転職先の前職調査はある?前の会社への問い合わせとリファレンスチェック
この記事のもくじ
前の会社への問い合わせやリファレンスチェックが行われるかは、応募先や職種によって異なります。ただ、前の会社が人事データとして持つ在籍状況や勤務状況を、本人の同意なしに第三者へ答えることは、個人情報保護法の原則として認められていません。 応募先が前職に確認するときは、本人の同意を取る形が前提になります。この記事では、前職調査の形、前の会社が答えられる範囲、同意書で確かめる点を、Q&Aの形で整理します。
前職調査には、どんな形があるのか
「前職調査」と呼ばれるものは、実際には性質の違う3つに分かれます。
| 形 | 中身 | 本人の関わり |
|---|---|---|
| リファレンスチェック | 応募者が挙げた推薦者(元上司・元同僚)に、仕事ぶりを尋ねる | 本人が推薦者を選び、同意する |
| 在籍・経歴の確認 | 履歴書の勤務期間や役職が事実かを前の会社に確かめる | 同意書への署名を求められることがある |
| 本人が知らない照会 | 応募者に伝えず、前の会社に評判を尋ねる | 本人の同意がなければ、前の会社は答えにくい |
どの形がどれだけ行われているかを示す公的な統計は、筆者が確かめた範囲では見つかりませんでした。実施の有無や範囲は、応募のときの案内や、内定前後に渡される同意書で確かめるのが確実です。
前の会社は、本人の同意なしに答えられるのか
個人情報保護法27条1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。例外は、法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意を得るのが困難な場合などに限られます。
個人情報保護委員会のQ&A(Q7-12)は、退職した従業員の在籍状況や勤務状況が個人データになっている場合、第三者からの問い合わせに答えることは個人データの第三者提供に当たり、本人の同意がある場合や例外事由に当たる場合を除いて、提供できないと説明しています。つまり、前の会社の人事部が、本人の同意なく「在籍していたか」「どんな勤務だったか」を応募先に答えるのは、原則として許されません。
ここで線引きしておきたい点が3つあります。
- 個人データであることが前提:データベース化された人事情報などが対象で、記憶している個人的な印象のすべてが一律に止まるわけではない。
- 本人が同意すれば提供できる:同意書にサインした場合、答えられる範囲は同意書の内容で決まる。
- 前職調査そのものが禁じられているわけではない:本人の同意を得て行うリファレンスチェックは、一般的な採用の手続きの一つ。
「前の会社に悪く言われるのでは」という不安は、同意書にサインする前に、範囲を自分で決められることで、大きく減らせます。
同意書を求められたときに確かめる5つの点
リファレンスチェックや在籍確認の同意書を渡されたら、署名の前に次の点を確かめます。
- 誰に確認するのか:前の会社の人事か、自分が挙げた推薦者か。
- 何を確認するのか:在籍期間・役職だけか、勤務評価や退職理由まで含むか。
- いつ行うのか:内定前か、内定後か。現職の場合は、現職に知られる時期が合うか。
- 結果の扱い:確認した内容を、誰が見て、どう保管するのか。
- 断ったときの扱い:断ると選考にどう影響するかを、採用担当に聞けるか。
求職者の個人情報について、職業安定法5条の5は、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして収集し、その範囲で保管・使用しなければならないと定めています。確認の目的と範囲を採用担当に尋ねるのは、この考え方に沿った自然な質問です。
文例(在職中の応募者から採用担当へのメール):「選考にあたり、前職・現職への確認があると伺いました。現職には転職活動をまだ伝えていないため、現職への照会は、内定のご連絡をいただき、私が了承した後にお願いできますでしょうか。確認の範囲や時期について、書面でご案内いただけると助かります。」
文例(推薦者を自分で選ぶとき):「前職でご一緒したプロジェクトでの仕事ぶりについて、転職先からの確認があった場合に、お答えいただける範囲でご対応をお願いできませんでしょうか。事前に、先方からの連絡が入る時期を私からお知らせします。」
前の会社に悪く言われないか:できる準備
推薦者に頼めるのは、好意的に答えてくれる人だけにするのが現実的です。パワハラの加害者が上司しかいない場合は、同じ職場にいた別の先輩や、取引先の担当者など、仕事ぶりを具体的に語れる人を探します。
在籍や退職の事実を書面で残しておく方法もあります。労働基準法22条により、退職した労働者は、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由について証明書を請求でき、請求しない項目は書かれません。「退職の事由」を外して、在籍期間と業務の種類だけを請求すれば、経歴の裏づけを自分の手元に持てます。請求のしかたは「退職証明書の請求方法:労基法22条で会社に求められる内容と文例」にあります。
なお、同じ22条の4項は、使用者があらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信をしたり、証明書に秘密の記号を記入したりすることを禁じています。評判を伝えること一般が禁じられているわけではなく、対象は限られます。事実と違う悪評を広められたと思うときは、いつ・誰が・何を言ったかを日付つきで記録し、窓口や弁護士に事実を示して見てもらいます(名誉の侵害に当たるかは、事実関係で判断される事柄です)。不当な扱いを受けたと感じたときの相談窓口は、「パワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表」で確認できます。
面接や書類で、不安をやわらげる伝え方
前職のことで何か聞かれそうなときは、先に事実を整理して、自分から伝える方法もあります。退職の経緯を短く話す型は、「パワハラ退職の理由を面接でどう話す?前向きな言い換えの例文」と「短期離職の理由を面接で聞かれたら:パワハラが原因のときの答え方」にあります。療養のために空白期間がある場合は「療養・休職による空白期間を面接で説明する:伝え方の例文」を、退職代行を使った場合の影響は「退職代行を使ったことは転職でバレる?次の職場への影響」を見てください。
転職支援を使うときに確かめること
リファレンスチェックの有無や進め方は、応募先ごとに違います。転職支援(転職エージェント)に登録している場合は、担当者が応募先の運用を知っていることがあるので、「前職への確認はありますか」と最初に尋ねておくと、同意書の場面で慌てません。確かめたい点は、その担当者が、応募先の前職確認の有無と、同意を求められる時期を把握しているかです。同意書の内容は、署名の前に自分で読んで決めます。
転職の進め方の全体は「パワハラで転職するときの進め方:在職中に探すか辞めてから探すか」に、次の職場を選ぶときの見方は、「ブラック企業リストとは?厚労省の公表事案の見方と使い方」にあります。
よくある質問
Q. 在職中の転職活動で、現在の会社に問い合わせが行くことはありますか?
応募先が現在の会社に照会するのは、通常は本人の了承を得て行う形が想定されます。在職中の応募では、選考の途中で「現職への照会は内定後、私の了承を得てからにしてください」と書面やメールで伝えておくと、意図しない連絡を避けやすくなります。
Q. 前の会社の人に、紹介者(推薦者)になってもらえないときはどうしますか?
推薦者は、直属の上司に限りません。同じプロジェクトにいた先輩や、取引先の担当者など、仕事ぶりを具体的に話せる人を選べます。該当する人がいなければ、応募先に事情を伝え、別の確認方法で足りるか相談する方法があります。
Q. 前の会社に悪い評価を伝えられたと感じたら、どうしますか?
まず、応募先に何を確認されたのか、どんな点を指摘されたのかを聞いて、事実を整理します。そのうえで、内容に事実と違う点があるときは、総合労働相談コーナーや弁護士に相談します。条文が禁じるのは、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信などに限られ、評価全般が対象ではありません。
出典・参考にした公的な情報
- 個人情報の保護に関する法律 第27条(第三者提供の制限)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)に関するQ&A(Q7-12ほか)(個人情報保護委員会)
- 労働基準法 第22条(退職時等の証明)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 職業安定法 第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。