法的手段の前に / 制度解説

弁護士費用特約はパワハラに使える?保険の補償範囲の確かめ方

この記事のもくじ
  1. 弁護士費用特約とは:何に備える特約か
  2. 保険証券と約款で見る場所
  3. 保険会社に聞く質問リスト
  4. 加入前から続くパワハラと、使えないときの次の手

弁護士費用特約がパワハラに使えるかどうかは、加入している保険の約款で決まります。大阪弁護士会は、弁護士費用保険は自動車保険などの特約で契約でき、法律相談料や着手金・報酬、裁判費用などが補償されると説明する一方、どこまでの被害が対象になるかは保険会社の商品によって異なるので、契約している保険会社に確認するよう呼びかけています。答えを出す手順は、①保険証券で特約の有無を見る、②約款で「保険金を支払う場合」と「支払わない場合」を読む、③保険会社に労働トラブルが対象かを質問する、の3段階です。この記事は特定の保険への加入を勧めるものではなく、すでに持っている保険の確かめ方を説明します。

弁護士費用特約とは:何に備える特約か

弁護士費用特約は、トラブルの解決のために弁護士に相談したり依頼したりしたときの費用を、保険金で補う特約です。自動車保険・火災保険・傷害保険などに付けて契約するもののほか、弁護士費用だけを補う保険として販売されているものもあります。保険法2条は、共済契約も名称を問わず保険契約に含めているので、共済に付いている同じ趣旨の特約も確かめる対象です。

ここで押さえておきたいのは、保険の多くが「偶然の事故」を前提にしていることです。保険法2条6号は、損害保険契約を「一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補する」契約と定義しています。交通事故でけがをした、他人の犬にかまれた、といった出来事は偶然の事故の典型ですが、上司の言動が何か月も続いたパワハラが、その保険の言う「事故」に当たるかは、約款の定義を読まないと判断できません。

そのため、「弁護士費用特約がある=パワハラにも使える」とは言えません。まずは手元の保険で、補償の対象がどう書かれているかを確かめることが出発点です。

保険証券と約款で見る場所

確かめる順番は、保険証券から約款へ、です。保険法6条は、保険会社が損害保険契約を結んだとき、保険事故・保険期間・保険金額などを書いた書面を契約者に交付するよう定めています。この書面(保険証券など)を見れば、特約が付いているか、いつまでの契約か、限度額がいくらかが分かります。

確かめ方の早見表:証券・約款のどこを見るか
確かめること 見る場所 見るポイント
特約が付いているか 保険証券の特約欄 「弁護士費用」「法律相談費用」などの名称があるか
誰が対象か 保険証券の被保険者欄、約款の被保険者の定義 本人だけか、配偶者・同居の親族・別居の未婚の子まで含むか
どんな出来事が対象か 約款の「保険金を支払う場合」 自動車事故だけか、日常生活の事故も含むか、事故以外の法律トラブル(労働・近隣など)まで含むか
対象外になる出来事 約款の「保険金を支払わない場合」 仕事・業務に関するトラブル、加入前に原因があったトラブルを除く書き方がないか
いくらまで出るか 保険証券の保険金額、約款の支払限度 法律相談料と弁護士費用で限度額が分かれているか、1事故あたりか年間か
使う前の手続 約款の「事故の通知」「保険金の請求」 弁護士に依頼する前に保険会社の同意が要るか

特に見落としやすいのが、「支払わない場合」の欄です。補償の対象に日常生活の事故が含まれていても、仕事に関するトラブルを除く定めがあれば、職場のパワハラは対象外になりえます。逆に、事故とは別に「一般の法律トラブル」を補償の対象に挙げ、その中に労働トラブルを含めている保険もあります。言葉の定義は約款ごとに違うので、似た名前の特約でも、自分の約款の文言で判断してください。

保険会社に聞く質問リスト

約款を読んでも判断がつかないときは、保険会社か代理店に問い合わせます。そのとき「パワハラに使えますか」とだけ聞くより、状況を具体的に伝えたほうが、正確な答えが返ってきやすくなります。

例:「職場で上司からの暴言が続き、会社に損害賠償を求めることを弁護士に相談したいと考えています。契約中の弁護士費用特約で、法律相談料や弁護士費用は補償の対象になりますか」

続けて、次の点を確かめます。

  1. 労働トラブル(職場でのハラスメント、会社への請求)が補償の対象か
  2. 加入より前から続いている出来事は、どう扱われるか
  3. 法律相談料だけでも出るか、依頼した場合の着手金・報酬金も出るか
  4. 支払いの限度額と、自己負担が出る場合の条件
  5. 弁護士は自分で選べるか、保険会社の承認や紹介が必要か
  6. 使う前に必要な連絡と書類
  7. 回答を書面やメールでもらえるか

7番は、後で「対象だと言われたのに支払われなかった」という行き違いを防ぐためです。電話で聞いた場合は、日時・担当者名・答えの内容をメモに残してください。

保険会社との個別のトラブルについては、金融庁の金融サービス利用者相談室が、話を聞いたうえで他の機関の紹介や論点の整理などの助言をしています。あっせんや仲介はしないと明記されているので、整理の相談先として使う窓口です。

加入前から続くパワハラと、使えないときの次の手

いまパワハラを受けていて、これから弁護士費用の保険に入ることを考えている人は、加入前の出来事の扱いに注意が必要です。保険法5条1項は、契約を結ぶ前に起きた保険事故による損害を補う定めについて、申込みなどの時点で契約者や被保険者がその事故の発生を知っていたときは無効としています。約款で、加入より前に原因がある法律トラブルを対象外とする定めや、加入後しばらくは補償しない期間を設けている保険もあるので、すでに続いているトラブルのために新しく入っても使えない可能性を、加入前に確かめる必要があります。

特約が使えないと分かったときは、次の手があります。

特約が使える場合も、使えない場合も、依頼する前に費用の項目を見積りで確かめることは同じです。相談料・着手金・報酬金・実費の意味と、見積りで聞く項目はパワハラの弁護士費用の内訳で確かめてください。相談に持っていく資料と質問はパワハラを弁護士に相談する前の準備に一覧があります。

よくある質問

Q. 家族が入っている保険の特約も使えますか?

使える場合があります。大阪弁護士会は、弁護士費用保険は契約者本人だけでなく、家族が被害に遭ったときに使えることもあると説明しています。誰が補償の対象(被保険者)になるかは保険ごとに決まっているので、家族の保険証券の被保険者の欄と、約款の家族の範囲(同居・別居、未婚かどうかなど)を確かめてください。

Q. 特約を使うには、保険会社が選んだ弁護士に頼まないといけませんか?

決め方は保険ごとに違います。自分で選んだ弁護士でよいのか、使う前に保険会社の承認が要るのかを、依頼する前に保険会社に聞いてください。弁護士の知り合いがいないときは、保険会社などを通じて日本弁護士連合会や各地の弁護士会が弁護士を紹介する仕組みがあると、大阪弁護士会は案内しています。

Q. 特約が使えないと分かったら、費用はどうすればいいですか?

収入や資産が一定以下なら、法テラスの無料法律相談(同じ問題につき3回まで)と費用の立替えを検討できます。弁護士会の法律相談センターには、労働相談を無料で受けているところもあります。項目ごとの費用の確かめ方は[パワハラの弁護士費用の内訳](/bengoshi-hiyou/)にまとめています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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