記録と証拠 / 手順

パワハラの証拠になる証言を同僚に頼むとき:頼み方の文例と陳述書

この記事のもくじ
  1. 証言が使われる場面と、同僚を守る決まり
  2. 頼む相手の選び方:直接見聞きした人を優先する
  3. 負担をかけない頼み方:3段階で進める
  4. 見聞きしたことを書面にしてもらうとき
  5. 頼んだ後に気をつけること

同僚の証言は、パワーハラスメント(パワハラ)の場面を本人以外が見聞きしていたことを示せる材料です。頼むときは、①その場を直接見聞きした人を選ぶ、②「覚えているか」の確認から始めて段階的に頼む、③自分の言葉で書いてもらい、こちらは文面を作らない、の3点を守ります。証言が実際に使われるのは、会社の事実確認、労働局の調停やあっせん、労災の調査、裁判などの場面です。この記事では、頼む相手の選び方と文例、見聞きしたことを書面にしてもらうときの項目を順に示します。

証言が使われる場面と、同僚を守る決まり

まず、証言がどこで使われるかを知っておくと、相手に何を頼めばよいかがはっきりします。

場面 証言がどう扱われるか 出典
会社の事実確認 パワハラ指針は、相談者と行為者の主張が一致しないときは第三者からも事実関係を聴くことなどを、会社がとる対応の例に挙げている 厚生労働省 パワハラ指針
労働局の調停 調停を行う委員会は、必要と認めるときは、当事者と同じ事業場に雇用される労働者などの参考人に出頭を求め、意見を聴くことができる 労働施策総合推進法第38条で準用する男女雇用機会均等法第26条
労働局のあっせん あっせん委員は参考人の意見を聴くことができる 個別労働関係紛争解決促進法第13条
労災の調査 労働基準監督署は、請求した本人や関係者から聴いた内容などをもとに事実を認定する 精神障害の労災認定基準
裁判 証人尋問が行われることがある。どの証拠を調べるかは裁判所が判断する 裁判所 民事事件Q&A

同僚が会社の事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、会社が解雇その他の不利益な取扱いをすることは、労働施策総合推進法第31条で禁じられています。頼むときに「話したことで不利に扱われないよう、法律で決まりがある」と伝えられると、相手の不安を少し軽くできます。

ただし、この決まりがあっても、職場での気まずさまでは消せません。相手の立場への配慮が、頼み方の中心になります。

頼む相手の選び方:直接見聞きした人を優先する

証言の重みは、その人が何をどれだけ直接見聞きしたかで変わります。頼む前に、場面ごとに「その場に誰がいたか」を記録から書き出します。

頼む相手を選ぶ早見表
相手 強み 気をつけること
その場にいて直接見聞きした同僚 日時・言葉・様子を具体的に話せる 加害者と同じ部署なら負担が大きい
同じ扱いを受けていた同僚 繰り返しや対象の偏りを示せる 本人も被害を抱えていることがある
後から話を聞いた人(家族・友人を含む) 当時あなたが困っていた様子を示せる 出来事そのものは見ていない
退職した元同僚 会社との関係を気にせず話せることがある 記憶が薄れている場合がある
他部署・取引先の人 利害関係が薄い 業務上の関係を壊さない配慮が要る

一人に全部を頼むより、場面ごとに見ていた人が違えば、それぞれに一つの場面だけを頼む方が相手の負担は小さくなります。職場で信頼できる人を見つけるところから始める場合は、パワハラで職場に味方を作る:同僚に話す範囲と協力の頼み方が先に読む記事です。

頼まない方がよい相手もいます。加害者と親しい人、会社の人事担当として調査する立場の人、あなたに証言を頼まれたことを周りに話してしまいそうな人です。頼んだこと自体が加害者に伝わると、状況が悪くなるおそれがあります。

負担をかけない頼み方:3段階で進める

いきなり「証言してほしい」と頼むと、多くの人は身構えます。段階を分けて、相手が「ここまでなら」と選べるようにします。

  1. 覚えているかを確かめる。 「あの日の会議のこと、覚えていますか」と聞くだけにします。ここでは協力を頼みません。
  2. 記憶をメモに残してもらう。 覚えていると言ってくれたら、本人の手元に、見たことを日付つきで書き留めておいてもらうよう頼みます。こちらに渡すかどうかは相手が決めます。
  3. 必要な場面で話してもらう・書面にしてもらう。 会社の事実確認、労働局の手続、労災の調査などで聞かれたときに話してもらうこと、必要になったら書面にしてもらうことを頼みます。

文例(1段階目・口頭で):「少し聞いてもいいですか。6月3日の定例会議で、課長が私に大きな声で話していたのを覚えていますか。覚えていなければ大丈夫です。」

文例(2段階目・メールで):「先日はありがとうございました。もしよければ、あの日に見たことや聞いたことを、覚えている範囲でご自身のメモに残しておいていただけますか。私に送っていただく必要はありません。後で会社に相談することになったとき、思い出す助けになればと思っています。」

文例(3段階目・会社に相談した後):「会社の相談窓口に相談し、事実確認が始まることになりました。担当の方から話を聞かれることがあるかもしれません。そのときは、見たことをそのまま話していただけると助かります。断っていただいても構いません。」

会社のメールやチャットで頼むと、内容が会社に見られることがあります。私的な連絡先で、相手の都合のよい時間に連絡します。

見聞きしたことを書面にしてもらうとき

手続によっては、同僚が見聞きしたことを書面にまとめてもらう場面があります。裁判の手続などで、本人が見聞きした事実や経験を文章にまとめた書面が「陳述書」と呼ばれて提出されることもあります。陳述書は、会社の事実確認や労働局の調停・あっせんの入り口で求められる書類ではありません。聞き取りで足りる場面も多いので、最初から書面を求めず、手続の担当者が書面を求めたときに頼めば間に合います。弁護士に依頼している場合は、書式や出し方を弁護士と決めてください。自分で準備するときは、次の項目がそろうように頼みます。

  • 書いた人の氏名、所属・立場、あなたとの関係(同じ課の同僚、など)
  • 見聞きした日時と場所(分かる範囲で。曖昧なら「6月上旬」のように書く)
  • 見聞きした内容(誰が、誰に、何と言ったか。どんな様子だったか)
  • どこから見ていたか、どのくらい聞こえたか
  • 書いた日付と署名

書面の書き出しの例(同僚が書く):「私は〇〇株式会社〇〇課に勤務しています。2026年6月3日午前10時ごろ、第2会議室での定例会議に出席していました。その会議で、〇〇課長が〇〇さんに対し、大きな声で……と言うのを聞きました。私は〇〇さんの斜め向かいの席にいました。」

文面をこちらで作って署名だけ頼むことは避けます。 本人の記憶と違う内容が入ると、後で聞かれたときに食い違い、証言全体の信用が下がるからです。こちらの記録と同僚の記憶に違いがあっても、すり合わせずに、それぞれが覚えているとおりに残します。

頼んだ後に気をつけること

証言を頼んだ後も、相手との関係は続きます。次の点を守ってください。

  • 頼んだことを周りに話さない。 相手が誰に協力しているかが広まると、相手が職場で困ります。
  • 何度も催促しない。 一度断られたら、その答えを受け入れます。
  • 相手の様子に変化があれば、自分の相談先に伝える。 協力した同僚が不利な扱いを受けているようなら、会社の窓口や労働局に相談するときにその事実も伝えます。
  • 自分の記録にも残す。 誰に、いつ、何を頼み、どう答えたかを日付つきで書いておきます。

加害者が事実を否定している場面での証言の生かし方は加害者がパワハラを否定したら:言い分が食い違うときに効く記録、会社の聞き取りでの準備はパワハラのヒアリングで被害者が準備することにまとめています。逆に、あなたが同僚の被害を見ていた側なら職場のパワハラを目撃したら:同僚を助けたいときにできることを読んでください。体調の変化を記録として残す方法はパワハラによる体調の変化を記録する:通院・服薬・欠勤の残し方で説明します。

よくある質問

Q. 同僚に証言を断られました。どうすればいいですか?

断られたら、それ以上は頼まずにお礼を伝えて終えます。断ったことで関係が悪くなると、職場でのあなたの立場も苦しくなるからです。証言がなくても、自分の記録やメール、診断書などで経過を示すことはでき、会社や労働局に相談することもできます。

Q. 証言してくれた同僚が、会社から不利に扱われないか心配です。

労働施策総合推進法第31条は、会社が行うパワハラ相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。それでも相手が不安を持つのは自然なことなので、最初から書面を求めず、社内調査で聞かれたら見たことを話してもらう、といった軽い段階から頼みます。

Q. 退職した元同僚にも頼めますか?

頼むことはできます。退職した人は会社との関係を気にせずに話せる場合があります。連絡先を知っているなら、近況を尋ねる連絡から始め、いきなり書面を頼まずに「あの頃のことを覚えているか」を確かめるところから進めてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

パワハラで職場に味方を作る:同僚に話す範囲と協力の頼み方

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パワハラのヒアリングで被害者が準備すること:聞かれる項目と伝え方

加害者がパワハラを否定したら:言い分が食い違うときに効く記録