パワハラの証拠に写真・動画を残すとき:撮ってよいもの・避けたいもの
この記事のもくじ
パワーハラスメント(パワハラ)の跡は、写真や動画で残せるものがあります。撮っておきたいのは、壊されたり捨てられたりした自分の物、けが、自分に向けた貼り紙やメモ、積み上げられた仕事や隔離された席など、目に見える形で残った跡です。反対に、同僚や顧客の顔、他人の私物、立ち入りを許されていない場所は撮らないほうが安全です。撮った写真は、撮影日時が分かる元のデータのまま、別の場所にもコピーして保存します。
殴られた、物を投げつけられた、身の危険を感じるといったときは、撮影より先にその場を離れて安全を確保し、警察への相談を考えてください。番号の使い分けは職場で暴力・脅しを受けたときの110番と#9110にまとめています。
パワハラの証拠として写真・動画で残せるもの
写真や動画が役に立つのは、言葉ではなく物や体に跡が残る出来事です。言われた言葉は録音やメモ、届いた文章はスクショで残すのが向いています。写真で残せるものを、パワハラ指針の類型と並べると次のようになります。
| 残せるもの | 指針で近い類型 | 撮るときのこつ |
|---|---|---|
| 投げつけられた物、壊された備品や私物 | 身体的な攻撃(物を投げつけること) | 壊れた部分の近くの写真と、場所の分かる全体の写真の2枚 |
| 打撲・すり傷などのけが | 身体的な攻撃 | その日のうちに撮り、数日おきに経過も撮る |
| 自分の机や画面に貼られた中傷の貼り紙・メモ | 精神的な攻撃 | 剥がす前に、貼られた場所ごと撮る。剥がした紙は保管する |
| ホワイトボードや掲示物の名指しの書き込み | 精神的な攻撃 | 消される前に撮る。周りの書き込みも入れて場所を示す |
| 別室への席の移動、一人だけ離された机 | 人間関係からの切り離し | 移動の前後が分かる写真を撮り、指示の日時をメモする |
| 机に積まれた明らかに過大な量の書類 | 過大な要求 | 量が分かるように撮り、指示された期限をメモする |
| 仕事を取り上げられ、空になった机や棚 | 過小な要求 | 以前の状態の写真があれば並べて残す |
指針の例は限られた列挙ではなく、写真に写った出来事がパワハラに当たるかどうかは、会社の相談窓口や労働局、弁護士が経緯とあわせて判断します。写真は、その判断の材料の1つです。
暴力を受けた、物を投げつけられたといった場合は、写真を撮るより先に、その場を離れて安全を確保してください。けがの写真は、受診して医師に経過を伝えることと組み合わせると、いつどうしてできたかを示しやすくなります。受診の仕方はパワハラで診断書をもらうにはで扱っています。
撮影の手順:日時と場所が分かるように撮る
写真は、撮り方しだいで「いつ・どこで・何が」を示せるかが変わります。次の順に撮ると、あとで説明しやすくなります。
- 全体を1枚撮る。 部屋のどこにある机か、どの壁の掲示物かが分かる、引いた写真です。
- 近づいて1枚撮る。 壊れた部分、貼り紙の文字、けがの様子がはっきり分かる写真です。
- 大きさが分かる物を一緒に写す。 けがや傷の写真では、定規やペンを横に置くと大きさが伝わります。
- 撮った直後にメモを書く。 撮った日時、場所、何を撮ったか、それが起きた経緯(誰がいつしたのか、自分が気づいたのはいつか)を書きます。
- 元の写真を加工しない。 明るさの調整や切り取りは、コピーした写真に対して行います。
スマホで撮った写真には、多くの場合、撮影日時などの情報がデータとして付いています。この情報は、メッセージアプリで送ったり、SNS向けに加工したりすると消えることがあるので、元の写真のファイルをそのままパソコンや外部の保存先にコピーします。日付の入ったカレンダーや、日時の表示された画面を一緒に写しておく方法も、撮影日の手がかりになります。
撮らないほうがよいもの・他人が写るときの注意
証拠を残したい気持ちが強いと、つい広く撮りたくなります。けれども、撮り方によっては自分が問題にされる側になるおそれがあります。避けたいものを理由と一緒に並べます。
| 避けたいもの | 理由 |
|---|---|
| 同僚や顧客の顔が分かる写真 | 関係のない人の姿を記録することになる。必要なら顔が写らない角度で撮る |
| 加害者とされる人の私物、机の中、バッグ | 他人の私的な領域を撮ることになり、自分が問題にされるおそれがある(指針は、労働者の私物の写真撮影を個の侵害の例に挙げている) |
| 他人のパソコンの画面、顧客の書類 | 顧客情報や機密が写り込み、会社の情報管理の規程に触れるおそれがある |
| 立ち入りを許されていない部屋、更衣室 | 刑法130条は、正当な理由なく人の看守する建造物等に侵入することを罰すると定めている |
| 隠したカメラで職場を撮り続ける動画 | 関係のない人の姿や会話を長時間記録することになる |
特に気をつけたいのは、相手の私物や机の中を撮ることです。パワハラ指針は、労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすることを、「個の侵害」に当たると考えられる例に挙げています。これは会社側や上司が労働者に対して行う行為の例ですが、同じように他人の私的な領域を撮れば、相手や会社から問題にされるおそれがあります。自分に向けられた行為の跡だけを撮ります。
写るのは避けられない同僚の姿がある場合は、顔の写らない角度を選び、撮った写真は相談先に見せる以外には使わないようにします。会社の情報の写り込みについては、メールやチャットの残し方を扱ったチャットツールのパワハラを証拠に残す方法と同じ考え方です。
動画で残すときに気をつけること
動画は、物を叩く音や怒鳴り声、繰り返される様子まで残せる一方で、写す範囲が広くなりやすいものです。動画を撮るなら、次の点を決めてからにします。
- 自分の安全を先にする。 相手がカメラに気づくと、状況が悪くなることがあります。危ない場面では、撮るよりも離れることを選びます。
- 自分が当事者の場面に絞る。 自分が関わっていない会話を撮り続けることは、録音と同じく別の問題を生みやすくなります。声の記録の考え方は無断で録音してもいいかを整理した記事で扱っています。
- 撮った直後に、何分ごろに何が映っているかをメモする。 長い動画の聞きどころの示し方は、録音の時刻メモと同じです。
- 元のファイルを編集しない。 必要な部分を切り出すときも、コピーで行います。
動画をSNSに載せることは避けます。映っていることが本当でも、公開のしかたによっては自分が責任を問われるおそれがあります(理由はパワハラの録音をSNSで公開していい?)。
撮った写真・動画の保存と、相談先への出し方
撮ったものは、1か所にしかない状態をなくすことが大切です。
- 撮った日のうちに、私物のパソコンや外部の保存先にコピーします。会社の端末やフォルダには置きません。
- ファイル名を「1015_机の貼り紙_全体」「1015_机の貼り紙_近く」のように、日付と中身で付けます。
- 写真ごとのメモ(いつ、どこで、何を、どんな経緯で)を、同じフォルダに一覧表で置きます。
- 剥がした貼り紙や壊された物そのものが手元にある場合は、袋に入れて日付を書き、捨てずに保管します。
置き場所の選び方は記録の保管方法で詳しく扱っています。写真に写った場面をその場で見ていた同僚がいれば、写真と合わせて話を聞かせてもらえるかを考えます。頼み方は同僚に証言を頼むときの文例にまとめています。
写真を見せる先は、会社のハラスメント相談窓口、労働局、弁護士などです。写真だけで状況が伝わるとは限らないので、メモや他の記録と一緒に、日付順に並べて持っていくと話が進みます。受診してけがや体調の変化を記録に残す方法はパワハラで診断書をもらうにはで説明しています。
よくある質問
Q. けがをしたのですが、写真だけで証拠になりますか?
写真はけがの見た目を残せますが、何が原因でいつできたのかまでは写りません。医療機関を受診して、いつ、どうしてけがをしたかを医師に伝え、診断書を書いてもらうと、写真と合わせて経過を示せます。暴力を受けた場合は、警察への相談も考えてください。
Q. 撮った写真をスマホのアプリで明るくしてもいいですか?
見やすくしたい場合は、元の写真を残したまま、コピーした方を加工します。加工した写真しか残っていないと、何を変えたのかを説明しなければならなくなります。元の写真には撮影日時などの情報が付いていることが多いので、手を加えずにとっておきます。
Q. 自分の机が勝手に移動され、一人だけ離れた席にされました。撮ってもいいですか?
自分の席や自分に割り当てられた場所の様子を撮ることは、記録として考えやすい場面です。周りの同僚の顔や画面が写らない角度で、席の位置が分かる全体の写真と、変化の分かる写真を撮り、いつ誰の指示で動かされたかをメモに残してください。
出典・参考にした公的な情報
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。