パワハラとは・判断の材料 / Q&A

パワハラ防止法に罰則はある?違反した会社への勧告と企業名公表

この記事のもくじ
  1. パワハラ防止法に罰則はある?条文の答え
  2. 違反とされるのはどんなとき:3つの義務
  3. 加害者個人の責任は別の法律の話
  4. 罰則がなくても、労働者が使える手段

パワハラ防止法(労働施策総合推進法)には、パワハラの行為そのものや、会社が措置を怠ったことに対する刑事罰の規定はありません。法律が用意しているのは、①行政が会社に報告を求め、②助言・指導・勧告をし、③勧告に従わない会社の名前を公表できる、という段階的な仕組みです。ハラスメント対策の措置義務に関して、金額が書かれた罰則は、報告をしない・虚偽の報告をした場合の20万円以下の過料(第51条)だけです。加害者個人が罪に問われるかどうかは、刑法など別の法律の話になります。

パワハラ防止法に罰則はある?条文の答え

2026年10月1日施行の改正後の条番号で、会社に向けた行政の手段を並べると次のとおりです。

条 できること 対象になる場面
第45条1項 厚生労働大臣が、事業主に報告を求める 第31条(パワハラ)・第33条(カスハラ)などの施行に関し必要があるとき
第42条1項 厚生労働大臣が、事業主に助言・指導・勧告をする 必要があると認めるとき
第42条2項 勧告に従わなかった事業主の名前などを公表できる 第31条1項・2項、第33条1項・2項、第36条2項、第37条2項に違反し、勧告に従わないとき
第51条 20万円以下の過料 第45条1項の報告をしない、または虚偽の報告をしたとき
第46条 大臣の権限の一部を都道府県労働局長に委任できる(委任の範囲は厚生労働省令で定める) 相談や報告のやり取りで労働局が窓口になる

ポイントは、**公表の対象が「勧告に従わなかったこと」**だという点です。措置を講じていない、相談した人を不利益に扱った、といった違反があっても、公表の前には勧告があり、その勧告に従わない場合に公表できる、という条文の組み立てです。

なお、同じ法律の第49条には「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」という刑罰がありますが、これは別の制度に関わる守秘義務違反の罰則で、ハラスメントとは関係がありません。罰則の話を調べていると混同しやすいので注意してください。

流れ図:会社が措置義務を守らないときの行政の手段
  1. 労働者が労働局に相談する(雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー)
  2. 労働局が会社に報告を求める(第45条1項)→ 報告しない・虚偽の報告は20万円以下の過料(第51条)
  3. 助言・指導・勧告(第42条1項)
  4. 勧告に従わない場合、企業名などの公表(第42条2項) (どの段階まで進むかは事案による。相談すれば公表まで進むという仕組みではない)

違反とされるのはどんなとき:3つの義務

公表につながりうる違反として第42条2項が挙げているのは、パワハラに関しては次の3つの型です。

  1. 措置を講じない(第31条1項)。 方針の明確化と周知、相談窓口の設置、相談後の事実確認と被害者・行為者への対応、再発防止などを講じていない。措置の中身はパワハラで会社の義務は何?相談したら会社がするべき10の措置で、会社に確かめる質問の形にしています。
  2. 相談したことを理由に不利益に扱う(第31条2項)。 相談したことや、事実確認に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱い。
  3. 労働局の手続きを使ったことを理由に不利益に扱う(第36条2項・第37条2項)。 労働局長に援助を求めたこと、調停を申請したことを理由とする不利益な取扱い。

相談したあとに降格・配置転換・契約の打ち切りなどがあった場合、それが「相談を理由とする不利益な取扱い」に当たるかは、時期や理由の説明など事実を見て判断されます。記事が当否を決めることはできないので、経過を時系列で書き出し、労働局に事実として示すのが現実的な一手です。そうした場面の動き方はパワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処にまとめています。

セクハラ・マタハラも同じ構造

男女雇用機会均等法(セクハラ第11条、就活セクハラ第13条、マタハラ第15条)も、報告の求めと助言・指導・勧告(第35条)、勧告に従わない場合の公表(第36条)、報告しない・虚偽の報告への20万円以下の過料(第39条)という同じ組み立てです。育児・介護休業法の育休等ハラスメント(第25条)も、第56条・第56条の2・第66条に同様の定めがあります。

加害者個人の責任は別の法律の話

「罰則がないなら、何をしても責任を問われないのか」と受け取るのは誤りです。パワハラ防止法が対象にしているのは会社の措置で、加害者個人の行為は、内容によって次の法律で扱われます。

法律 どんな行為・責任が問題になるか
刑法 暴行(第208条)、傷害(第204条)、脅迫(第222条)、名誉毀損(第230条)、侮辱(第231条)など。罪に当たるかは警察・検察・裁判所が判断する
民法 不法行為(第709条)による損害賠償。会社には使用者責任(第715条)が問題になることがある
労働契約法 会社の安全配慮義務(第5条)。違反が問題になると、会社に対する損害賠償の請求につながることがある
就業規則 会社による懲戒処分。指針は、行為者に厳正に対処する方針と対処の内容を就業規則等に定めるよう求めている

刑法の罪との関係は、次に読むと分かりやすいパワハラに刑事罰はある?暴行・脅迫・名誉毀損など刑法の罪との関係で、会社の民事上の責任は安全配慮義務とは?パワハラで会社の責任が問われる仕組みの基本で扱っています。誰を相手に何を求めるかの整理はパワハラで訴える相手は加害者個人か会社か:責任の種類を整理が入口です。

罰則がなくても、労働者が使える手段

会社に刑事罰がないことは、労働者に手段がないことを意味しません。使える公的な手続きを、軽いものから順に並べます。

  1. 社内の相談窓口に記録つきで相談する。 会社には相談に応じる体制と、事後の迅速な対応が義務づけられています。相談した日・相手・回答を書き残します。
  2. 労働局に相談する。 匿名でも相談でき、無料です。窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表にまとめています。
  3. 労働局長の援助(第36条)を求める。 労働局が会社に助言・指導・勧告をします。
  4. 調停(第37条)を申請する。 紛争調整委員会が双方の話を聞き、調停案を示します。手続きの流れは労働局の助言・指導と調停:パワハラ・カスハラの紛争を解決する仕組みへ。
  5. 損害賠償など民事の手段を検討する。 個別の見込みは弁護士に事実を示して相談します。

労働局に会社の対応を伝えるときは、次のように事実を並べると話が早く進みます。

伝え方の例:「9月10日に社内の相談窓口へ上司の言動を相談しました。窓口からは10月23日の現在まで事実確認の連絡がなく、上司との席もそのままです。相談した日と担当者の名前、その後のやり取りを記録してあります。会社に何を求められるか、手続きを教えてください。」

なお、国家公務員・地方公務員には、第48条により第42条2項(公表)と第45条1項(報告の求め)が適用されません。公務員の手段は民間と別の仕組みになります。条文全体の並びを確かめたいときは、前の記事パワハラ防止法の条文と2026年10月改正:第31条〜第38条を整理に戻ってください。義務がいつから適用されたかはパワハラ防止法はいつから?大企業・中小企業・2026年改正の年表で確かめられます。

よくある質問

Q. 会社がパワハラを放置していると、労働局に知らせることはできますか?

できます。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーは、パワハラについての相談を受けています。厚生労働省のリーフレットは、パワハラについても労働局長による助言・指導や、調停による紛争解決の援助を行っていると案内しています。どの手続きに進むかは、相談の中で労働局と決めていきます。

Q. 企業名が公表されたかどうかは、どこで確かめられますか?

公表できるのは厚生労働大臣(第42条2項)なので、厚生労働省のウェブサイトや発表資料を確かめることになります。公表は勧告に従わなかった場合に限られる手段で、相談すれば公表に進むという仕組みではありません。

Q. 過料と罰金は何が違うのですか?

罰金は刑法などに定められた刑罰で、刑事手続で科されます。過料は行政上の義務違反に対する金銭の制裁で、刑罰ではありません。パワハラ防止法の過料は、報告を求められて報告しない、または虚偽の報告をした場合が対象です。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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