ストレスチェックで高ストレスと出たら:医師の面接指導と会社に伝わる範囲
この記事のもくじ
ストレスチェックで高ストレスと出たら、まず結果の通知で医師の面接指導を勧められているかを確かめます。勧められていれば、会社に申し出て医師の面接指導を受けられます。結果は本人の同意がなければ会社に伝わりませんが、面接指導を申し出ると、会社はその申し出をもって結果の提供に同意があったものとして扱ってよい、というのが厚生労働省の指針です(会社が事前に社内へ周知することが前提)。どこまで伝わるかを知ったうえで、申し出るかどうかを選んでください。
高ストレスと出たら:結果の通知で確かめる3つのこと
ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10にもとづく検査です。労働安全衛生規則第52条の9により、会社は1年以内ごとに1回、①仕事のストレスの原因、②心身の自覚症状、③周りの人からの支え、の3つについて検査を行います。結果は、実施した医師や保健師など(実施者)から本人に通知されます。
通知を受け取ったら、次の3つを確かめます。
- ストレスの程度の判定。 厚生労働省のマニュアルでは、高ストレス者の選び方の例として、57項目の調査票を使う場合に「心身のストレス反応」の合計点が高い人、または「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」の合計点が高く、かつ心身のストレス反応も一定以上の人を挙げています。具体的な基準は会社ごとに決めます。
- 面接指導が必要とされているか。 面接指導の対象は、検査の結果ストレスの程度が高く、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた人です(規則第52条の15)。高ストレスと判定されても、面接指導の要否の欄を見ておきます。
- 申出の窓口と期限。 結果の通知には、申出先の連絡先が書かれていることが多いです。申出は結果の通知を受けた後、遅滞なく行うとされ(規則第52条の16)、マニュアルはこの「遅滞なく」を概ね1か月以内と説明しています。
高ストレスという結果は、病気だという意味ではありません。マニュアルは、制度の主な目的を、働く人が自分のストレスに気付き、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと(一次予防)だとしています。
面接指導を申し出ると会社に伝わる範囲
一番気になるのは、結果が会社にどこまで伝わるかでしょう。法令とマニュアルの決まりを並べると、次のようになります。
| 場面 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 結果の通知 | 実施者から本人に直接通知される | 労働安全衛生法 第66条の10第2項 |
| 会社への結果の提供 | 本人の同意がなければ、実施者は会社に提供してはならない | 同項 |
| 同意の取り方 | 書面または電磁的記録で取る。受検の前や受検時に同意を取ってはならない | 規則 第52条の13、マニュアル(指針) |
| 面接指導を申し出たとき | 申出をもって、結果の会社への提供に同意したものとして扱ってよい。会社は、その扱いを前もって労働者に周知する | マニュアル(指針・通達) |
| 提供される範囲 | 本人に通知された情報と同じ範囲内 | マニュアル(指針) |
| 実施の事務をする人 | 解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ人は従事できない | 規則 第52条の10第2項 |
| 秘密 | 実施の事務に従事した人は、知った秘密を漏らしてはならない | 労働安全衛生法 第105条 |
つまり、申し出なければ、結果は本人と実施者の間にとどまるのが原則です。申し出ると、面接指導を行うために会社は高ストレスだったことを知り、本人に通知されたのと同じ範囲の結果が会社に渡りえます。会社の中で誰が結果を扱い、どこまで共有するかは、マニュアルによれば衛生委員会などで話し合って社内規程で決める事項です。気になるなら、申し出る前に申出窓口に「結果を見るのは誰か」を聞いて構いません。
文例(申出窓口に確認するとき):「面接指導を申し出た場合、私の結果を見るのはどの部署の誰になりますか。直属の上司に伝わる内容があれば、事前に教えてください。」
申し出たあとの流れ、申し出ないときの選択肢
申し出ると、会社は遅滞なく医師による面接指導を行わなければなりません(規則第52条の16第2項)。マニュアルは、ここでの「遅滞なく」を申出後概ね1か月以内としています。面接では、医師が次の3点を確かめます(規則第52条の17)。
- 勤務の状況(労働時間、仕事の内容、職場の人間関係など)
- 心理的な負担の状況
- そのほかの心身の状況
面接のあと、会社は医師の意見を聴き、必要があれば就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置をとります(法第66条の10第5項・第6項)。会社は面接指導の結果の記録を作り、5年間保存します(規則第52条の18)。
面接指導を申し出たことを理由に不利益な取扱いをすることは、法律で禁じられています(法第66条の10第3項)。さらに厚生労働省の指針は、面接指導の結果を理由とした解雇、契約の更新拒否、退職勧奨、不当な動機による配置転換なども行ってはならないとしています。
一方、会社に知られたくない、まだ申し出る気持ちになれない、という選択もあります。指針は、申し出ないことを理由とした不利益な取扱いも禁じています。申し出ない場合でも、次の方法で体を守る手立ては持てます。
| 申し出ない場合の選択肢 | できること |
|---|---|
| 実施者に相談する | マニュアルは、面接指導を申し出ない高ストレス者に、実施者が相談や専門機関の紹介を行うことが望ましいとしている |
| 産業医に健康相談をする | 面接指導とは別の健康相談として話せる。配慮を求めれば意見が会社に伝わる |
| 自分で医療機関を受診する | 結果の通知を持って受診し、医師に見せることができる |
| 社外の相談先を使う | こころの耳の電話・SNS相談は、ストレスチェックの個人結果の相談も扱う |
自分で受診するか迷ったら心療内科に行くべきか迷うとき:受診の目安と行く前にできる相談、通院が負担ならオンライン診療で心療内科を受けるときの注意:対面との違いを参考にしてください。
パワハラが原因かもしれないときの使い方
上司の言動などで高ストレスになっているなら、面接指導は職場の人間関係を医師に伝え、配置などの配慮につなげる機会になります。医師が確かめる「勤務の状況」には職場の人間関係が含まれ、面接後の措置には就業場所の変更や作業の転換があります。上司と離れて働けるよう配慮を求める根拠になりえます。
ただし、面接指導はハラスメントの事実を調べる場ではありません。医師が会社に伝えるのは、健康を守るために必要な措置についての意見です。出来事そのものへの対応(事実の確認、加害者への措置)は、会社のハラスメント相談窓口に別に求める必要があります。
面接指導で伝える内容は、次のように整理しておくと話しやすくなります。
文例(面接指導で医師に伝えるとき):「5月から、上司から人前で強い口調の叱責を受けることが続いていて、日曜の夜に眠れません。仕事は続けたいので、上司と直接やり取りしない形で働けないか相談したいです。上司の言動のことは、まだ会社に詳しく伝えないでください。」
産業医への相談の進め方と、話した内容のうち会社に伝わる範囲はパワハラを産業医に相談するとき:面談で伝えることと守秘の範囲で詳しく扱っています。面接の後、病気の診断を受けて会社に伝える段階になったら、うつ・適応障害を会社に伝えるときの伝え方:誰に・どこまで・例文を参考にしてください。
会社でストレスチェックがないとき・50人未満の職場
ストレスチェックの実施が義務になっているのは、いまは常時50人以上の労働者を使用する事業場です。50人未満の事業場は努力義務にとどまっていますが、2025年5月に公布された改正法で義務化され、2028年4月1日から50人未満の事業場でも義務になります。
職場でストレスチェックがない人も、自分でストレスの状態を確かめる方法があります。厚生労働省の「こころの耳」には、職業性ストレス簡易調査票をもとにした57問の「5分でできる職場のストレスセルフチェック」があります。会社の検査と同じ考え方の質問に答えて、結果を受診や相談のきっかけに使えます。結果が気になるときや体の不調が続いているときは、パワハラによる体調不良のチェック:体に出るサインと受診先で症状を書き出してから、受診や相談に進んでください。
よくある質問
Q. 高ストレスと判定されたら、うつ病ということですか?
いいえ。厚生労働省のマニュアルは、ストレスチェックの目的はうつ病などの精神疾患のスクリーニングではなく、働く人が自分のストレスに気付き、不調を未然に防ぐことだとしています。高ストレスは「今のストレスの程度が高い」という結果で、病気かどうかは医師が診察で判断します。
Q. 面接指導を申し出なかったら、会社から不利益を受けますか?
厚生労働省の指針は、面接指導の対象なのに申し出ない人に対して、それを理由に不利益な取扱いをしてはならないとしています。受検しないこと、結果の提供に同意しないことを理由にした不利益な取扱いも同様です。申し出るかどうかは自分で決めてよいことです。
Q. 結果を上司に見られることはありますか?
結果は実施した医師などから本人に通知され、本人の同意がなければ会社に提供されません。解雇や異動に直接の権限を持つ上司などは、実施の事務に関わることも禁じられています。同意して会社に提供される場合も、範囲は本人に通知された内容までです。
出典・参考にした公的な情報
- 労働安全衛生法 第66条の10・第104条・第105条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働安全衛生規則 第52条の9〜第52条の18(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
- ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)
- 5分でできる職場のストレスセルフチェック(こころの耳)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。