状況別の対処 / Q&A

職場の嫌がらせは警察に相談できる?相談できる行為と準備すること

この記事のもくじ
  1. 職場の嫌がらせでも、行為によっては警察に相談できる
  2. 警察が扱いうる行為と、扱いにくい行為の見分け方
  3. つきまといは、ストーカー規制法に当たるとは限らない
  4. 110番・#9110・労働の窓口の振り分け
  5. 警察に相談する前にそろえるもの

職場の嫌がらせでも、殴る・物を投げる・「家族がどうなっても知らないぞ」と脅す・私物を壊す・大勢の前でおとしめる・自宅まで押しかけるといった行為は、刑法などの罪に当たりうるものとして警察に相談できます。一方で、無視・仕事を回さない・陰口のように刑法の形に当てはまりにくい嫌がらせは、警察より労働の窓口のほうが動ける範囲が広い相談です。この記事では、警察が扱いうる行為の見分け方、110番・#9110と労働の窓口の振り分け、相談の前にそろえる記録を順に整理します。

職場の嫌がらせでも、行為によっては警察に相談できる

いま身の危険があるときは110番、急ぎでなければ警察相談専用電話の#9110に電話できます。番号と受付時間は職場で暴力・脅しを受けたら:110番と#9110、警察への相談の仕方で確かめてください。

警察に相談できるかどうかは、「職場で起きたかどうか」でも「相手が上司かどうか」でもなく、された行為の中身で決まります。パワーハラスメント(パワハラ)という名前の罪はありませんが、職場で起きた行為でも、刑法の暴行・傷害・脅迫・強要・名誉毀損・侮辱・器物損壊などの条文の形に近ければ、被害の相談として警察が受け付ける対象になります。

「パワハラ 被害届 出せる」と調べた人への答えも同じです。被害届は、パワハラという名目ではなく「どんな犯罪の被害を受けたか」で出すものです。暴行や脅迫など、刑法の罪に当たりうる行為があれば、被害届を出す道があります。被害届と告訴の違い、出すかどうかの考え方はパワハラで被害届・告訴を考えるときの整理で扱います。

反対に、罪になるかどうかを決めるのは警察・検察・裁判所です。この記事は「相談先として警察が合うか」を見分けるための材料で、個別の行為が罪に当たるという判定ではありません。条文ごとの法定刑や公訴時効はパワハラに刑事罰はあるかを整理した記事にまとめています。

警察が扱いうる行為と、扱いにくい行為の見分け方

職場の嫌がらせを、警察と労働の窓口のどちらに持ち込むのが合うかで分けると、次のようになります。左の列にある行為が一つでもあれば、警察への相談を選択肢に入れてください。

振り分け表:その嫌がらせは警察向きか、労働の窓口向きか
されたこと 関係しうる法律(条文) 主な相談先
殴る・蹴る・突き飛ばす・物を投げつける 刑法 暴行208条、けががあれば傷害204条 警察(いま危険なら110番)
本人や家族の命・体・財産・名誉に害を加えると告げる 刑法 脅迫222条 警察
脅して土下座や退職届の提出など、義務のないことをさせる 刑法 強要223条 警察
私物や仕事道具を壊す 刑法 器物損壊261条(告訴が要る罪) 警察
大勢の前や全員宛てのメールで、事実を挙げて評判をおとしめる・罵る 刑法 名誉毀損230条・侮辱231条(告訴が要る罪) 警察、あわせて労働の窓口
自宅に押しかける、帰り道で待ち伏せする 刑法 住居侵入等130条、場合によりストーカー規制法 警察
無視・仲間外れ・仕事を回さない・陰口・ネチネチした嫌味 刑法の形に当てはまりにくい。パワハラ指針の6類型で整理する 会社の窓口、総合労働相談コーナー、労働局
残業代を払わない、有給を取らせない 労働基準法 労働基準監督署

表の読み方で押さえたい点が三つあります。

  1. 言葉だけでも警察向きの場合がある。「辞めたら家族がどうなるか分かってるな」のように、本人や親族に害を加えると告げる言葉は、脅迫222条の形に近づきます(親族への害の告知も2項で同じ扱い)。
  2. **名誉毀損・侮辱は「公然と」が条文の要件。**二人きりの場での暴言は条文の形が違います。そのかわり、全員宛てメールや朝礼の場での罵倒は形が近づきます。名誉毀損と侮辱・器物損壊は、被害を受けた人の告訴がないと起訴できない罪で、告訴は犯人を知った日から6か月を過ぎるとできません(刑事訴訟法235条)。迷っている間に期限が進む点だけは先に知っておいてください。
  3. **刑法35条は「正当な業務による行為は、罰しない」と定めています。**業務上の注意・指導そのものは処罰の対象ではありません。強い口調の指導が続いてつらい、という悩みは、警察より労働の窓口で、指導の範囲を超えているかを整理するほうが合います。

無視や仲間外れが中心の嫌がらせへの動き方は、お局のパワハラ・嫌がらせへの対処や職場の嫌がらせを止めるための5ステップが出発点になります。

つきまといは、ストーカー規制法に当たるとは限らない

職場の人に帰り道を待ち伏せされる、休日に自宅の近くをうろつかれる、夜中に何度も電話やメッセージが来る。こうした行為を「ストーカーだ」と感じるのは自然ですが、法律上の位置づけには注意が要ります。

ストーカー規制法2条の「つきまとい等」は、特定の人への恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる行為と定義されています。仕事上の恨みや支配の目的でのつきまといは、この目的の要件に当てはまらない場合があります。ただし、恋愛感情や好意が背景にあるなら、待ち伏せ・見張り・住居等への押しかけ・拒まれた後の連続した電話やメッセージなどは、同条の各号に挙げられた行為と重なります。

目的がどちらであっても、自宅に入り込む・退去を求めても出ていかない行為は刑法130条(住居侵入等)、害を加えると告げる言葉は脅迫の問題になりえます。法律の名前を自分で当てはめる必要はなく、「何をされたか」と「怖いと感じている」ことをそのまま警察に伝えれば足ります。職場の上司や同僚からの性的な言動や性暴力が絡む場合の相談先は、職場の性暴力の相談先をまとめた記事を先に見てください。

110番・#9110・労働の窓口の振り分け

警察への連絡方法は、緊急かどうかで分かれます。

  • いま危険がある・暴行を受けた直後・けがをしている:110番。手続きより身の安全が先です。
  • 緊急ではないが、警察に相談したい:警察相談専用電話の#9110。警察庁の資料では「緊急の対応を必要としない」相談の窓口とされ、都道府県警察につながります。

受付時間は都道府県警察で異なるため、番号と時間の確かめ方は職場で暴力・脅しを受けたときの110番と#9110の使い分けにまとめています。

警察は犯罪の被害を扱う機関で、会社に対してパワハラ防止の措置を取るよう指導する立場にはありません。職場の環境を変えたい、配置を変えてほしい、という目的は、労働の窓口の役割です。

目的 合う窓口 その窓口でできること
行為をした人を処罰してほしい 警察(被害届・告訴) 捜査、検察への送致
同じことが続かないよう、会社に動いてほしい 会社の相談窓口、労働局の雇用環境・均等部(室) 会社による事実確認と措置、労働局の助言・指導・勧告、調停
どこに相談すべきか分からない 総合労働相談コーナー パワハラ・いじめ・嫌がらせを含む労働問題全般の相談。無料・予約不要
名誉を傷つけられた・差別された 法務局(みんなの人権110番) 人権相談

警察と労働の窓口は、どちらか一つを選ぶものではありません。暴行の被害を警察に相談しつつ、職場の配置については会社や労働局に動いてもらう、という並行もできます。労働の窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧で確かめられます。

警察に相談する前にそろえるもの

警察で話すときは、「職場でパワハラを受けている」と全体をまとめて伝えるより、一つひとつの出来事を日時・場所・行為で区切って示すほうが、どの法律の問題かを相手が判断しやすくなります。次のチェックリストで手元の材料を確かめてください。

  • 出来事ごとの日時と場所(更衣室、駐車場、自宅前など)
  • 相手の言葉を、言い換えずにそのままの形で書いたメモ
  • 体への接触があれば、どこを・何で・何回か。けががあれば受診先と診断書、写真
  • 壊された物の写真と、壊される前の状態が分かるもの(購入時の記録など)
  • 脅しのメッセージ・メール・留守番電話(消さずに、届いた日時が分かる形で保存)
  • 待ち伏せや押しかけがあれば、その日時と、見かけた場所の記録
  • その場にいた人の名前
  • 会社の窓口や上司に相談した日と、そのときの回答

話し方の例:「職場の同僚から嫌がらせを受けています。〇月〇日の夜8時ごろ、退勤後に自宅前で待ち伏せされ、『会社に来られなくしてやる』と言われました。同じ人から、その前の週に私物のかばんを切られています。かばんの写真と、そのときのメッセージを持ってきました。警察で相談できる内容か聞きたいです。」

記録の取り方そのものはパワハラの証拠集めの手順で詳しく扱っています。相談したうえで、被害届を出すかどうか、職場の手続きを先に進めるかどうかは、その場で決めなくてかまいません。話し合いや面談の場で同じ人と向き合う予定があるなら、パワハラの話し合い・面談に臨む前の準備も読んでおくと、当日の安全の確保に役立ちます。

よくある質問

Q. 無視や仲間外れだけでも、警察に相談できますか?

相談の電話をかけること自体はできますが、無視・仕事を回さない・陰口といった行為は、刑法の罪の形に当てはまりにくいものが中心です。警察より、会社の相談窓口や総合労働相談コーナー、労働局の雇用環境・均等部(室)のほうが動ける範囲が広い相談になります。迷うときは、急がない警察相談の#9110で「警察で扱える内容か」を聞いてから、労働の窓口へ回る順でもかまいません。

Q. 警察に相談したことは、会社に伝わりますか?

被害届や告訴が受理されて捜査が始まれば、目撃者として職場の人に話を聞くことはありえます。会社に知られたくない事情があるなら、相談の時点でそのことを伝え、どの段階で職場に連絡が入りうるかを担当者に確かめておくと、先の見通しを立てやすくなります。相談だけで止めるか、届け出まで進むかは自分で選べます。

Q. 嫌がらせの相手が同じ部署の同僚でも、警察は相談に乗ってくれますか?

相手が上司か同僚かで、警察に相談できるかどうかは変わりません。警察が見るのは、何をされたか(殴る・脅す・壊す・つきまとうなど)です。職場の人間関係の話としてではなく、日時・場所・行為を具体的に伝えると、どの法律の問題かを相手が考えやすくなります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

職場で暴力・脅しを受けたら:110番と#9110、警察への相談の仕方

パワハラで被害届・告訴を考えるとき:刑事と民事の違いと警察への相談

パワハラに刑事罰はある?暴行・脅迫・名誉毀損など刑法の罪との関係

お局のパワハラ・嫌がらせへの対処:無視・嫌味・仕事を回さない場合