懲戒解雇と言われたら:理由の確かめ方・退職金・転職への影響
この記事のもくじ
懲戒解雇とは、会社が制裁(懲戒処分)として行う解雇で、懲戒の中でいちばん重い処分です。言い渡されても、解雇が有効だと決まったわけではありません。懲戒には就業規則の根拠が必要で、懲戒が重すぎるときは無効になりえます(労働契約法15条)。解雇として見られる点も同じです(16条)。この記事では、普通解雇との違い、言い渡されたときに確かめる5点、退職金・予告手当・失業保険への影響、転職に向けた書類と相談先を説明します。
懲戒解雇と普通解雇の違い
| 比べる点 | 懲戒解雇 | 普通解雇 |
|---|---|---|
| 目的 | 規律違反への制裁 | 能力不足や勤務態度など、労働契約を続けにくい事情への対応 |
| 就業規則での定め | 制裁の種類と程度を載せることが必要(労基法89条9号) | 解雇の事由を載せることが必要(同条3号) |
| 解雇予告手当 | 労働者の責めに帰すべき事由による解雇の場合は、労基署長の認定を受けた上で、予告・予告手当が不要になる(労基法20条) | 30日前の予告か、30日分以上の平均賃金が必要 |
| 退職金 | 規程により、支給しない・減額とされることがある | 規程どおり支給 |
| 離職票・失業保険 | 離職理由の扱いで給付制限が変わる場合がある | 解雇(重責解雇を除く)は特定受給資格者の範囲に入る |
| 有効かどうかを見る基準 | 懲戒の根拠と重さ(労契法15条)と、解雇としての理由(16条) | 解雇の理由と相当性(16条) |
注意したいのは、予告手当の例外が行政官庁(労働基準監督署長)の認定を受けて初めて使えることです。「懲戒解雇だから予告手当は出ない」と会社に言われても、認定の有無を確かめる余地があります。予告手当の考え方は「解雇予告手当とは?30日前の予告がないときの支払いの確かめ方」で整理しています。
懲戒解雇の理由に挙がりやすい事由:モデル就業規則の例
「懲戒解雇の理由」で調べる人が知りたいのは、何をしたら懲戒解雇になりうるのかです。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、懲戒解雇とする事由の例として次を挙げています。会社の就業規則は会社ごとに違うので、自分の会社の条文と見比べる材料として読んでください。
| モデル就業規則の事由(要約) | 場面の例 |
|---|---|
| 重要な経歴を詐称して雇用されたとき | 学歴・職歴・資格の偽り |
| 正当な理由なく無断欠勤が一定日数以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき | 連絡なしの長期欠勤 |
| 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき | 業務命令への繰り返しの違反 |
| 故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき | 器物・システムの破壊など |
| 会社内で刑法その他刑罰法規に違反する行為を行い、犯罪事実が明らかとなったとき(軽微な違反を除く) | 横領・着服、暴行など |
| 職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先から不当な金品を受けたとき | 取引先からの金品の受領 |
| 正当な理由なく業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与えたとき | 機密情報の持ち出し |
| 数回にわたり懲戒を受けても、勤務態度等に改善の見込みがないとき | 処分の繰り返し |
同じモデル就業規則は、懲戒解雇とする事由に当たる場合でも「平素の服務態度その他情状によっては」普通解雇、減給、出勤停止とすることがあると書いています。つまり、事由に当てはまりそうでも、どの処分にするかは情状で変わりえます。また、厚生労働省の解説は、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないこと、処分は過去の同種事例を考慮して公正に行う必要があることを示しています。自分の行為が挙げられた事由のどれに当たるとされているか、その条文が就業規則にあるかを、通知書と就業規則の写しで照らします。どの事由が懲戒解雇まで許されるかは、行為の性質や態様で別に見られます。
懲戒解雇を言い渡されたら確かめる5点
| 確かめる点 | 何を見るか | 集める資料 |
|---|---|---|
| ① 理由 | どの行為を、どの懲戒事由に当たるとしているか | 懲戒解雇通知書、解雇理由証明書 |
| ② 就業規則の根拠 | 就業規則に懲戒事由と処分の種類が載っているか | 就業規則の写し(最新版と、行為の時点の版) |
| ③ 手続 | 規則に定める手順(調査、本人への通知、弁明、委員会)を踏んだか | 呼び出しのメール、面談メモ |
| ④ 処分の重さ | 行為に対して重すぎないか。注意や警告、軽い処分が先にあったか | 過去の注意記録、他の社員の処分例 |
| ⑤ 金銭への影響 | 退職金・予告手当・最後の賃金がどうなるか | 退職金規程、給与明細 |
①理由は、通知書に書かれていなければ、解雇理由証明書を請求して書面にしてもらいます。解雇の予告がされた日から退職日までの間なら、請求できます(労基法22条2項)。即日の解雇で、その間がないときは、退職後に退職証明書(同条1項)で解雇の理由の記載を請求します。請求の仕方は「解雇理由証明書の請求方法:労基法22条の文例と受け取った後」にあります。
③手続については、法律に弁明の機会を与えるよう一律に書いた条文はありません。ただ、就業規則や社内規程が「本人に通知し弁明の機会を与える」「懲戒委員会で審議する」と定めているなら、その手順どおりに進められたかが確かめる材料になります。処分の前に呼び出しがあったか、自分の言い分を聞かれたかを、日付で思い出して書き出します。
④処分の重さは、労働契約法15条が「行為の性質及び態様その他の事情に照らして」判断するとしている部分です。有効か無効かは裁判所などが判断するので、このサイトで「重すぎる」「妥当だ」とは言えません。結論ではなく、判断してもらうための材料をそろえてください。
退職金・失業保険・最後の賃金への影響
- 退職金:労基法は退職金の支払いを義務づけず、定める場合は支給の範囲と方法を就業規則に載せるよう求めています(89条3号の2)。懲戒解雇の場合に不支給・減額とする規定があるかを、退職金規程で確かめます。
- 失業保険:離職票の離職理由で扱いが変わります。厚生労働省のQ&Aでは、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)の給付制限は3か月です。離職票の理由に納得できないときは、ハローワークで事情を伝えます。
- 最後の賃金:退職の場合、請求があれば7日以内に賃金を支払う決まりです(労基法23条)。働いた分の賃金は、懲戒解雇でも全額支払う義務があります(労基法24条)。
離職票の離職理由の確かめ方と、退職勧奨や自己都合との違いは「解雇・退職勧奨・自己都合退職の違い:失業保険と書類で何が変わるか」で比べています。
ハラスメントが理由の懲戒解雇と言われたとき
懲戒解雇の理由が、ハラスメントに関するものである場合があります。立場によって、確かめる点が変わります。
| 立場 | 確かめる点 | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| ハラスメントをしたとされた側 | 事実確認の聞き取りで、自分の言い分を聞かれたか。処分の根拠と重さ | 「パワハラの加害者にされたとき:事実確認に臨む準備と言い分の伝え方」 |
| 被害を相談した側が、別の理由で懲戒解雇された | 相談から処分までの時期。理由と相談の関係 | 「パワハラを相談したら解雇された:不利益取扱いの禁止と動き方」 |
処分の重さを決めるのは会社であり、被害者が会社に求められるのは適切な対応までです。加害者とされた人の側にも、相談する権利があります。
懲戒解雇のあとの転職と相談先
転職の応募先に、前の会社の退職理由を聞かれることがあります。会社に頼める書類として、退職証明書があります。労基法22条で、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由について、請求した項目だけを記載して交付してもらえます(請求しない事項は記入してはならない)。解雇の理由を書く欄を含めるかは、請求する本人が項目で選べます。面接での伝え方は「不当解雇の後の転職理由:解雇されたことを面接で伝える例文」を読んでください。退職証明書に解雇の事由を載せない形で請求できても、履歴書や面接で事実と違うことを書いたり話したりしないことが前提です。経歴を偽ったと見られると、それ自体が新しい勤務先での問題になりえます。
相談先は、次のように分かれます。
- 総合労働相談コーナー:無料・予約不要。懲戒解雇の相談も受け、助言・指導やあっせんを案内
- 弁護士:懲戒の有効性、退職金の請求、労働審判の代理
- 労基署:予告手当や賃金の不払い、解雇理由証明書の不交付
窓口の比べ方は「不当解雇の相談先:労基署・労働局・弁護士でできることの違い」、通知を受けた日にすることは「不当解雇とは?解雇の有効性の考え方と通知されたらすぐすること」にまとめています。
よくある質問
Q. 懲戒解雇になると、退職金は全額もらえないのですか?
退職金は労基法が一律に義務づけるものではなく、就業規則や退職金規程で決まります。規程に「懲戒解雇の場合は支給しない・減額する」と書かれているかをまず確かめます。書かれていても、懲戒解雇そのものや退職金の不支給が妥当かどうかは、別に見られる点です。規程の条文と、懲戒解雇通知書を持って弁護士や労働局に相談します。
Q. 懲戒解雇されても、失業保険はもらえますか?
離職票の離職理由によって扱いが変わります。厚生労働省のQ&Aでは、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は、給付制限が3か月とされています。離職票の理由に納得できないときは、ハローワークで事情を伝え、異議を述べます。手続は住所地のハローワークで確かめてください。
Q. 反省文や始末書の提出を求められました。出したほうがよいですか?
事実と違うことを認める文面には、署名しないでください。書面は、あとで懲戒の理由の裏づけとして使われることがあります。出すか迷うときは、内容を写真に撮るなどして保存し、提出期限までに労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に相談します。
出典・参考にした公的な情報
- 労働契約法 第15条・第16条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第19条・第20条・第22条・第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- モデル就業規則(令和7年12月版)第67条・第68条・第53条(厚生労働省)
- 確かめよう労働条件 Q&A「退職証明書」(厚生労働省)
- 確かめよう労働条件 Q&A「退職勧奨」(離職理由と給付制限)(厚生労働省)
- 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲(ハローワーク)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。