内部通報制度とは?パワハラを通報するときの保護と相談窓口との違い
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内部通報制度とは、会社の中で起きている法令違反を従業員などが会社に知らせ、会社が調査して是正するための仕組みです。根拠は公益通報者保護法で、常時使用する労働者が301人以上の会社には、通報に対応する担当者を定め、体制を整えることが義務づけられています。パワーハラスメント(パワハラ)についての相談は、本来は別の法律にもとづくハラスメント相談窓口の役目です。ただ、暴行や脅迫のように罰則のある行為が含まれるパワハラは、内部通報として公益通報者保護法で守られる場合があります。このページでは、2つの窓口の違いと、パワハラで内部通報を使うときの手順を整理します。
内部通報制度とは:公益通報者保護法が会社に求める仕組み
公益通報者保護法第11条は、会社に次の2つを求めています。
- 従事者を定める:内部通報を受け、調査し、是正に必要な措置をとる業務に従事する人(公益通報対応業務従事者)を定めること(第1項)。
- 体制を整える:通報に適切に対応するための体制の整備その他の必要な措置をとること(第2項)。
常時使用する労働者が300人以下の会社では、この2つは努力義務です(第3項)。
体制の中身は、内閣府の指針(令和3年内閣府告示第118号)が定めています。主なものは次のとおりです。
- 部門横断的に通報を受ける窓口を設け、調査と是正を担う部署と責任者を明確にする
- 経営陣に関係する事案では、経営陣からの独立性を確保する
- 事案に関係する人を、通報への対応に関わらせない(利益相反の排除)
- 通報者が不利益な扱いを受けないようにし、受けていないかを把握し、受けた場合は救済・回復する
- 通報者を特定させる事項を必要最小限を超えて共有すること(範囲外共有)や、通報者を特定しようとする行為(通報者の探索)を防ぐ
- 従業員・役員・退職者に制度を教え、知らせる
- 書面で通報を受けたときは、是正したこと、または通報の事実がなかったことを、通報者に速やかに知らせる
指針の用語の説明では、「内部公益通報」には窓口への通報だけでなく、上司などへの報告が公益通報になる場合も含むとされています。上司に報告した内容が、法律上の通報として扱われることもあるということです。ただし、罰則つきの守秘義務(第12条)を負うのは従事者として定められた人で、窓口の担当者以外の上司が従事者に指定されていないこともあります。その場合も、会社は通報者を特定させる情報の範囲外共有を防ぐ体制の対象に上司を含めることを求められます(消費者庁の解説)。
ハラスメント相談窓口との違い
会社の中には、根拠となる法律の違う2つの窓口があることが多く、内部通報窓口とハラスメント相談窓口は別物です。窓口を一つにまとめている会社もありますが、どちらの法律の手続きとして受けるかで、守られ方が変わります。
| 内部通報窓口 | ハラスメント相談窓口 | |
|---|---|---|
| 根拠の法律 | 公益通報者保護法 第11条 | 労働施策総合推進法 第31条(パワハラ)、男女雇用機会均等法(セクハラ・マタハラ)など |
| 会社の義務 | 301人以上は義務、300人以下は努力義務 | 会社の規模にかかわらず義務 |
| 受ける内容 | 対象の法律の罰則・過料の対象となる事実(通報対象事実) | ハラスメントの相談。当たるか微妙な段階の相談も含む |
| 使える人 | 労働者・派遣労働者・役員、退職から1年以内の人など | その会社の労働者(派遣労働者は派遣先の窓口も) |
| 目的 | 法令違反を調べて是正する | 被害者への配慮、行為者への措置、再発防止 |
| 守秘 | 従事者に、通報者を特定させる事項を漏らさない義務(違反に罰則) | 会社にプライバシーを守る措置を講じる義務 |
| 不利益な扱いからの保護 | 通報を理由とする解雇の無効、降格・減給などの禁止(第3条・第5条) | 相談や事実確認への協力を理由とする不利益な扱いの禁止(第31条第2項) |
表のとおり、ハラスメント相談窓口は「パワハラに当たるか」がはっきりしない段階から使える窓口です。一方、内部通報窓口で公益通報者保護法の保護を受けるには、通報の中身が法律の定める「通報対象事実」に当たる必要があります。ハラスメント相談窓口の使い方は社内のハラスメント相談窓口の使い方:相談前の準備と守秘の確かめ方で扱っています。
パワハラは内部通報の対象になる?
公益通報者保護法の「通報対象事実」は、刑法や労働基準法など対象の法律に定められた罪の犯罪行為の事実、または過料の理由とされている事実です(第2条第3項)。そのため、パワハラの中でも、殴る・物を投げつけるといった暴行、脅しのように刑法の罪に当たりうる行為や、罰則のある労働基準法違反は、通報の対象になりえます。暴言や無視のように罰則のない言動は、公益通報には当たらない場合があります。行為ごとの整理と、社内・行政・報道の3つの通報先の条件の違いはパワハラを告発する方法:社内通報・外部窓口・報道の違いと注意点で詳しく扱っています。
ただ、法律の保護の範囲と、会社の窓口が受け付ける範囲は同じではありません。消費者庁の指針の解説は、窓口の対象を法令違反だけでなく内部規程違反などにも広げ、公益通報に当たらない通報にも同じように対応するよう努めることが望ましいとしています。自分の会社の内部通報窓口が何を受け付けているかは、内部通報規程や社内の案内で確かめられます。
パワハラを内部通報するときの手順
内部通報を使うと決めたら、次の順で進めます。
- 規程を読む。 内部通報規程で、窓口(社内・社外の委託先・親会社など)、受け付ける内容、匿名での受付の有無、通報後の連絡方法を確かめます。
- 事実を書面にまとめる。 いつ、どこで、誰が、何をしたか。暴行の日時や、残業代が払われていない月など、罰則のある違反に当たりうる部分を具体的に書きます。
- 記録の写しを添える。 原本は手元に残し、写しを付けます。
- 共有の範囲の希望を書く。 自分の名前を誰まで伝えてよいかを、書面に書いておきます。
- 書面で出し、出した日を残す。 指針は、書面で通報を受けた会社に、是正したこと、または通報の事実がなかったことを通報者へ知らせるよう求めています。また、書面で出してから20日たっても調査をする旨の通知がないことは、報道機関などへの通報が保護される条件の一つです(第3条第3号ホ)。
書面の例:「内部通報窓口 御中 件名:経理部での暴行と賃金不払いについて 経理部の○○部長が、9月から10月にかけて部下2名の肩を強く突く行為を3回行いました(日時・場所・目撃者は別紙)。また、同じ期間に、同部で月20時間ほどの残業代が支払われていません(勤務記録の写しを添付)。調査の予定と時期をお知らせください。私の氏名は、調査に必要な最小限の方以外には伝えないでください。」
自分が被害を受けている事案では、内容から通報者が推測されやすくなります。名前を伏せて出す方法と、その限界は次の記事で詳しく扱います。
通報者を守る仕組みと、2026年12月1日からの変化
いまの公益通報者保護法では、公益通報を理由とする解雇は無効で(第3条)、降格・減給・退職金の不支給などの不利益な扱いも禁じられています(第5条)。会社は、通報で損害を受けたとして通報者に損害賠償を求めることもできません(第7条)。従事者が、正当な理由なく通報者を特定させる事項を漏らした場合は、30万円以下の罰金の対象です(第12条・第21条)。
改正法(令和7年法律第62号)は2026年12月1日に施行される予定で、2026年10月24日時点ではまだ効力が生じていません。12月1日以降は、この段落を施行後の内容に書き換えます。消費者庁の概要によると、施行後は、通報者を特定しようとする行為や、通報しないよう合意を求めるなどの通報妨害が禁じられます。通報から1年以内の解雇・懲戒は通報を理由とするものと推定され、通報を理由に解雇・懲戒をした人には刑事罰が設けられます。会社が通報の体制を労働者に周知する義務も明示されます。
どこに通報すれば保護されるか迷うときは、消費者庁の公益通報者保護制度相談ダイヤルで相談できます(個別の通報は受け付けていない窓口です)。番号と、通報者だと知られる心配への備えは内部通報はバレる?匿名で通報するときの注意と報復への備えにまとめています。社内に相談窓口自体が見当たらないときは、前の記事ハラスメント相談窓口がない会社は義務違反?設置義務と代わりの相談先を参考にしてください。
よくある質問
Q. 従業員が300人以下の会社に内部通報窓口がないのは、法律違反ですか?
公益通報者保護法は、常時使用する労働者が300人以下の会社については、通報に対応する担当者(従事者)を定めることと体制の整備を「努力義務」としています。窓口がないことだけで、301人以上の会社と同じ義務に反しているとは言えない仕組みです。この場合でも、ハラスメントの相談窓口は会社の規模にかかわらず置くことが求められています。
Q. パワハラは、内部通報窓口とハラスメント相談窓口のどちらに相談すればいいですか?
職場のパワハラを止めてほしい、配慮してほしいという目的なら、ハラスメント相談窓口が本来の窓口です。暴行や脅し、賃金の不払いなど罰則のある違反が含まれるときは、内部通報窓口への通報として公益通報者保護法の保護を受けられる場合があります。迷うときは、どちらの窓口で受けるのが合うかを窓口に尋ねてから出す方法もあります。
出典・参考にした公的な情報
- 公益通報者保護法 第2条・第3条・第5条・第7条・第11条・第12条・第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)(消費者庁)
- 公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説(消費者庁)
- 公益通報者保護法と制度の概要(令和7年改正・令和8年12月1日施行)(消費者庁)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。