パワハラとは・判断の材料 / チェックリスト

パワハラで会社の義務は何?相談したら会社がするべき10の措置

この記事のもくじ
  1. パワハラで会社の義務とは:指針が定める10の措置
  2. 相談したら会社がするべきこと:確かめる質問のチェックリスト
  3. 指針が示す「被害者への配慮」と「行為者への措置」の例
  4. 会社に措置を求めるときの伝え方と、動かないときの次

パワハラについて会社(事業主)に課されている義務は、労働施策総合推進法第31条の雇用管理上の措置です。厚生労働省の指針とリーフレットは、その中身を10の措置として示しています。①方針の明確化と周知、②行為者への対処の方針、③相談窓口の設置、④窓口担当者の対応力、⑤事実確認、⑥被害者への配慮、⑦行為者への措置、⑧再発防止、⑨プライバシー保護、⑩相談を理由とする不利益取扱いをしない旨の周知です。このページでは、10の措置を「会社に確かめる質問」の形にして並べます。

パワハラで会社の義務とは:指針が定める10の措置

措置は4つのまとまりに分かれます。厚生労働省のリーフレットの番号に合わせて並べると次のとおりです。

まとまり 番号 措置の中身
方針の明確化と周知・啓発 ① パワハラの内容と、パワハラを行ってはならない方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する
② 行為者には厳正に対処する方針と、対処の内容(懲戒規定など)を就業規則等の文書に定め、周知・啓発する
相談に応じる体制 ③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する(担当者を決める、外部の機関に委託するなど)
④ 窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。該当するか微妙な場合も広く相談に応じる
事後の迅速かつ適切な対応 ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する
⑥ 事実が確認できたら、速やかに被害者への配慮の措置を適正に行う
⑦ 事実が確認できたら、行為者への措置を適正に行う
⑧ 再発防止の措置を講じる(事実関係がはっきりしなかった場合も含む)
併せて講じる措置 ⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを守る措置を講じ、その旨を周知する
⑩ 相談したこと等を理由に解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する

対象になるのは正社員だけではありません。パートタイム労働者・契約社員を含む全ての労働者が対象で、派遣で働く人には派遣先の会社も措置を講じます。また、会社の役員や事業主本人が行うパワハラも、防止の対象に含まれています。

義務がいつから全ての会社に及んでいるかは、前の記事パワハラ防止法はいつから?大企業・中小企業・2026年改正の年表で確かめられます。

相談したら会社がするべきこと:確かめる質問のチェックリスト

会社が義務を果たしているかは、外から見えにくいものです。次の質問を、自分の会社に当てはめて確かめてください。手元の資料で分かるものと、会社に尋ねないと分からないものがあります。

チェックリスト:10の措置を会社に確かめる質問
番号 確かめる質問 手がかりになる資料・場面
① パワハラをしてはならないという方針は、どこに書かれているか 就業規則、社内報、社内ポータル、研修資料
② 行為者への懲戒などの対処は、就業規則のどの条文に書かれているか 就業規則の懲戒規定
③ 相談窓口はどこで、連絡先は周知されているか 社内ポータル、掲示、入社時の資料
④ 窓口は、パワハラか微妙な段階でも相談を受けてくれるか 窓口への最初の問い合わせ
⑤ 相談後、誰が、いつまでに、誰から話を聞くのか 窓口からの説明
⑥ 事実確認の後、自分への配慮としてどんな措置がとられたか 席や担当の変更、面談の記録
⑦ 行為者にはどんな措置がとられたか(伝えられる範囲で) 窓口・人事からの回答
⑧ 再発防止として何をしたか 方針の再周知、研修の再実施の案内
⑨ 相談の内容は、誰にまで共有されるのか 窓口の説明、相談の手引き
⑩ 相談したことで不利益を受けない旨は、どこに定められているか 就業規則、相談窓口の案内

チェックで「分からない」が多いときは、そのこと自体を会社に尋ねる材料にできます。人事への伝え方はパワハラを人事に相談する方法:面談で伝える順番と動かないときの次に、相談のやり取りを文書で残す方法はパワハラ相談の記録を会社に残してもらう:相談と回答を書面にする方法にまとめています。

指針が示す「被害者への配慮」と「行為者への措置」の例

⑥と⑦について、指針は具体的な例を挙げています。読者として知っておきたいのは、これらは例であり、どれをとるかは事案ごとに会社が決めるという点です。

被害者への配慮の例(⑥)

  • 被害者と行為者の関係改善に向けた援助
  • 被害者と行為者を引き離すための配置転換
  • 行為者の謝罪
  • 被害者の労働条件上の不利益の回復
  • 管理監督者や産業保健スタッフ等による、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応

行為者への措置の例(⑦)

  • 就業規則等の服務規律にもとづく懲戒その他の措置
  • 被害者と引き離すための配置転換、被害者への謝罪

事実確認(⑤)で相談者と行為者の主張が食い違うときは、第三者からも話を聞くなどの方法がとられます。それでも確認が難しい場合、指針は、労働施策総合推進法第37条の調停の申請など、中立な第三者機関に紛争の処理を委ねることにも触れています。

配置の希望や謝罪を求めるときの考え方は、それぞれパワハラで異動したいとき:異動希望の伝え方と会社が配慮すべきこととパワハラ加害者に謝罪してほしいとき:求め方と会社の措置の関係で扱っています。行為者への懲戒の段階はパワハラ加害者の処分の種類:懲戒の段階と自宅待機の意味へ。

義務と「望ましい取組」を分ける

指針には、義務の措置とは別に「望ましい取組」も書かれています。セクハラなど他のハラスメントと一元的に相談できる体制、コミュニケーションの活性化のための研修や適正な業務目標の設定、労働者や労働組合の参画による運用の見直し、取引先の労働者・フリーランス・就職活動中の学生などへの言動についての方針、などです。これらは努力の範囲なので、会社に求めるときは「義務として」ではなく「取り組んでほしいこと」として伝えるほうが話が進みます。

会社に措置を求めるときの伝え方と、動かないときの次

会社への問い合わせは、口頭だけで終わらせず、メールなど日付の残る形にしておくと後で役に立ちます。

メールの例:「人事部 ○○様 10月14日に相談窓口へ、上司の言動についてご相談しました。その後の事実確認の予定と、確認後にどのような措置を検討されているかを教えていただけますか。また、相談の内容がどの範囲の方に共有されるかもあわせて伺いたいです。お手数ですが、10月28日ごろまでにご回答をお願いいたします。」

送るときのポイントは次のとおりです。

  1. 相談した日・相手・内容の要点を最初に書く
  2. 聞きたいことを質問の形で2〜3点にしぼる(チェックリストの⑤⑥⑨など)
  3. 回答の目安の日を添える
  4. 送ったメールと返信を、自分だけが見られる場所に保存する

回答がない、措置がとられないまま時間が過ぎる、相談後に不利益な扱いを受けた、といった場合は、社外に出す段階です。会社の外で使える手段と、その前に確かめることはパワハラを相談しても会社が対応しないとき:外へ出す前に確かめることにまとめています。行政が会社に対してとれる手段(助言・指導・勧告・企業名の公表)はパワハラ防止法に罰則はある?違反した会社への勧告と企業名公表を見てください。

措置義務は、会社が体制や対応を整えることを定めた義務で、損害賠償を直接定めた規定ではありません。会社の民事上の責任が問題になるときに挙がる根拠は、別の法律にあります。次の記事安全配慮義務とは?パワハラで会社の責任が問われる仕組みの基本で、二つの義務の違いを整理しています。

よくある質問

Q. 会社に相談窓口がない場合はどうすればいいですか?

相談窓口をあらかじめ定めて周知することは、会社の措置義務の一つです。まず人事や信頼できる上司に「窓口はどこか」を文書で尋ね、それでも示されない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーに、窓口がないことも含めて相談できます。

Q. 会社に加害者を異動させるよう求めることはできますか?

求めることはできます。指針は、被害者への配慮の措置や行為者への措置の例として、引き離すための配置転換を挙げています。ただし、どの措置をとるかは事案に応じて会社が決めるもので、異動が約束されるわけではありません。希望は理由とあわせて書面で伝えておきます。

Q. 会社は相談の結果を教えてくれますか?

結果の伝え方は指針で細かく決められてはいません。ただ、事実確認の後に被害者への配慮や再発防止の措置をとることは義務なので、「どんな措置をとったか、とる予定か」を尋ねるのは自然な質問です。回答は日付と担当者を書き留めておきます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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