パワハラ休職の前に有給を使う?傷病手当金との順番と待期の数え方
有給(年次有給休暇)を先に使うか、傷病手当金から受け取るかは、どちらも選べます。判断の土台になる事実は2つです。協会けんぽの説明では、有給休暇の日も、傷病手当金の待期3日に数えます。一方で、有給で給与が出た日は、健康保険法108条により傷病手当金は支給されません(給与が手当金より少ないときだけ差額が出ます)。つまり同じ日に両方を受け取ることはなく、休む日のどこを有給で埋め、どこから手当金に切り替えるかという「配分」の問題になります。
有給と傷病手当金、先に使うのはどっち?答えは「日ごとの配分」
先に、1日ごとの扱いを並べておきます。ここが分かっていると、「有給を使ったら傷病手当金がもらえなくなる」という誤解をせずに済みます。
| 休んだ日の扱い | その日の収入 | 待期3日に数えるか | 傷病手当金 | 有給の残日数 |
|---|---|---|---|---|
| 有給休暇を使った日 | 会社から給与が出る | 数える | 出ない(給与が手当金の額より少なければ差額) | 減る |
| 欠勤(無給)の日・待期中 | なし | 数える | 出ない(待期の3日間はもともと支給なし) | 減らない |
| 欠勤(無給)の日・待期の後 | 傷病手当金 | — | 出る(1日あたり標準報酬月額の平均÷30×2/3) | 減らない |
この表から言えるのは、待期の3日間は欠勤にしても手当金が出ないので、そこに有給を当てると収入がゼロの日を作らずに済む、ということです。4日目以降は、有給で給与を受けるか、欠勤にして手当金を受けるかの選択になります。手当金の計算の仕組みと受け取れる期間は、休職中の傷病手当金:受け取る条件・金額の計算・期間にまとめています。
待期3日は有給で埋められる:休み始めの数え方
待期は、傷病手当金が出る前の3日間です。健康保険法99条1項は、仕事に就けなくなった日から数えて3日を過ぎた日から支給すると定めています。協会けんぽは、有給休暇の日も待期に含まれ、給与が出ているかは関係ないと説明しています。早退した日が初日になる場合や、連続して3日休んだときだけ成立する点など、待期の数え方の細かい決まりは休職中の傷病手当金はいくら?条件・計算式・期間を協会けんぽで確認の待期の節で確かめてください。
| 曜日 | 組み方A(待期に有給) | 組み方B(待期は欠勤) |
|---|---|---|
| 月 | 有給(給与あり)・待期1日目 | 欠勤(収入なし)・待期1日目 |
| 火 | 有給(給与あり)・待期2日目 | 欠勤(収入なし)・待期2日目 |
| 水 | 有給(給与あり)・待期3日目 | 欠勤(収入なし)・待期3日目 |
| 木 | 欠勤→傷病手当金の対象 | 有給(給与あり)→手当金は出ない |
| 金 | 欠勤→傷病手当金の対象 | 有給(給与あり)→手当金は出ない |
| 結果 | 有給3日を使い、待期の3日間は給与が出る | 有給2日を使い、待期の3日間は収入なし |
組み方Aと組み方Bを比べると、使った有給の日数がほぼ同じでも、収入のない日の数が変わります。待期中の扱いは見落とされやすい点なので、休み始める前に人事と日付を相談しておくと安心です。
先に使うか残すか:判断の材料5つ
待期の3日を除けば、有給を先に使うほうが常に得というわけではありません。次の材料を自分の状況に当てはめて決めます。
- **有給の時効が近い分があるか。**労働基準法115条により、年次有給休暇の権利は2年で時効になります。消えそうな分から使えば無駄が出ません。
- **最初の入金までの空白をどう埋めるか。**傷病手当金の申請書は、申請する期間が過ぎてからでないと出せず、協会けんぽは審査の結果支払えるときは受付日から10営業日以内に支払うとしています。休み始めの1か月を有給でつなぐと、この空白を小さくできます。
- **1日あたりの額の違い。**有給の日は会社の給与、傷病手当金は標準報酬月額の平均を基にした額の3分の2です。手取りとの差は人によって違うので、給与明細と標準報酬月額で比べます。
- **あとで有給が要る場面があるか。**復職した後の通院日、体調が揺らいだ日の休み、退職するときの消化など、残しておくと使える場面があります。
- **会社の休職規程。**休職に入る前に一定の欠勤期間を置く会社や、休職中は有給を使えない扱いの会社もあります。就業規則の休職の条文で確かめます。
判断のメモの例:「有給の残り14日(うち6日は来年3月に時効)。待期の3日と、時効が近い3日を先に使う。残り8日は復職後の通院用に残す。」
パワハラが原因のときに確かめておくこと
傷病手当金は「業務外」の病気やけがが対象です。パワハラが原因の心の不調について労災(業務上)として請求する道を考えているなら、休み始めの扱いも変わります。労働基準法76条は、業務上の療養で働けず賃金を受けない場合に、会社が平均賃金の60%の休業補償を行うと定めており、労災保険の休業補償給付は4日目から出る仕組みです。どちらの制度で進めるかの考え方と、請求中の切り替えはパワハラの休職は傷病手当金と労災のどちら?で扱います。
協会けんぽの申請書では、傷病の原因を「仕事中以外(業務外)」「仕事中(業務上)」から選び、労災を請求中ならその旨を書く欄があります。労災の支給が決まって期間が重なったときは、受け取った傷病手当金を返すことになると記入の手引きに書かれています。有給・欠勤・手当金の配分を決める前に、労災を請求するかどうかも主治医や窓口と整理しておきます。
人事へは、日付の組み方をまとめて伝えると、話が一度で済みます。パワハラの加害者が直属の上司なら、連絡の相手は人事・総務の担当者にして構いません。
人事へのメール例:「人事部 〇〇様 体調不良のため、主治医から〇月〇日より休養が必要との診断を受けました。〇月〇日から〇日までの3日間は年次有給休暇を取得し、〇日以降は欠勤として傷病手当金を申請したいと考えています。休職の開始日の決め方と、申請書の事業主記入欄をお願いできる担当の方を教えていただけますでしょうか。」
申請書の各欄の書き方と提出の順番は傷病手当金の申請方法:申請書の記入欄と支給までの流れで確かめられます。雇用形態がパートや契約社員の場合の考え方は、次のパート・契約社員でも休職できる?傷病手当金の対象に続きます。休職そのものの期間の目安は適応障害の休職期間と会社の上限の確かめ方で整理しています。
よくある質問
Q. 金曜日から休み始めた場合、土日も待期の3日に入りますか?
入ります。協会けんぽの説明では、待期の3日間には土日・祝日や有給休暇の日も含まれ、給与が出ているかどうかは関係ありません。金曜・土曜・日曜と続けて仕事に就けなければ待期は完成し、月曜日以降に仕事に就けず給与も出ない日が、傷病手当金の対象になりえます。
Q. 有給を使った日は、傷病手当金の申請書に書く必要がありますか?
会社が書く3ページ目(事業主記入用)に、出勤していない日に支払った報酬として、有給休暇の日付と金額を書く欄があります。本人が隠したり省いたりするものではなく、会社の証明をもとに協会けんぽが支給額を調整します。申請期間に有給の日が入っていても、申請自体はできます。
Q. 休職が始まってからでも有給を使えますか?
休職に入った後の期間に年次有給休暇を当てられるかは、会社の休職規程と運用によって扱いが分かれます。休職の開始日を決める前に、「休職に入る前の欠勤の期間に有給を当てられるか」「休職中は使えるか」を人事に聞いておくと、配分を組み立てやすくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 健康保険傷病手当金支給申請書(申請書・記入の手引き・支払いまでの日数)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 健康保険傷病手当金支給申請書 記入の手引き(2026.9)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 健康保険法 第99条・第108条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第76条・第115条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働者災害補償保険法 第14条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。