記録と証拠 / Q&A

会社がパワハラの録音禁止と言うとき:就業規則の確かめ方と記録の代替

この記事のもくじ
  1. 録音禁止はどこに書いてある?就業規則の確かめ方
  2. 規程の文言で意味が変わる:読み分けの表
  3. 録音できないときの代わりの記録:4つの方法
  4. 「録音禁止」と言われた場面別の動き方
  5. 録音禁止でも相談はできる:相談先と不利益な扱いの禁止

会社や上司から「録音禁止」と言われたら、まず就業規則やその付属規程に、本当に録音を禁じる定めがあるかを確かめます。会社には就業規則を労働者に周知させる義務があり(労働基準法106条)、掲示・書面の交付・パソコンなどでいつでも見られる状態のいずれかで示すことになっています。定めがあるなら、録音に代えて、逐語メモ・確認のメール・同席者・面談記録の4つを組み合わせて、パワーハラスメント(パワハラ)の記録を残していきます。

録音禁止はどこに書いてある?就業規則の確かめ方

口頭で「うちは録音禁止だから」と言われても、それが規程にある決まりなのか、その場の上司の考えなのかで、受け止め方が変わります。次の手順で確かめます。

  1. 就業規則のありかを探す。 労働基準法施行規則52条の2は、周知の方法を「各作業場の見やすい場所への掲示・備え付け」「書面の交付」「パソコン等に記録し、労働者が常時確認できる機器を各作業場に置く」と定めています。社内の掲示板、共有フォルダ、社内ポータル、入社時の書類を見ます。
  2. 見つからなければ、人事に閲覧を頼む。 頼んだ日と相手をメモしておきます。
  3. 録音に関係しそうな箇所を書き写す。 服務規律、情報管理、秘密保持、懲戒の章を探し、条番号と文言をそのまま写します。
  4. 規程の版を確かめる。 改定日が書かれていれば、自分が録ろうとしている時期に効いている版かを見ます。

文例(人事への依頼):「就業規則と、情報管理に関する規程を確認したいので、閲覧できる場所か写しをいただけますか。服務規律のところを読みたいと思っています。」

なお、就業規則の作成と届出が義務づけられているのは、常時10人以上の労働者を使う会社です(労働基準法89条)。小さな職場では就業規則そのものがないこともあり、その場合の「禁止」は、上司や会社のその場の指示として受け止め、言われた日時と言葉を記録しておきます。労働契約法7条は、合理的な労働条件を定めた就業規則を会社が周知させていた場合に、その内容が労働契約の内容になると定めています。周知されているか、どんな文言かが、最初に確かめる点になるのはこのためです。

規程の文言で意味が変わる:読み分けの表

「録音」の文字があっても、何を禁じているかは文言で違います。下の表は、規程によくある書き方と、読むときに確かめる点を並べたものです。どの書き方でどう扱われるかを判定する表ではないので、迷うときは写した文言を持って相談します。

早見表:録音に関する規程の書き方と、確かめる点
規程の書き方の例 主に何を禁じているように読めるか 確かめる点
業務上の秘密・顧客情報を許可なく記録し、持ち出してはならない 顧客情報や営業秘密の記録・持ち出し 上司との会話が「業務上の秘密」に当たると読めるか
会社の許可なく、社内で撮影・録音をしてはならない 社内での撮影・録音全般 許可の申請の方法が書かれているか。懲戒の章で処分の対象になっているか
面談・会議の録音は禁止する 特定の場面の録音 どの面談・会議が対象か。相談窓口の面談も含むか
規程に定めがなく、口頭で「禁止」と言われた その場の指示 誰が、いつ、どんな言葉で言ったか

規程にあてはまるかもしれないと思っても、すぐに「録ったら処分される」と決めつける必要はありません。処分の考え方や、すでに録ってしまった後のことはパワハラの録音がバレたらで説明しています。

録音できないときの代わりの記録:4つの方法

録音を控えると決めた場合でも、記録の手段は残っています。録音がないときの全体像はパワハラの録音がないときに残せるものにまとめていますが、録音禁止の職場で使いやすいのは次の4つです。

1. 逐語メモを直後に書く。 言われた言葉を、要約せずにそのまま書きます。トイレや休憩室に移ってすぐ、日時・場所・同席者と一緒に書くのがこつです。書き方はパワハラの記録の書き方の記入例を使えます。

2. 口頭の指示をメールで確かめる。 面談や叱責のあとに、指示の中身を自分から確認する形で送ると、日時と内容が会社のメールに残ります。

文例:「本日15時の面談で、〇〇の資料を明日9時までに全面的に作り直すよう指示をいただきました。指示の内容に誤りがあればご指摘ください。」

3. 同席者を頼む。 1対1の面談が続くなら、人事や別の上司の同席を頼みます。同席を断られたら、断られたこと自体をメモに残します。

文例:「次回の面談は、話の内容を正確に理解したいので、人事の方にも同席していただけないでしょうか。」

4. 面談や相談の記録を会社に残してもらう。 相談窓口との面談なら、話した内容と会社の回答を書面にしてもらうよう頼みます。頼み方はパワハラ相談の記録を会社に残してもらう方法で、相談の場そのものを録りたいときの考え方はパワハラ相談の場を録音してもいいかの記事で扱っています。

「録音禁止」と言われた場面別の動き方

禁止の言われ方によって、先に取る動きが変わります。

言われた場面 先にやること 残す記録
面談の冒頭で「録音しないで」と言われた その場で言い争わず、面談の内容は逐語メモで残す。面談後に、話した要点をメールで確認する 言われた日時と言葉、面談後に送った確認メール
廊下や席で口頭で「録音は禁止だ」と言われた 規程の有無を人事に確かめる。確かめるまでの間は録音以外の方法で残す 誰がいつ言ったか、人事への閲覧依頼の日
社内メールや通達で一律に禁止と通知された 通知の文面を保存し、対象の範囲(面談・会議・社内全般)を読み分ける 通知のメールと、対象範囲を写したメモ
すでに録ってしまったあとで禁止だと知った 消さずに、元のファイルを保管したまま相談先に事実を話す 録った日時と経緯のメモ(録音がバレたときも参照)

録音禁止でも相談はできる:相談先と不利益な扱いの禁止

録音ができないことと、パワハラを相談できるかどうかは別の話です。労働施策総合推進法31条は、会社にパワハラの相談に応じる体制を整えることを義務づけ、2項で、相談したことや会社の調査に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。

会社の窓口に相談しにくいときは、外の窓口を使えます。都道府県労働局の総合労働相談コーナーや雇用環境・均等部(室)、弁護士、労働組合です。就業規則を見せてもらえない場合は、労働基準法の義務の問題として、労働基準監督署に相談することもできます(労働基準法104条は、法違反の事実を監督署に申告でき、申告を理由に不利益に扱ってはならないと定めています)。窓口の番号はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。

録るか録らないかを決める前に、写した規程の文言と、これまでのメモを持って相談すると、自分の職場で取れる記録の方法を具体的に聞けます。

よくある質問

Q. 就業規則を見せてほしいと頼んだのに、会社が見せてくれません。

労働基準法106条は、会社に就業規則を労働者へ周知させる義務を定めており、掲示・備え付け、書面の交付、パソコンなどでいつでも見られる状態のどれかの方法によるとされています。頼んだ日と相手、断られた言葉をメモに残し、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。

Q. 会社のハラスメント相談窓口との面談も録音禁止と言われました。

相談の場の録音は、会社が面談のルールとして断ってくることがあります。その場合は、面談のあとに話した内容と会社の回答を書面やメールで残してもらう方法があります。相談の場での記録の残し方は「パワハラ相談の場を録音してもいいか」の記事で扱っています。

Q. 録音禁止の規程があるのに録音してしまいました。もう相談には使えませんか?

録ってしまった録音をどう扱うかは、規程の中身と録った場面で考え方が変わります。自分で消したり公開したりする前に、弁護士や労働組合に録音の存在を伝えて、扱い方を相談してください。バレたときの動き方は「パワハラの録音がバレたら」の記事にまとめています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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