パワハラのヒアリングで被害者が準備すること:聞かれる項目と伝え方
この記事のもくじ
パワハラのヒアリングは、会社が事実関係を確かめるために行うものです。被害を受けた側が準備するのは、①いつ・どこで・誰が・何をしたかを時系列でまとめた1枚、②記録の写し、③同席や録音、結果の伝え方についての希望を事前に書面で伝えること、の3つです。この記事では、聞かれやすい質問と答え方、持っていく記録、ヒアリング後に結果の連絡を求める方法を順に示します。
パワハラのヒアリングとは:会社の事実確認で行われること
パワハラの相談を受けた会社は、事実関係を迅速かつ正確に確認することが、厚生労働省の指針で求められています。指針が示す確認の進め方は次のとおりです。
- 相談者と行為者の双方から事実関係を確認する
- 双方の主張が一致せず、事実の確認が十分にできないときは、第三者からも事実関係を聴くなどの措置をとる
- それでも確認が難しい場合は、労働施策総合推進法第37条の調停など、中立な第三者機関に紛争の処理を委ねることも考えられる
また指針は、相談窓口の担当者などが、相談者の心身の状況や受け止めなどに配慮しながら、双方から丁寧に事実確認を行うことを重要としています。
一般に、ヒアリングは次のような順で進むことが多いです。ただし、順番や担当者、回数は会社ごとに違うので、最初に担当者へ「この後の流れ」を尋ねておくと見通しが立ちます。
- 相談者(被害を受けた側)から聞く
- 行為者から聞く
- 主張が食い違う点について、目撃した人など第三者から聞く
- 会社が事実を認定し、被害者への配慮や行為者への措置、再発防止を決める
- 相談者に結果を伝える
相談者が事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、会社が解雇その他の不利益な扱いをすることは、法律で禁じられています(労働施策総合推進法第31条2項)。
ヒアリングで聞かれやすい項目と、答えの準備
担当者が事実を認定するには、「いつ・どこで・誰が・何を」が欠かせません。次の表を使って、答えを先に書き出しておきます。
| 聞かれやすい項目 | 答えの準備 | 手元に用意するもの |
|---|---|---|
| いつ起きたか | 日付・時刻。分からなければ「○月上旬」など幅で | 手帳、カレンダー、メールの送信日時 |
| どこで起きたか | 会議室、執務室、電話、チャットなど | 座席表、会議の招集メール |
| 誰が、何を言った・したか | 言われた言葉はできるだけそのまま | 記録ノート、録音の該当時刻のメモ |
| その場にいた人 | 名前と、見聞きしていたと思う理由 | 出席者の分かる資料 |
| どのくらい続いたか | 回数・頻度・始まった時期 | 時系列表 |
| 業務や体調への影響 | 欠勤、受診、仕事の進め方の変化 | 受診記録、勤怠の記録 |
| これまで誰かに相談したか | 相手と日付 | 相談したメール |
| 会社に望むこと | 担当替え、行為者との接点を減らす、再発防止など | 自分の希望を書いたメモ |
答えるときのコツは4つです。
- 事実と受け止めを分けて話す。 「会議で『こんな仕事もできないのか』と3回言われた(事実)。その後、発言するのが怖くなった(受け止め)」のように区切る
- 言葉はなるべくそのまま。 「ひどいことを言われた」より、言われた言葉の再現のほうが、行為者の言い分と比べやすい
- 覚えていないことは「覚えていない」と言う。 推測で埋めると、他の部分まで疑われるきっかけになる
- 望むことは最後にまとめて伝える。 担当者が措置を考える材料になる
記録の書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき、1枚にまとめる方法はパワハラの時系列表の作り方:相談や申立てで使える経緯書の書き方で詳しく扱っています。
持っていく記録と、渡し方の注意
ヒアリングには、記録の写しを持っていきます。原本(手書きのノート、録音データの元ファイル)は自分の手元に残します。
| 記録 | 持っていく形 | 注意 |
|---|---|---|
| 時系列表 | A4で1〜2枚に印刷し、自分用と担当者用の2部 | 最初にこれを渡すと、話の順番が決まる |
| メール・チャット | 該当部分を印刷、または画面の写し | 日時と送信者が分かる形で |
| 録音 | 該当箇所の時刻と、聞き起こしのメモ | 元データは編集しない。提出するかは事前に決める |
| 受診の記録 | 通院日の一覧、診断書があれば写し | 病名などをどこまで共有するかは自分で決めてよい |
渡す範囲は自分で決めてかまいません。体調や病歴のような機微な情報について、指針は会社にプライバシーを守る措置を求めています。提出前に「この資料は誰が見るのか」を尋ねておきます。録音を提出するときの整え方はパワハラの録音を提出するとき:編集しない保存と文字起こしの作り方を見てください。
同僚など他の人の個人情報が多く写っている資料は、必要な部分以外を隠すか、担当者に口頭で場所を伝えるだけにする方法もあります。
同席・録音・場所の希望を事前に伝える
ヒアリングの形について希望があるなら、当日ではなく前もってメールで伝えます。会社が受け入れるかは会社の判断ですが、伝えた記録が残ります。
メールの例:「人事部 ○○様 ヒアリングの日程のご連絡をありがとうございます。参加にあたり、3点お願いがあります。①行為者の方と顔を合わせない場所・時間での実施をお願いします。②聞き漏らしを防ぐため、私の側で録音させていただくか、難しい場合は面談後に記録の写しをいただけますでしょうか。③ヒアリングの内容が、どなたにどの範囲で共有されるのかを事前に教えてください。」
希望の出し方の考え方は次のとおりです。
- 同席者:社内の信頼できる人や、加入している労働組合の担当者に同席してほしい場合は、名前と理由を添えて頼む。断られたら、その返事を残し、面談後に記録で補う
- 録音:自分の側で録音したいなら、事前に申し出るのが穏当。会社が断った場合の代わりの手段として、議事メモを双方で確認する方法がある(下の見出しと次の記事で扱う)
- 場所・時間:行為者と顔を合わせない動線、話の途中で休憩をとれること、終わりの時刻
相談や面談の場を録音することの考え方はパワハラ相談の場を録音してもいい?窓口・面談での記録の残し方で整理しています。
ヒアリングの後:結果の連絡を求める方法
ヒアリングの後、会社がどんな判断をし、どんな措置をとるのかは、相談者にとって最も気になる点です。指針は、事実確認の後に被害者への配慮・行為者への措置・再発防止をとることを求めていますが、措置の例の中に、結果を相談者にどう伝えるかを定めた項目は見当たりません。だからこそ、ヒアリングの当日か直後に、連絡の時期と方法を尋ねておきます。
メールの例:「本日はヒアリングの時間をいただきありがとうございました。本日お伝えした内容の要点を下に記します。相違があればご指摘ください。また、事実確認の結果と、とられる措置について、いつごろ、どのような方法でご連絡いただけるかを教えていただけますか。」
このメールに、当日話した要点(日時・出席者・自分が伝えた事実・会社から説明されたこと)を箇条書きで添えると、後で「言った・言わない」になるのを防げます。
結果の連絡が来ないまま時間が過ぎる、措置の説明がない、といったときは、次の記事パワハラを相談しても会社が対応しないとき:外へ出す前に確かめることで次の一手を整理しています。ヒアリングの後に職場での扱いが悪くなったと感じるなら、パワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処も読んでください。
よくある質問
Q. ヒアリングで話したことは、加害者にそのまま伝わりますか?
会社は事実を確かめるために行為者からも話を聞くので、どんな言動が問題になっているかは伝わります。一方で、指針は相談者・行為者のプライバシーを守る措置を会社に求めています。誰の名前や証拠を、どこまで行為者に示すのかは、ヒアリングの前に担当者に尋ねて、希望を伝えておけます。
Q. 途中で泣いたり、言葉に詰まったりしても大丈夫ですか?
指針は、相談に当たる担当者が相談者の心身の状況や受け止めに配慮することを重要としています。休憩を求めたり、話しきれない部分を後で書面で補ったりしてかまいません。あらかじめ時系列のメモを用意しておけば、詰まったときに読み上げることもできます。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第31条(措置義務と、事実確認への協力を理由とする不利益取扱いの禁止)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。