記録と証拠 / 手順

残業の証拠の集め方:タイムカードと自分の記録で長時間労働を示す方法

この記事のもくじ
  1. 会社は労働時間を記録する立場にある
  2. 自分で残す記録:毎日つける項目と裏づけ
  3. 長時間労働の記録が見られる3つの場面
  4. 記録を持って相談する先と、気をつけること

残業の証拠は、会社に残る記録(タイムカード・入退館・パソコンの使用時間など)と、自分で毎日つける記録の2本立てで残します。自分の記録には、始業と終業の時刻だけでなく、その時間に何の仕事をしていたか、誰の指示だったかを書きます。そのうえで、交通系ICカードの履歴や業務メールの送信時刻のように、時刻を別の形で裏づけられるものを添えると、記録の信用が上がります。過大な仕事を押し付けられて長時間働かされている場合、この記録は残業代の相談だけでなく、労災や離職理由の判断でも材料になります。

このページは、残業代の請求の仕方ではなく、パワハラの過大な要求を示す記録として長時間労働をどう残すかを扱います(残業代の請求はサービス残業の相談先が近い内容です)。

会社は労働時間を記録する立場にある

まず、会社の側にどんな記録があるはずかを知っておきます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、使用者が労働日ごとに始業・終業の時刻を確認して記録すること、その方法は原則として、使用者が自ら現認するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎にすることとしています。

自己申告で労働時間を把握している会社については、申告した時間と、入退場記録やパソコンの使用時間など社内にいた時間のデータとの間に著しい差があれば、実態調査をして補正することをガイドラインは求めています。申告できる残業時間に上限を設けるなど、正しい申告を妨げる措置をとってはならないとも書かれています。

会社にあるはずの記録 根拠
出勤簿・タイムカードなど労働時間の記録 ガイドライン。労働基準法第109条により3年間保存(附則第143条の経過措置)
賃金台帳の労働時間数・時間外労働時間数 ガイドラインが労働基準法第108条などにもとづき記入を求めている
労働時間の状況の把握 労働安全衛生法第66条の8の3。医師による面接指導を行うために、事業者が把握しなければならない

会社に記録があっても、実際より短く書かれていることがあります。だからこそ、自分の記録と照らし合わせられる状態にしておくことが大切です。

自分で残す記録:毎日つける項目と裏づけ

自分の記録は、その日のうちに書くことが基本です。後でまとめて書くと時刻があいまいになり、信用されにくくなります。

労働時間の記録表(1日1行)
日付 出社 業務開始 休憩 業務終了 退社 していた仕事 指示した人・方法 裏づけ
例:10/6 8:10 8:15 12:30〜12:45 22:20 22:35 翌朝提出の見積3件 課長が18時に口頭で「今日中に」 IC履歴22:41、送信メール22:18
例:10/7 8:05 8:10 なし 21:50 22:00 会議資料の作り直し 課長がチャットで指示 チャット17:52

書き方のポイントです。

  1. 出社・退社と、業務の開始・終了を分ける。 着替えや待機の時間も労働時間に当たる場合があるため、両方を書いておきます。ガイドラインは、会社の指示で行う準備や後始末の時間、指示があればすぐ業務に就くよう求められて待機している時間(手待時間)、参加が義務づけられた研修の時間などを、労働時間として扱う例に挙げています。
  2. 休憩は実際に取れた時間を書く。 電話番をしながらの昼食は、休憩が取れていないことがあります。
  3. していた仕事と、指示した人を書く。 「勝手に残っていた」と言われないための材料です。指示のメールやチャットは保存しておきます。
  4. 裏づけを一つ添える。 交通系ICカードの乗車履歴、業務メールの送信時刻、家族に送った「今から帰る」のメッセージなどです。

裏づけを集めるとき、会社のシステムから記録を持ち出したり、他の人の記録をのぞいたりすることは避けます。業務メールの送信時刻なら、画面に表示される時刻を自分の記録表に書き写す方法で足ります。持ち出してよい範囲の考え方はパワハラの証拠保全:退職前・異動前にしておく保存と持ち出しの線引きで扱います。日々の記録を続ける工夫はパワハラを日記で記録する方法も参考にしてください。

長時間労働の記録が見られる3つの場面

労働時間の記録は、残業代の相談だけで使うものではありません。パワハラの相談で読者が出会う主な場面を並べます。

労災(精神障害)。 認定基準の評価表には、長時間労働に関する目安があります。発病直前の1か月におおむね160時間を超える時間外労働などは、それだけで心理的負荷が「強」とされる特別な出来事です。また、発病直前の連続2か月に1か月あたりおおむね120時間以上、連続3か月に1か月あたりおおむね100時間以上の時間外労働は「強」の例です。ここでいう時間外労働は、週40時間を超えて働いた時間です。目安の時間に届かなくても、時間数だけで判断するものではないとされています。

離職理由(雇用保険)。 ハローワークの特定受給資格者の範囲には、離職直前6か月の間に、いずれか連続3か月で45時間、いずれか1か月で100時間、または連続する2か月以上の平均で1か月80時間を超える時間外労働が行われたため離職した人が含まれています。判断するのはハローワークで、そのときに労働時間を示す資料が求められます。

残業代の請求。 賃金を請求する権利は、労働基準法第115条と附則第143条により、当分の間3年で時効にかかります。請求できるかや金額は、労働基準監督署や弁護士に記録を示して相談します。

なお、長時間労働がそのままパワハラになるわけではありません。パワハラ指針は、業務の繁忙期に業務上の必要から、担当者に通常時より一定程度多い業務を任せることを、過大な要求に該当しないと考えられる例に挙げています。一方で、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制は該当する類型です。だから記録には、時間だけでなく「誰が、いつ、どんな量や期限を指示したか」を残します。繁忙期の一時的な増加なのか、特定の人にだけ続いているのかは、期間と他の人との差で見えてきます。

時間外労働の時間数は、記録表から数えておくと相談が早く進みます。たとえば、休憩1時間で9時から22時まで週5日働くと、1日12時間で週60時間、週40時間を超える分は20時間になり、4週間では80時間になります(筆者の計算)。

記録を持って相談する先と、気をつけること

残業代の不払いや長時間労働は、労働基準法などの違反が疑われる場合、労働基準監督署に申告できます。申告したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、労働基準法第104条で禁じられています。申告の手順は労働基準監督署への申告のしかた、残業の強要がつらいときの動き方はサービス残業の強要がつらいとき:労働時間の記録と労基署への相談にまとめています。窓口の番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧で確かめてください。

記録をつけている間も、体の限界を超えないことを優先してください。長時間労働が続いて眠れない、食べられないといった状態があれば、受診や休むことを考えます。体調の残し方はパワハラによる体調の変化を記録する、無視のように形に残りにくい行為の記録は無視のパワハラを証拠に残すにはで扱っています。記録そのものがまだ何もない人は、パワハラの証拠がないときにできることから読んでください。

よくある質問

Q. 会社に「勝手に残っていただけ」と言われそうです。

ガイドラインは、使用者の明示または黙示の指示で業務に従事する時間は労働時間に当たるとしています。指示があったことを示すために、残業を指示されたメールやチャット、締切の設定、終業後に届いた業務連絡などを、時刻と一緒に残しておきます。労働時間に当たるかの最終的な判断は、労働基準監督署や弁護士などに記録を示して相談してください。

Q. 手書きのメモだけでも残業の証拠になりますか?

毎日その時に書いたメモは、経過を示す材料になります。ただ、自分で書いたものだけだと信用を疑われることもあるので、交通系ICカードの利用履歴や、業務メールの送信時刻など、別の記録で時刻を裏づけられるようにしておくと説明しやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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