マタハラ後の転職:子育てと両立しやすい職場を見極める確認点
マタハラの後に両立しやすい職場へ移りたいときは、「制度がある」ではなく「使われている」を確かめるのが要点です。確かめる順番は、公開情報(くるみん認定や育児休業の取得状況の公表)、求人票と就業規則、面接での質問の3段階です。この記事では、それぞれの段階で何を見て、何を聞くかを具体的に並べます。
前の職場で起きたことの整理は育休明けのマタハラ:降格・配置転換・嫌味を受けたときの整理に、辞めるかどうかの判断はマタハラで退職を迫られたら:応じる前に確かめることと転職の考え方にあります。転職活動の全体の進め方はパワハラで転職するときの進め方:在職中に探すか辞めてから探すかと共通です。
制度が「ある」と「使われている」は別:確かめる3段階
妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)の指針は、制度等の利用を妨げたり、利用したことを理由に嫌がらせをしたりする言動を、類型として挙げています。制度が就業規則に載っていても、使う人に嫌な顔をする運用があれば、同じことが起こります。そこで、書面で分かることと、人に聞かないと分からないことを分けて確かめます。
| 段階 | 見るもの | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|---|
| 1 公開情報 | くるみん等の認定、育児休業の取得状況の公表、女性活躍推進法の情報公表 | 会社全体の取組と実績 | 配属先の上司・同僚の実際 |
| 2 書面 | 求人票、就業規則(育児・介護休業規程)、労働条件通知書 | 制度の対象者・期間・条件 | 実際に使えているか |
| 3 対話 | 面接、面談、職場見学での質問 | 利用実績、配属先の運用 | 回答が書面と合うか(内定後に書面で確認) |
1段階目で応募先を絞り、2段階目で条件を読み、3段階目で運用を確かめる、という順に進めると、面接で聞くことが少なく済みます。
公開情報で調べる:認定と公表
くるみん認定
くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定した企業が、計画の目標を達成するなど一定の基準を満たしたときに、厚生労働大臣から受ける認定です。認定を受けた企業は「くるみんマーク」を求人広告や取引書類などに付けられます。厚生労働省の説明では、より高い水準の取組を行った企業が受けるプラチナくるみん、2022年4月に創設されたトライくるみんもあります。2025年4月1日から認定基準が改正され、マークも新しくなりました。
認定企業は、厚生労働省の「認定企業一覧」のページや、「両立支援のひろば」で調べられます。基準の数値は改正されているため、古い記事ではなく、厚生労働省のリーフレットで確かめてください。
育児休業の取得状況の公表
育児・介護休業法22条の2は、常時雇用する労働者が300人を超える事業主に、育児休業の取得の状況を毎年少なくとも1回公表するよう定めています。公表する項目は省令で決まります。公表の場所は会社ごとに違うので、採用ページや会社案内を探し、見当たらなければ面接で尋ねます。300人以下の会社には、この公表義務はありません。
女性活躍推進法の情報公表
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律20条は、常時雇用する労働者が300人を超える事業主に、男女の賃金の差異、管理的地位にある労働者に占める女性の割合、職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績などの公表を求めています。2026年4月1日の改正法の施行から、101人以上300人以下の事業主にも、男女間賃金差異と管理的地位にある労働者に占める女性の割合の公表が必須になっています(同条2項)。求職者が職場を選ぶ材料にするための制度です。公表の場所は会社ごとに違うので、採用ページや会社案内から探します。
認定がないことの読み方
認定は会社が行動計画を立てて申請する制度です。認定がない会社が劣ると決めることはできません。逆に、認定があっても、それは会社全体の取組を見たものです。自分が配属される部署の運用は、3段階目の対話で確かめます。
制度の中身を確かめる:法律の最低ラインと聞く点
法律が最低限として決めていることと、応募先で確かめることを並べると次のとおりです。
| 項目 | 法律で決まっていること | 応募先で確かめること |
|---|---|---|
| 3歳未満の子の短時間勤務 | 育児・介護休業法23条。3歳に満たない子を育てる労働者の申出で、所定労働時間を短縮する措置を会社が講じる。ただし労使協定で、継続雇用が1年に満たない人などを対象から外せる | 入社直後から使えるか。勤続年数の条件があるか |
| 3歳から小学校就学前の子 | 同法23条の3。始業時刻の変更、在宅勤務、短時間勤務、休暇などのうち2つ以上の措置を会社が講じる | 会社がどの措置を選んでいるか(就業規則) |
| 利用したことによる不利益 | 均等法9条3項、育児・介護休業法10条・23条の2。利用等を理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止 | 利用者の評価、昇進、担当業務がどう扱われているか |
| 上司・同僚の嫌がらせの防止 | 均等法15条、育児・介護休業法25条。相談体制の整備などの措置義務 | 相談窓口が誰か。使った人がいるか |
転職した直後は、勤続1年未満であることが制度の対象外になる条件に当たる場合があります。「入社すれば使えるはず」と考えず、求人票の段階で対象の条件を読むのが安全です。
求人票と就業規則では、次の項目を一つずつ見ます。
- 所定労働時間と、月の残業時間の平均(固定残業代の有無も)
- 短時間勤務、始業時刻の変更、在宅勤務のうち、どれが制度にあるか
- 子の看護のための休暇や年次有給休暇が、入社後いつから使えるか
- 転勤や部署異動の有無と、育児中の配慮の定め
- 就業規則(育児・介護休業規程)を、内定前後に見せてもらえるか
面接・面談で聞く質問と文例
利用実績を聞くときは、人数・職種・期間といった数や事実で答えられる質問にします。「両立しやすい職場ですか」と聞くと、「はい」で終わってしまうからです。
文例(利用実績を聞く):「育児と両立しながら働いている社員の方は、どのくらいいらっしゃいますか。短時間勤務を使っている方の職種と、その後の評価や昇進の扱いについても伺えますか。」
文例(急な休みの対応を聞く):「お子さんの発熱などで急に休むとき、チームではどのように業務を引き継いでいますか。」
文例(書面で確認する):「入社後の勤務時間や休暇の扱いを、労働条件通知書と就業規則で確認させていただけますでしょうか。」
回答の見方は次のとおりです。
- 人数・職種・年数が具体的に出てくるなら、運用の実態がある。
- 「前例はないが相談に乗る」「頑張ってもらえれば」は、制度の利用実績がまだ薄いことを示す。
- 質問に不快な反応があった場合は、入社後に利用を言い出す場面で同じ反応が返る可能性を考える材料にする。
質問の順番は、選考の序盤では担当したい仕事と貢献できることを先に伝え、利用実績は選考が進んだ段階か内定後に確かめるのが聞きやすい流れです。聞きにくいときは、転職支援の担当者に、応募先の実績の確認を頼む方法もあります。
前の職場を辞めた理由は、「両立できる環境で長く働きたい」を中心に、相手を責めない形にまとめます。例文はパワハラ退職の理由を面接でどう話す?前向きな言い換えの例文にあります。職場の公開情報の調べ方の全般はパワハラが少ない職場の選び方:公開情報で確かめる10項目でも扱っています。
公的な窓口と転職支援の使い分け
子育て中の人が使える公的な窓口として、ハローワークにはマザーズハローワークがあります。厚生労働省の説明では、お子さん連れでも利用しやすい環境で、仕事と子育ての両立を支援する窓口です。使い方の全体はハローワークの転職相談の使い方:失業中・在職中に受けられる就職支援にまとめています。
民間の転職支援を使うなら、子育て中の人を対象にしたサービスも選択肢の一つです。職業安定法でいう職業紹介は、有料で行うには厚生労働大臣の許可が要ります(同法30条)。最初の面談で、次の3点を確かめておくと比べやすくなります。
- 有料職業紹介の許可を受けた事業者か
- 紹介する求人について、育児との両立の実績(利用者数、復帰後の働き方)を事実で示せるか
- 応募のペースや面接の日程を、子どもの予定に合わせて調整してもらえるか
マタハラの経緯を記録として残してあるかどうかは、転職の可否とは別に、後で相談したくなったときの材料になります。退職や転職を決めたあとに残る手続きは、前掲のマタハラで退職を迫られたら:応じる前に確かめることと転職の考え方で整理しています。
よくある質問
Q. くるみん認定のない会社は、避けたほうがよいですか?
避ける必要はありません。認定は会社が申請して受けるもので、申請していない会社もあります。認定がないことだけで両立のしやすさは判断できないので、認定の有無は確認の入口と考え、育児休業の取得状況の公表や、面接で聞く利用実績と合わせて見てください。
Q. 転職先の面接で、子どもがいることや育児の希望を話してもよいですか?
働き方の希望として話すのは問題ありません。ただし、序盤の面接では担当したい仕事と貢献できることを先に伝え、短時間勤務などの利用実績を詳しく聞くのは、選考が進んだ段階か内定後が聞きやすいタイミングです。条件は口頭で終わらせず、労働条件通知書や就業規則で確かめます。
Q. 入社したばかりでも、短時間勤務は使えますか?
法律上、育児・介護休業法23条の短縮措置は、会社が労使協定を結べば、継続して雇用された期間が1年に満たない人を対象から外せます。転職直後に使えるかどうかは会社の規程で変わるため、応募の段階で就業規則の定めを確認してください。
出典・参考にした公的な情報
- くるみん認定・プラチナくるみん認定・トライくるみん認定企業について(厚生労働省)
- 育児・介護休業法 第10条・第22条の2・第23条・第23条の2・第23条の3・第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 第9条・第20条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 男女雇用機会均等法 第9条・第15条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- マタハラ指針(平成28年厚生労働省告示第312号)令和8年10月1日適用(厚生労働省)
- ハローワークの主な専門窓口(マザーズハローワークなど)(厚生労働省)
- 職業安定法 第4条・第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。