アカハラとは?大学で教員から受ける嫌がらせの例と相談先
アカハラ(アカデミック・ハラスメント)とは、大学や研究機関で、教員などが教育・研究上の立場や権限を背景に、学生や部下の研究者に対して行う嫌がらせを指す通称です。法律に定義された言葉ではなく、大学がハラスメント防止の規程を設けている場合は、その規程が定義と相談・調査の手続を決めています。典型は、研究指導の放棄、研究成果の横取り、退学や進路変更の強要、人格を否定する叱責などです。相談先は、学生か、大学に雇われている教職員・研究員かで変わるので、まず学内のハラスメント相談窓口の規程を確かめてください。
アカハラとは:法律の定義はなく、立場によって使える制度が違う
アカハラという言葉そのものを定めた法律はありません。ただ、受ける人の立場によって、関係する制度がはっきり分かれます。
| 受ける人の立場 | 主に関係する仕組み | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 学部生・大学院生(大学と雇用関係がない) | 各大学のハラスメント防止規程。研究成果の盗用には研究不正のガイドライン | 学内のハラスメント相談窓口、学生相談の部署、法務局の人権相談 |
| 大学に雇われている教職員・ポスドク・研究員、雇用契約のあるTA・RA | 労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)とパワハラ指針、大学の規程 | 学内の窓口、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー |
| 国家公務員・地方公務員の身分を持つ教職員(法人に雇われる職員とは別) | 公務員のハラスメント防止の仕組み | 人事院・人事委員会(公平委員会)、人事担当部署など |
労働施策総合推進法第31条は、事業主に「その雇用する労働者」の就業環境が害されないよう措置を講じることを義務づけています。雇用関係のない学生は、この措置義務の直接の対象ではありません。学生が受ける嫌がらせは、大学が自ら定めた規程で扱われるのが基本です。一方、大学に雇われて働く人が上位の教員から受ける言動は、職場のパワーハラスメント(パワハラ)として、指針の3要素(優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超える、就業環境が害される)に照らして整理できます。指針は、職務上の地位が上の人だけでなく、業務上必要な知識や豊富な経験を持ち、その協力がないと業務が進まない人の言動も「優越的な関係」の例に挙げています。研究室で指導教員や先輩研究者が持つ影響力は、この例と重なる場面が多くあります。
国公立の大学でも、大学法人に雇われている職員は上の2行目の扱いになりえます。公務員の身分があるかどうかは、所属する大学の人事部署や規程で確かめてください。身分がある人は、労働局ではなく人事委員会などが窓口になる場合があります。詳しくは公務員のパワハラ相談先と対処をご覧ください。
アカハラの典型例:研究指導・成果・進路をめぐる言動
大学や研究室で起きやすい言動を、関係しうる仕組みと並べると次のとおりです。職員の場合の欄は、パワハラ指針の6類型のどれに近いかの目安で、該当すると決めるものではありません。
| 典型的な言動 | 具体的な場面 | 職員の場合に近い指針の類型 | ほかに関係しうる仕組み |
|---|---|---|---|
| 研究指導の放棄 | 理由を示さず面談やゼミへの参加を拒む、提出した原稿を何か月も読まない | 過小な要求、人間関係からの切り離し | 研究科の指導体制・指導教員変更の手続 |
| 成果の横取り | 学生のデータやアイデアを無断で自分の名前で発表する、論文の著者から外す | ― | 研究不正(盗用)、不適切なオーサーシップ |
| 退学・進路の強要 | 「ここにいても学位は出さない」と退学や他大学への移籍を迫る、推薦書を書かないとほのめかす | 精神的な攻撃 | 大学のハラスメント防止規程 |
| 人格を否定する叱責 | 他の学生の前で長時間どなる、能力を否定する言葉を繰り返す | 精神的な攻撃 | 同上 |
| 私的な用事の強制 | 研究と関係のない買い物や引越しの手伝いを命じる | 過大な要求 | 同上 |
| 研究室内での孤立 | 実験装置や共有データを使わせない、連絡のグループから外す | 人間関係からの切り離し | 同上 |
成果の横取りは、ハラスメントとは別に、研究不正の問題としても扱われます。文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」は、盗用を「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること」と定め、論文の著者が適正に公表されない「不適切なオーサーシップ」も不正行為として認識されるようになってきている、と書いています。
厳しい指導との線引きに迷う人は多いはずです。パワハラ指針は、問題行動を繰り返す人に一定程度強く注意することは該当しない例に挙げています。研究の水準を求める指摘も、それ自体は指導です。目的が指導か、言動の手段や頻度が目的に見合っているか、という観点で、出来事を書き出してみてください。
- 学生・ハラスメント全般 → 学内のハラスメント相談窓口(名称は大学ごとに違う)
- 学生・心身のつらさ → 学生相談室・保健管理センターなどの学内の相談部署
- 研究成果の盗用 → 大学の研究不正の受付窓口(著者の扱いは規程・研究倫理の窓口)
- 雇われている教職員・研究員 → 学内の窓口、都道府県労働局
- 公務員の身分の教職員 → 人事委員会(公平委員会)・人事担当部署
- 学外で中立に話したい → 法務局の人権相談、法テラス
学内と学外の相談先:表で選び、手順は別の記事で
学内の窓口は名称も手続も大学ごとに違うため、最初に大学のウェブサイトや学生便覧で「ハラスメント防止」の規程を探します。学外の窓口は立場ごとに次のとおりです。番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。
| 立場 | 学内 | 学外 |
|---|---|---|
| 学生 | ハラスメント相談窓口、学生相談室・保健管理センター(心身のつらさ) | 法務省のみんなの人権110番(最寄りの法務局につながる)、法テラス |
| 雇われている教職員・研究員 | 学内の窓口 | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー |
| 公務員の身分のある教職員 | 人事担当部署 | 国家公務員は人事院や所属府省、地方公務員は人事委員会(公平委員会)、公立学校の教員は教育委員会 |
研究成果の無断使用が絡むときは、研究不正の受付窓口もあります。文部科学省のガイドラインが告発の対象とするのは、発表された研究成果の中の捏造・改ざん・盗用で、発表前の横取りは、まずハラスメントの窓口に話すことになります。
学内の申立て、学外の窓口、法的手段までの順番と、相談前に残す記録は、アカハラを訴える前に:大学の相談窓口・記録・学外の相談先の順番で整理しています。使いやすい窓口の見つけ方に迷うときは、みんなの人権110番とは?法務局にパワハラ・嫌がらせを相談する方法も使えます。
よくある質問
Q. 指導が厳しいだけでもアカハラになりますか?
研究の水準を求めて論文の不備を指摘することや、締切を守るよう注意することは、指導として行われるものです。人格を否定する言葉、長時間の叱責の繰り返し、理由のない指導の拒否、成果の無断使用など、指導の目的から外れた言動かどうかが整理の軸になります。該当するかは大学の規程に沿って窓口が判断するため、記録を持って相談します。
Q. 相談したことが知られて、卒業や学位審査に響かないか心配です。
相談する前に、窓口に「相手に名前が伝わる段階はどこか」「相談したことを理由とする不利益な扱いを規程でどう扱っているか」を尋ねられます。研究不正の告発については、文部科学省のガイドラインが、悪意に基づく告発でない限り告発を理由とする不利益な取扱いをしてはならないと研究機関に求めています。
Q. 大学院生でも労働局に相談できますか?
都道府県労働局のハラスメントの相談は、主に雇用されている労働者の職場のハラスメントを扱います。TA・RAなどで大学と雇用契約を結んでいれば、その仕事の場面は労働者として相談できる余地があります。学生としての立場の問題は、学内の窓口と、法務局の人権相談などが中心になります。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(令和8年10月1日適用時点の指針本文を収録)(厚生労働省)
- 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日 文部科学大臣決定)(文部科学省)
- 研究活動における不正行為への対応等(文部科学省)
- みんなの人権110番(法務省)
- あかるい職場応援団 相談窓口のご案内(公務員等)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。