ハラスメント相談窓口がない会社は義務違反?設置義務と代わりの相談先
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ハラスメントの相談窓口を定め、従業員に知らせておくことは、法律と厚生労働省の指針が全ての会社に求めている措置の一つです。パワーハラスメント(パワハラ)の防止の措置は、中小企業も2022年4月1日から義務になりました。ですから「窓口が見当たらない」状態は、会社が求められていることを果たしていない可能性があります。ただ、それが義務違反に当たるかを判断し、会社に助言や指導をするのは都道府県労働局です。社内に窓口がないときは、労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーに直接相談できます。
ハラスメントの相談窓口は会社の義務:法律と指針が求めること
労働施策総合推進法第31条第1項は、パワハラによって労働者の就業環境が害されないよう、会社に「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を義務づけています。厚生労働省のパワハラ指針は、この体制の中身として、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知することを挙げています。厚生労働省によると、この措置は大企業で2020年6月1日、中小企業で2022年4月1日から義務になっています。
窓口を求めているのはパワハラだけではありません。
| ハラスメント | 措置を定める条文 |
|---|---|
| パワハラ | 労働施策総合推進法 第31条 |
| カスタマーハラスメント(カスハラ) | 同法 第33条(2026年10月1日から全ての会社の義務) |
| セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 男女雇用機会均等法 第11条 |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ) | 同法 第15条 |
| 育児休業・介護休業等に関するハラスメント | 育児・介護休業法 第25条 |
ここで大事なのは、指針が窓口の形を一つに決めていないことです。指針は窓口の例として、担当者を決めること、相談の制度を設けること、外部の機関に委託することを挙げています。「ハラスメント相談室」という名前の部署がなくても、担当者が決まっていて、そのことが従業員に知らされていれば、窓口を定めた形になっている場合があります。逆に、担当者を決めていても誰にも知らせていなければ、周知という点が欠けていることになります。
会社が窓口のほかに講じるべき措置(方針の周知、事実確認、被害者への配慮など)の全体は、パワハラで会社の義務は何?相談したら会社がするべき10の措置で一覧にしています。
「窓口がない」と感じたら、まず確かめること
窓口はあるのに、知らされ方が分かりにくいだけのこともあります。次の順に確かめます。
- 就業規則、ハラスメント防止規程、懲戒規程に「相談窓口」「苦情の申出先」の記載がないか
- 社内ポータル・イントラネット・社内報に、相談窓口や外部窓口の案内がないか
- 休憩室や更衣室の掲示、入社時の資料、研修の配布資料に載っていないか
- 総務・人事の担当者に「ハラスメントの相談はどこにすればよいですか」と尋ねたか
- 親会社やグループ全体の窓口が、自分の会社の従業員も使える形になっていないか
就業規則は、作業場への掲示や書面の交付などの方法で労働者に周知することが会社に義務づけられている書類なので(労働基準法第106条)、見せてほしいと頼めます。ただし、就業規則の作成義務があるのは常時10人以上の労働者を使う会社で(同法第89条)、それより小さい会社には就業規則自体がないこともあります。尋ねるときは、何があったかを話さず「窓口の場所だけ教えてください」で十分です。
案内が見つかったら、それが社内の担当者なのか、外部に委託した窓口なのかを確かめます。委託の窓口の性格と使い方は社外のハラスメント相談窓口とは?会社が委託する外部窓口の使い方、社内の担当者に相談するときの準備は社内のハラスメント相談窓口の使い方:相談前の準備と守秘の確かめ方で扱っています。
社内に窓口がないときの相談先
確かめても窓口が見つからない、あるいは窓口の担当者が行為者本人であるようなときは、会社の外に相談します。厚生労働省は、会社で対応してもらえない場合や社外で相談したい場合の窓口として、次を案内しています。
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラの相談。会社の措置の状況について、会社への助言・指導などにつながる。匿名でも相談可・無料 |
| 総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署内など) | 労働問題全般の相談。予約不要・無料。必要に応じて担当の部署へ取り次ぐ |
| 労働組合(社内の組合・地域の合同労組) | 組合員のために会社と交渉する |
| 弁護士・法テラス | 個別の事情に沿った法的な見通し。法テラスは窓口や制度を無料で案内 |
| 公務員の場合 | 人事院、所属先の人事担当、人事委員会(公平委員会)、教育委員会など |
番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表にまとめています。雇用環境・均等部(室)の役割は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることで詳しく扱っています。
労働局に相談するときは、「窓口がないこと」と「起きている出来事」を分けて伝えます。前者は会社の措置の問題、後者は個別のハラスメントの問題なので、分けて話すと相談員が整理しやすくなります。
労働局が会社にできること:報告の求め・助言・指導・勧告・公表
窓口がないことを労働局に伝えた後、会社に対して取られうる手立ては、労働施策総合推進法に定められています。
- 報告を求める:厚生労働大臣は、第31条(パワハラの措置)などの施行に必要な事項について、会社に報告を求めることができます(第45条第1項)。報告をしない、または虚偽の報告をした場合は20万円以下の過料です(第51条)。
- 助言・指導・勧告:法律の施行に関して必要と認めるとき、会社に助言・指導・勧告をすることができます(第42条第1項)。
- 公表:第31条第1項・第2項などに違反している会社が勧告に従わなかったときは、その旨を公表できます(第42条第2項)。
これらの大臣の権限は、一部を都道府県労働局長に委任できると定められています(第46条)。注意したいのは、これらは会社に向けた行政の手立てで、相談した人の損害を償わせたり、加害者を処分させたりする手続きではない点です。パワハラの措置義務の規定は会社に体制づくりを求めるもので、ハラスメントの行為そのものに刑罰を科す規定ではありません。
自分が受けた出来事について会社と話し合いたいときは、労働局長の助言・指導・勧告(第36条)や紛争調整委員会の調停(第37条)を申し込む道があります。流れは労働局の助言・指導と調停:パワハラ・カスハラの紛争を解決する仕組みで説明しています。
会社に窓口の設置を求めるときの伝え方
社内で動けそうなら、人事・総務や経営者に窓口のことを尋ね、設けてほしいと伝える方法もあります。個人の出来事を伏せたまま、制度の話として伝えると、角が立ちにくくなります。
文例(人事・総務へのメール):「総務部 ○○様 ハラスメントの相談窓口について教えてください。社内で困りごとがあったときに相談できる窓口を探しましたが、就業規則や社内ポータルでは見つけられませんでした。相談窓口や担当の方が決まっていれば、連絡先を教えていただけますか。まだ決まっていない場合は、従業員が相談できる窓口を設けていただけるとありがたいです。」
送ったメールと返事は、日付がわかる形で保存します。返事がない、または「うちにはそういうものはない」と言われた場合も、その記録は労働局に相談するときの説明に使えます。窓口ができた後も、会社の内部には、法令違反を通報するための別の仕組みが用意されていることがあります。その違いは次の記事内部通報制度とは?パワハラを通報するときの保護と相談窓口との違いで扱います。
よくある質問
Q. 従業員が数人の小さな会社でも、相談窓口は必要ですか?
必要です。パワハラ防止の措置は、大企業は2020年6月1日、中小企業も2022年4月1日から義務になっていて、規模による例外はありません。ただ、指針が示す窓口の形には「担当者を決める」ことも含まれるので、社長や総務担当者が窓口役を兼ねている形もあります。
Q. 窓口がないことを労働局に伝えると、会社に私の名前が知られますか?
厚生労働省は、労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーでのハラスメントの相談は匿名でもよいと案内しています。会社に対して何かを求める手続き(助言・指導の申出や調停の申請)に進む段階では、当事者として名前が会社に伝わります。どこまで進めるかは、相談しながら決められます。
Q. 公務員の職場でも、同じ法律で窓口が義務になっていますか?
一般職の国家公務員などには、労働施策総合推進法の措置義務の条文(第31条〜第34条)は適用されず、人事院の規則などの別の枠組みで扱われます。地方公務員にはこれらの条文が適用されますが、国家公務員・地方公務員とも、労働局の助言・指導・勧告や調停(第35条〜第39条)は使えません。相談先は、人事院、所属先の人事担当、人事委員会(公平委員会)、教育委員会などです(第48条)。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第31条・第33条・第42条・第45条・第46条・第48条・第51条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 男女雇用機会均等法 第11条・第15条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 育児・介護休業法 第25条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第89条・第106条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
- あかるい職場応援団 ハラスメントの相談窓口(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。