退職代行で辞めても給料はもらえる?最後の給料と未払いのとき
退職代行を使っても、働いた分の給料を受け取る権利は変わりません。賃金は、通貨で、直接労働者に、全額を支払うのが原則です(労働基準法第24条1項)。そして退職後に労働者が請求すれば、会社は7日以内に賃金を支払う必要があります(同法第23条1項)。この記事では、最後の給料の受け取り方、払われないときの順番、運営形態ごとにできることの違いを順に示します。
退職代行を使っても、働いた分の賃金は払われる
労働基準法第24条の賃金の支払の原則は、次の4つです。
- 通貨で払う
- 直接労働者に払う
- 全額を払う
- 毎月1回以上、一定の期日を定めて払う(同条2項)
法令で控除が認められた税金や社会保険料、過半数労働組合または過半数代表者との書面協定がある控除を除き、会社が一方的に給料から差し引くことは認められていません。**「退職代行を使ったから払わない」「損害の分を引く」という言い方は、この条文に照らして問題になる場面です。**ただし、個別の事案が条文に違反するかどうかは、事実関係を見た窓口が判断します。
退職の意思が届いた後、辞める日までに働いた日の賃金は、通常どおり発生します。有給を使う日の賃金も同じです。有給の扱いは退職代行で有給消化はできる?交渉が必要なときの運営形態にあります。
最後の給料はいつ、どう受け取るか
最後の給料は、締め日と支払日で決まります。次の例で考えます(筆者の計算)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算の期間 | 11月1日から11月24日までの勤務分 |
| 通常の支払日 | 12月25日 |
| 退職後に請求したとき | 請求の日から7日以内の支払い(労基法第23条)。請求の書き方は後述 |
| 明細で確かめること | 基本給、手当、残業代、控除の内訳、日割りの計算方法 |
会社の締め日と支払日は、給与明細か賃金規程で分かります。退職日が締め日の前か後かで、最後の給料の計算期間が変わるため、退職日の決め方は退職代行は何日前に頼む?申込みのタイミングと退職日の決め方で扱っています。
労働基準法第23条1項は、退職した労働者の請求があれば、7日以内に賃金を支払うと定めています。請求は書面で行うと、日付が残ります。争いがある部分については、会社は異議のない部分だけでも7日以内に払うことになっています。条文の対象は賃金で、退職金は別の定め(就業規則など)にもとづくため、退職代行を使うと退職金はどうなる?規程の確かめ方と減らされたときで分けて整理しています。
払われないとき:5つの順番
払われない、減らされた、連絡が来ない、という場合は、次の順番で動きます。
- 事実を記録する。 給与明細、賃金規程、勤怠の記録、会社から言われた内容の日時を残す。
- 書面で請求する。 事業者を通すか、本人の名前で、金額と支払期限を書いて出す。
- 労働基準監督署に相談する。 賃金の不払いは労働基準法違反に当たりうる事項で、労働者は事業場の違反を労働基準監督署長または監督官に申告できます(同法第104条1項)。会社は、申告を理由に解雇その他の不利益取扱いをしてはなりません(同条2項)。申告の方法は労働基準監督署への申告のしかた:申告書の書き方と相談との違いにあります。
- 遅延利息の請求を考える。 賃金の支払の確保等に関する法律第6条は、退職した労働者の賃金(退職手当を除く)が退職の日までに払われなかった場合、退職の日の翌日から支払日まで、年14.6%を超えない範囲で政令が定める率の遅延利息を払うよう定めています。天災などのやむを得ない事由で厚生労働省令に定めるものによる遅れには、適用されません。
- 弁護士に相談する。 請求の通知、交渉、内容証明、労働審判や訴訟の代理は、弁護士が扱えます。
時効にも注意します。賃金の請求権は、労働基準法第115条と附則第143条により、当分の間3年です。退職手当は5年とされています。
運営形態でできることが違う
未払いがある場合、どの運営形態を選んだかで、動ける範囲が違います。
| 運営形態 | 未払い賃金について |
|---|---|
| 民間企業運営 | 本人の意思を会社に伝えるだけの役割(いわゆる使者)。賃金の支払いを求める交渉は担えない |
| 労働組合運営 | 実態のある労働組合であれば、組合員のために、労働組合法第6条の交渉権限にもとづき、賃金の支払いを団体交渉の事項として申し入れられる |
| 弁護士(法人)運営 | 請求の通知、交渉、内容証明、労働審判・訴訟の代理まで、契約の範囲で依頼できる |
東京弁護士会の非弁護士取締委員会は、未払いの残業代のような「法律的な問題」について、業者が報酬を得て本人に代わり会社と話し合うことは非弁行為となる可能性があると指摘しています。未払い賃金の請求まで民間企業運営の事業者に任せる形は、この指摘にふれるおそれがあるため、弁護士や労働基準監督署の窓口を別に考えます。違いの全体は退職代行の弁護士・労働組合・民間企業の違い:交渉できる範囲を比較にあります。
「交渉」が要るかどうかの見分け方は退職代行で交渉が必要になるのはどんなとき?有給・未払い賃金・退職日で整理しています。未払い賃金や有給の請求まで含めて任せたい人は、弁護士運営の退職代行を選ぶ道があります。
弁護士の仕事の範囲は弁護士の退職代行でできること:未払い賃金・有給の交渉が要る場合にまとめています。なお、回収できる金額は、証拠と会社の対応で変わり、見込みを言い切ることはできません。
請求の文例と、そろえておく記録
書面で請求するときは、金額が分かるなら金額を、分からないなら計算の明細の送付を、支払期限つきで求めます。
請求の文例:「〇月〇日付で退職した〇〇です。〇月分(〇月〇日から〇月〇日までの勤務分)の賃金について、計算の明細と支払予定日を、〇月〇日までにこのメールへの返信でお知らせください。労働基準法第23条にもとづき、請求いたします。」
そろえておく記録は次のとおりです。
- 直近の給与明細(支払日と控除の内訳が分かるもの)
- 労働条件通知書(賃金の定めが分かるもの)
- 勤怠の記録(タイムカード、勤怠システムの画面、自分のメモ)
- 会社とのやり取り(日時と内容)
会社が勤怠などの記録を保存する義務については、労働基準法第109条が、賃金その他労働関係の重要な書類を保存するよう定めています(当分の間3年)。ただ、会社が示してくれるかどうかは別の話なので、自分でも手元に控えを取っておきます。
相談できる窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表にあります。
よくある質問
Q. 退職代行を使ったことを理由に、給料を払わないと言われました。認められますか?
労働基準法第24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、全額払うよう定めています。働いた分の賃金が、退職の方法を理由に消えるという規定は、この条文にはありません。会社がそう言っているときは、発言の日時と内容を記録し、運営形態に応じて弁護士や労働基準監督署の窓口に相談します。
Q. 最後の給料は、退職後いつ振り込まれますか?
通常は、賃金規程や就業規則で決まっている支払日に振り込まれます。退職後に請求したときは、労働基準法第23条が7日以内の支払いを定めています。自分の会社の支払日は、給与明細か賃金規程で確かめてください。
Q. 未払いの給料を請求できる期間はありますか?
労働基準法第115条と附則第143条により、賃金の請求権は当分の間3年で時効にかかります。数え始めは、賃金の支払期日です。退職後に時間がたつほど請求は難しくなるので、早めに記録をそろえます。
出典・参考にした公的な情報
- 労働基準法 第23条・第24条・第104条・第109条・第115条・附則第143条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 賃金の支払の確保等に関する法律 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 退職代行サービスと弁護士法違反 その2(非弁護士取締委員会)(東京弁護士会)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働組合法 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。