介護職が退職代行を使うとき:人手不足の施設で辞めるための準備
介護職の退職でいちばん重くのしかかるのは、「自分が抜けたら利用者さんと同僚が困る」という気持ちです。ただ、期間の定めのない雇用では、退職を申し入れてから2週間で雇用は終わります(民法627条1項)。人が足りないことは、退職を延ばす条件にはなりません。ここでは、利用者への影響を最小限にする準備と、退職代行を使う場面の見分け方をまとめます。
「人手不足だから辞められない」と言われたときの整理
施設の管理者から出やすい言葉を、法律の仕組みと並べます。
| 言われること | 確かめる点 |
|---|---|
| 「後任が決まるまで待って」 | 後任の確保は事業所側の課題で、退職の要件ではない。最終出勤日は書面で示す |
| 「利用者に迷惑がかかる」 | 本人が担うのは申し送りまで。体制づくりは事業所の仕事 |
| 「就業規則では3か月前の申出」 | 厚生労働省は、2週間を大きく超える期間を定める規定は無効とされると説明。どちらに合わせるかは即日退職の記事で確かめる。規則の条文は写真に残す |
| 「勝手に辞めたら損害賠償」 | 労働基準法16条は、辞めたら違約金を払うとあらかじめ決める契約を禁じる。認められる場面は限られる |
引き止めの全般的な対応は人手不足で仕事を辞めたいけど辞めづらいとき:退職できる理由と伝え方で扱っています。介護の現場に特有の点は、次の節から整理します。
利用者への影響を抑える申し送りの型
利用者の支援が途切れないための申し送りは、個人情報を持ち出さず、事業所の書式かメールで渡すことが前提です。次の項目を、担当している利用者ごとに1行ずつ書きます。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 食事・水分 | 食事形態(きざみ、とろみなど)、むせやすい時間帯 |
| 移動・転倒 | 歩行の見守りが要る場面、ベッド柵の使い方 |
| 排泄・入浴 | 声かけの順番、拒否があるときの対応 |
| 服薬・体調の注意 | 服薬の時間、普段と違うと感じたときの連絡先 |
| 家族からの要望 | 家族が気にしている点、連絡の頻度 |
申し送りを伝えるメールの文例です。
「担当している利用者様の注意点を別紙にまとめました。〇月〇日時点の内容です。口頭での補足が必要な点は、ご質問をメールでいただければ最終出勤日までにお答えします。利用者様と家族様への私の退職のお知らせは、施設からお願いできればと思います。」
利用者や家族への挨拶は、事業所が決めて行うのが一般的です。本人が個別に連絡先を伝える必要はありません。パワハラが辞めたい理由の中心なら、辞める前に記録と相談という手があります(介護職のパワハラ:施設長・同僚からの被害と利用者からの被害の分け方)。
退職代行を使うか、自分で伝えるか
施設長や管理者に直接言いにくいときの目安です。
- 最終出勤日と退職の意思を伝えれば足りる:書面かメールで自分で伝える方法がある。直接言えない理由が大きいなら、民間企業の退職代行も候補になる
- 有給の消化や夜勤の扱い、未払いの手当で話し合いが要る:団体交渉の権限がある労働組合運営か、弁護士運営が候補になる
- 損害賠償をほのめかされている、書類や貸与物でもめている:弁護士運営を中心に考える
民間企業の退職代行が動ける範囲は民間企業の退職代行でできること・できないこと:使者の範囲に整理しています。交渉が要る場面の見分け方は退職代行で交渉が必要になるのはどんなとき?有給・未払い賃金・退職日で確かめられます。
病院の夜勤とシフトの事情は看護師が退職代行を使うときに、年度途中の退職の事情は保育士が退職代行を使うときにあります。
有給休暇と最後の給料を確かめる
介護職は夜勤明けや休日が不規則で、有給の残りを把握していない人も少なくありません。給与明細の「有給残」の欄、勤怠システム、就業規則の順で、残日数を確認します。
有給は、辞める日の前に使うのが基本です。退職後は使えません。労働基準法39条5項は、施設が与える時季を変えられるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限ると定めています。退職日が決まっていて、ずらせる先の日がない場合に断りにくくなるという行政の考え方が紹介されていますが、条文に書かれたものではなく、場面で結論が変わります。拒まれたときは、請求の日付と文面を残して、総合労働相談コーナーに扱いを聞きます。
最後の給料は、労働基準法23条により、請求から7日以内に支払うよう定められています。請求の文面と日付はメールで残します。
次の職場を探す窓口
介護職の求人は、都道府県福祉人材センターで探せます。社会福祉法は、都道府県知事が社会福祉事業等従事者の確保を目的とする社会福祉法人を、都道府県ごとに1つに限り福祉人材センターとして指定できると定めています(第93条)。その業務には、社会福祉事業等に従事しようとする人への無料の職業紹介も入っています(第94条)。
求人票では、夜勤の回数、1回の夜勤に入る人数、直近1年の退職者の人数を、面接で聞いて確かめます。「アットホーム」といった言葉だけでなく、夜勤の仮眠が取れるかなど具体的な項目で見比べます。
眠れない、食べられないほどつらい状態が続いているときは、辞める手続きより先に、仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間の窓口に連絡できます。
よくある質問
Q. 利用者さんのことを考えると、辞めるのが申し訳なくて決められません。
利用者の支援が途切れないようにする体制づくりは、本来は事業所の運営の課題です。本人にできるのは、利用者ごとの注意点を申し送りとして書面で残すことまでです。そこまで渡せば、退職を延ばし続けて自分の心身を削る必要はありません。
Q. 夜勤のシフトに穴が開くから、辞める月は夜勤に入れと言われています。
夜勤の割り当ては、就業規則や契約の範囲で施設が決めます。体調が理由で夜勤が難しいときは、診断書や産業医の意見を伝えて、夜勤回数の調整を文書で求められます。調整が通らず、出勤できない日が続くときは、有給や欠勤の扱いを退職日の希望と一緒に書面で確かめます。
Q. 登録ヘルパーのように、契約期間のある働き方でも退職代行は使えますか?
使えます。ただ、契約期間の途中で辞めるには民法628条の「やむを得ない事由」が問題になるため、契約書の期間と、更新の経緯の確認が先になります。この点で話し合いが要りそうなら、労働組合運営か弁護士運営を候補にします。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第627条・第628条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第16条・第23条・第39条・附則第137条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 社会福祉法 第93条・第94条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働者の退職(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。