記録をそろえて弁護士に相談します。

Q. 退職強要を受けているとき、まず何をすればいいですか?

断る意思をメールで残し、面談の日時・長さ・言われた言葉を毎回記録します。そのうえで、労働局の総合労働相談コーナーなどに経緯を持って相談します。辞める・辞めないの判断は、記録を整えてからでも遅くありません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

退職勧奨の断り方:面談での言い方と断った事実をメールで残す例文

退職勧奨の面談でその場で答えない準備:録音・持ち帰り・文例

パワハラで退職を強要されているとき:辞める前に残すべき記録

パワハラの証拠集め:有効な証拠の5種類と今日から残す記録の手順