パワハラの録音がバレたら?会社の録音禁止と処分の心配への備え
この記事のもくじ
パワーハラスメント(パワハラ)の録音が上司や会社にバレても、その時点で処分が決まるわけではありません。会社が懲戒をするには、どの行為にどの処分をするのかを就業規則などで示しておく必要があると一般に考えられており、そのうえで労働契約法15条は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない懲戒は無効と定めています。バレたときは、その場で消さない・渡さない・言い返さないの3つを守り、言われたことを記録し、規程を確かめ、処分の話が出たら外部の窓口に相談する、の順で動きます。
バレたその日にやること:消さない・渡さない・言い返さない
録音に気づかれた直後は、動揺してその場で判断しがちです。次の順番を頭に入れておくと、後から不利な形を残さずに済みます。
- その場でデータを消さない。 消すと、何があったかを説明する材料がなくなります。消すよう言われたら、どの規程に基づく指示かを尋ね、「確認してからお返事します」と時間をもらいます。
- 端末をその場で渡さない。 私物のスマホには、録音以外の私的な情報も入っています。中を見せるよう求められたら、何の目的で、どの範囲を見たいのかを聞き、即答しません。
- 感情的に言い返さない。 「訴えるために録った」「ネットに出す」といった言葉は、相手を身構えさせ、話をこじらせます。目的の伝え方は、後ろの「録音の目的を説明するとき」の文例を使います。
- 言われたことを、その日のうちにメモする。 誰が・いつ・どこで・何と言ったか、求められたこと(削除・提出・始末書など)、自分が答えたことを書きます。
- 書類にその場で署名しない。 始末書・誓約書・退職届などを出すよう求められても、持ち帰って中身を読み、相談してから決めると伝えます。
会社の録音禁止と懲戒の関係:就業規則で確かめること
まず、自分が録ったことが、会社の規程のどこかに触れるのかを確かめます。労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使う会社に就業規則の作成と届出を義務づけ、表彰と制裁(懲戒)を定める場合は「その種類及び程度」を書くよう求めています。さらに106条で、会社は就業規則を労働者に周知させなければならないとされています。
| 確かめる場所 | 見る点 |
|---|---|
| 就業規則の「服務規律」 | 「許可なく撮影・録音してはならない」のような定めがあるか。対象が社内の会話全般か、特定の場所か |
| 情報管理規程・秘密保持の規程 | 禁じているのが顧客情報や営業秘密の記録・持ち出しなのか、会話の録音そのものなのか |
| 懲戒の章 | 懲戒の種類(けん責・減給・出勤停止など)と、どの行為がどの処分に当たると書いてあるか |
| 懲戒の手続 | 処分の前に本人の言い分を聞く手続(弁明の機会など)が定められているか |
規程に録音の定めが見当たらない場合や、口頭で「禁止だ」と言われただけの場合もあります。規程の読み方と、録音できないときの記録の残し方は会社がパワハラの録音禁止と言うときで詳しく扱っています。
懲戒の定めに当てはまるように見えても、どの処分が相当かは別の問題です。労働契約法15条は、懲戒が行為の性質・態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効と定め、16条は解雇について同じ考え方を定めています。録った目的、録った場面、データを外に出したかどうかといった事情が、判断の材料になります。
録音の目的を説明するとき:落ち着いて伝える文例
録音の理由を聞かれたら、相手を責める言葉ではなく、自分が受けた指示や言葉を正確に残すためだったと伝えます。データを社外に出していない場合は、そのことも添えます。
文例:「叱責のときに頭が真っ白になって、何を言われたのか正確に覚えていられないことが続いていました。自分が何を求められているのかを聞き直すために録りました。社外の誰かに渡したり、公開したりはしていません。」
文例(会社の相談窓口に話すとき):「〇月ごろから、〇〇さんの言動で困っています。記憶だけでは正確に伝えられないと思い、自分が参加した面談を録音しました。相談の材料として扱っていただけるか、扱い方を教えてください。」
録音を会社の相談窓口に持ち込む場合、パワハラの相談をしたこと自体を理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることは、労働施策総合推進法31条2項で禁じられています。ただし、この条文が守っているのは「相談したこと」や「会社の調査に協力して事実を述べたこと」で、録音の仕方そのものを認める定めではありません。録り方や使い方については、パワハラの録音の仕方:始めるタイミング・保存・文字起こしの考え方に沿って整えておきます。
処分や不利益な扱いをほのめかされたら:相談先と残す記録
「処分を検討する」「始末書を出せ」「辞めてもらうことになる」などと言われた時点で、一人で抱えず外部に相談します。
| 言われたこと | まずすること | 相談先の例 |
|---|---|---|
| 録音を消せ・提出しろ | 根拠の規程を尋ね、即答しない。言われた内容をメモ | 弁護士、労働組合 |
| 始末書・誓約書を書け | 持ち帰って読む。署名は相談のあとに | 総合労働相談コーナー、弁護士 |
| 懲戒処分を検討する | 懲戒の根拠条文と手続を就業規則で確かめる | 弁護士、労働組合 |
| 辞めてもらう・解雇する | 退職届は出さない。解雇なら理由の証明書を求める(労働基準法22条) | 総合労働相談コーナー、弁護士 |
| 相談したことを責められる | 日時と発言を記録する | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) |
総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や労働基準監督署内などにあり、予約不要・無料で、パワハラや解雇を含む労働問題の相談を面談か電話で受けています。番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめました。相談に行くときは、録音のファイル一覧、バレた日のメモ、就業規則の該当箇所の写しを持っていくと話が早く進みます。
録音がきっかけで職場での扱いが悪くなったと感じるときは、パワハラを相談して悪化したときの対処も参考にしてください。録音をネットで公開してしまうと、今度は自分が責任を問われる側になりえます。怒りがおさまらないときほど、公開ではなく相談先に録音を渡す道を選んでください。
よくある質問
Q. パワハラの録音がバレたら、解雇されることはありますか?
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になると労働契約法16条が定めています。録音が会社の規程に触れるか、どの処分が相当かは、規程の中身と録った場面・使い方などの事情で変わるため、この記事で結論は出せません。解雇や退職をほのめかされた時点で、総合労働相談コーナーや弁護士に事実を伝えて相談してください。
Q. 上司から「録音データを今すぐ消せ」と言われたら、従うしかないですか?
その場で消したり端末を渡したりする前に、どの規程に基づく指示なのかを尋ね、答えをメモに残します。消してしまうと、あとで何があったかを説明する材料がなくなります。従うかどうかを一人で決めにくいときは、「確認してからお返事します」と伝えて時間をもらい、相談先に意見を聞いてから動きます。
Q. 録音したことで、逆に自分が訴えられることはありますか?
録音を手元に持っているだけの場合と、SNSなどで公開した場合とでは、話が大きく違います。公開すると、内容が本当でも名誉毀損(刑法230条)などの問題になりえますし、民事で損害賠償を求められる側になることもあります。公開のリスクは「パワハラの録音をSNSで公開していいか」の記事で詳しく扱っています。
出典・参考にした公的な情報
- 労働契約法 第15条・第16条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第22条・第89条・第106条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 刑法 第230条・第231条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。