労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできること
労働局のハラスメント相談窓口は、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。パワハラ・セクハラ・妊娠出産等に関するハラスメント(マタハラ)・育休等のハラスメント・カスハラの相談を、平日8時30分から17時15分まで受け付けていて、厚生労働省は「匿名でも大丈夫」「プライバシーは厳守」「相談は無料」と案内しています。この記事では、窓口でできる相談・労働局長の援助・調停の3段階と、それぞれで会社に何が伝わるかを説明します。
雇用環境・均等部(室)でできること:相談・援助・調停の3段階
雇用環境・均等部(室)は、会社にハラスメント防止の措置を義務づけた法律(労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・育児・介護休業法)を受け持つ部署です。パワハラは労働施策総合推進法31条、カスハラは2026年10月1日から施行された同法33条、セクハラは均等法11条、マタハラは均等法15条が、会社の措置義務を定めています。
| 段階 | 何をするか | 会社とのかかわり | 費用 |
|---|---|---|---|
| 相談 | 法律の内容の情報提供、会社でできる対応や手続の説明 | 本人が望まなければ会社に連絡しない | 無料 |
| 労働局長の援助 | 双方から事情を聴き、助言・指導・勧告で解決を促す(労働施策総合推進法36条) | 会社からも事情を聴く | 無料 |
| 調停 | 調停委員が調停案を作り、受諾を勧告する(同法37条) | 会社も調停の場に呼ばれる | 無料 |
法違反の疑いがあれば、援助とは別に、会社への行政指導が行われることもあります。窓口の番号は局ごとに違い、担当する法律で番号が分かれている局もあるので、厚生労働省の所在地一覧で自分の局を探してください。各窓口の番号をまとめた一覧はパワハラの相談窓口一覧にあります。
労働局長の援助(助言・指導・勧告)の流れ
援助は、労働者か事業主のどちらか、または両方の申し出で始まります。厚生労働省のリーフレット(令和7年度版)の説明を順に並べます。
- 申し立てる。 来局のほか、連絡先を書いた文書や電話でも申し立てられ、申立書などの文書は要りません。代理人による申し立てもできます(委任状などが必要)。
- 事情聴取。 申し立てた人と会社の双方から事情を聴きます。同僚などの第三者から聴くのは、必要があり、双方の了承を得た場合です。
- 助言・指導・勧告。 問題の解決に必要な具体策を示します。解決金などの具体的な金額を労働局から示すことはできません。
- 終わり方。 双方が援助の内容を受け入れれば解決です。申し立ての取下げ、会社が度重なる要請にも事情聴取に応じない、対立が強く歩み寄りが難しい、などの場合は打ち切りになり、必要に応じて調停を申請できます。
援助の対象は、会社のパワハラ防止の措置と、パワハラの相談をしたことなどを理由とする不利益取扱いをめぐる、労働者と事業主の間の紛争です。労働者同士の紛争は対象外で、会社の措置が行われた日や終わった日からおおむね1年以上たっている場合も、原則として対象になりません。援助を求めたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(36条2項)。
- 相談(匿名可)→ 会社には伝わらない
- 援助の申し立て(電話・文書・来局)→ 会社から事情聴取 → 助言・指導・勧告 → 解決/打ち切り
- 調停の申請(申請書を提出)→ 調停会議(非公開)→ 調停案の受諾勧告 → 双方受諾で解決/打ち切り
- 援助・調停の申請を理由とする不利益取扱いは禁止(労働施策総合推進法36条2項・37条2項)
調停の申請:申請書の項目と、合意の効力
パワハラの調停は、紛争調整委員会の「優越的言動問題調停会議」で行われ、弁護士や大学教授、社会保険労務士などの調停委員が担当します。申請は、調停申請書を雇用環境・均等部(室)へ出して行います。申請書は労働局長あてで、厚生労働省のページから様式をダウンロードできるほか、電子政府の総合窓口(e-Gov)から電子申請もできます。窓口に持参するか電子で出すかなど、出し方は事前に電話で聞いておきます。
申請書に書く項目は次のとおりです。厚生労働省のリーフレットに、労働施策総合推進法の記入例(業務の与え方への不満から異動を求める例)が載っています。
- 労働者の氏名・住所・電話番号
- 事業主の名称・代表者・住所、勤務先の事業所が別ならその名称と所在地
- 調停を求める事項とその理由(記入例では、会社に相談しても対応がなく、異動を求めたい、という書き方)
- 紛争の経過(会社に相談した日と、会社の対応など)
- その他参考となる事項(訴訟や他の機関を使っていないか、会社に労働組合があるか)
- 日付と、申請人の氏名
調停会議は非公開で、双方から事情を聴き、調停案を作って受諾を勧告します。双方が受け入れて成立した合意は民法上の和解契約になり、一方が守らなければ、もう一方は債務不履行として訴えることができます。調停が打ち切られた場合、通知を受けた日から30日以内に同じ請求で訴えを起こせば、時効の完成猶予について調停を申請した時に訴えたものとみなされます(均等法30条を労働施策総合推進法38条で準用)。
付き添う補佐人や、意見を代わりに述べる代理人には特別な資格は要りませんが、報酬を得て行えるのは弁護士・特定社会保険労務士・認定司法書士に限られます。経緯を書き起こすときはパワハラの時系列表の作り方が使えます。調停とあっせんの使い分けまで含めた解説は労働局の助言・指導と調停の仕組みにまとめました。
匿名でできる範囲と、社内窓口との使い分け
匿名でできるのは相談までです。援助も調停も、会社から事情を聴いて解決策を示す手続なので、名前を伏せたまま進めるのは現実的ではありません。逆に言えば、相談の段階では会社に知られずに、法律上どんな対応を会社に求められるか、援助と調停のどちらが合いそうかを聞けます。
相談の切り出し方の例:「上司の叱責について社内の窓口に相談しましたが、調査もされないままです。会社に名前を伝えずに、まず使える手続を教えてください。」
社内の相談窓口が機能しているなら、そこで事実確認と措置を求めるのが早い場合もあります。社内窓口に相談するときの確かめ方は社内のハラスメント相談窓口の使い方にあります。どこに相談するか迷っている段階なら、分野を問わず受け付ける総合労働相談コーナーから入って、受け持つ部署に振り分けてもらう方法もあります。
労基署に相談してよいか迷うときはパワハラは労基に相談できる?労基署が動かないと言われる理由と窓口、労基署での相談の進め方は労働基準監督署に相談する方法:扱える問題と相談の流れ・持ち物を読んでください。
よくある質問
Q. 労働局に相談すると、会社にすぐ連絡がいきますか?
相談の段階では、会社に連絡するかどうかは本人の希望しだいです。厚生労働省は、労働局でのハラスメント相談は匿名でもよく、プライバシーは厳守すると案内しています。会社から事情を聴くのは、本人が援助や調停を申し出たときです。
Q. 労働局は慰謝料や解決金を決めてくれますか?
労働局長の援助(助言・指導・勧告)の中で、解決金などの具体的な金額を労働局から示すことはできないとされています。調停では、調停委員が解決金の支払いを含む調停案を作って受諾を勧告した例がリーフレットに載っていますが、受け入れるかは双方が決めます。
Q. 退職した後でも援助や調停を申し出られますか?
対象は労働者と事業主の間の紛争です。厚生労働省のリーフレットは、会社の措置が行われた日や終わった日からおおむね1年以上たっている場合を、原則として対象にならないものの例に挙げています。同じリーフレットの調停事例には、パワハラで辞めざるを得なくなったとして会社の対応不足を理由に慰謝料を求めた申請があり、調停案が示されて双方が受け入れた例が載っています。個別に使えるかは雇用環境・均等部(室)が判断するので、早めに電話して伝えます。
出典・参考にした公的な情報
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
- 相談窓口の一覧(雇用環境・均等部(室)の受付時間)(厚生労働省)
- 紛争解決援助制度と調停(申請書様式・リーフレット)(厚生労働省)
- 紛争解決援助制度と調停のご案内(令和7年度版リーフレット)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第33条・第35条〜第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 男女雇用機会均等法 第11条・第15条・第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。