ハラスメントの種類 / 悩み整理

職場で悪口・陰口を言われるとき:放っておく・記録する・相談するの分かれ目

この記事のもくじ
  1. 分かれ目は「業務や評価に影響が出ているか」
  2. パワハラ指針とつながる悪口の型
  3. 記録の残し方:自分で聞いた話と、伝え聞いた話を分ける
  4. SNSで晒し返さない理由
  5. 相談先:社内の窓口から、労働局・法務局の人権相談まで

職場で悪口や陰口を言われているとき、放っておくか、記録するか、相談するかの分かれ目は、それが自分の業務や評価に影響しているかどうかです。仕事に響いていない陰口なら距離を取って様子を見る選択もありますが、仕事を外された、評価で触れられた、取引先にまで話が広がった、という段階なら記録を始めて相談に進みます。ただし、言い返すつもりでSNSに相手のことを書くのは避けてください。この記事では分かれ目の見分け方、記録のしかた、晒し返さない理由、相談先を順に整理します。

分かれ目は「業務や評価に影響が出ているか」

悪口や陰口は、職場で起きる困りごとの中でも、本人にしか分からない形で進みやすいものです。まず、今の状況がどの段階にあるかを確かめます。

分かれ道:悪口・陰口への動き方の3段階
段階 状況の例 動き方
放っておく(距離を取る) 雑談の中での陰口を耳にした程度で、仕事の進め方や周りの対応は変わっていない 反応せず接点を減らす。気になる出来事だけ日付をメモしておく
記録する 同じ人から繰り返し言われる、噂が複数の人に広がっている、心身に影響が出始めた 出来事ごとに記録をつけ、信頼できる人に話しておく
相談する 仕事から外された、評価や人事の話で噂に触れられた、取引先や顧客に話が伝わった、人前で言われた、SNSに書かれた 記録を持って上司・相談窓口へ。社内で動かなければ社外の窓口へ

「放っておく」を選ぶ場合でも、我慢を続けることとは違います。距離を取るのは、相手の言葉に振り回されずに仕事を続けるための選択で、状況が変われば次の段階に進めばよいのです。

パワハラ指針とつながる悪口の型

悪口や陰口は、それだけで法律上の名前がつくわけではありませんが、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)の指針が挙げる例とつながるものがあります。相談するときに、どの例に近いかを意識して伝えると、会社が対応を考えやすくなります。

  • 人前での侮辱や、複数人あての悪口:パワハラ指針の「精神的な攻撃」には、人格を否定するような言動や、相手の能力を否定し罵倒するような内容のメールを、本人を含む複数の労働者あてに送ることが例に挙がっています。
  • 病歴などの個人情報を周りに広める:「個の侵害」には、性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療などの機微な個人情報を、本人の了解なく他の労働者に暴露することが例に挙がっています。
  • 性的な噂を流す:セクハラ指針は、性的な内容の情報を意図的に流すことを「性的な言動」に含め、同僚が取引先で性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流したため仕事が手につかない、という例を環境型のセクハラに挙げています。

指針の例は限られた列挙ではなく、当てはまるかは事情を総合して判断されます。記事で「これはパワハラ」と決めることはできませんが、近い例を知っておくと、何を記録すればよいかが見えてきます。言葉による攻撃の全体像は精神的な攻撃とはで整理しています。

記録の残し方:自分で聞いた話と、伝え聞いた話を分ける

陰口は自分のいない場所で言われるため、多くは誰かから伝え聞く形で知ることになります。記録では、自分が直接聞いたことと、人から聞いたことを分けて書くのがこつです。

  1. 自分で聞いた・見たこと:日時、場所、言った人、言葉をそのまま、その場にいた人。
  2. 伝え聞いたこと:誰から、いつ、どんな内容として聞いたか。教えてくれた人の名前は、相談の場で出してよいかを本人に確かめておきます。
  3. 影響:担当の変更、評価面談での発言、取引先の態度の変化など、噂のあとに起きたこと。
  4. SNSやチャット:画面を、URL・投稿日時・アカウント名・グループ名が分かる形で撮影します。

記録の例:「◯月◯日、□□さんから『△△さんが、私が経費をごまかしていると課内で言っている』と聞いた(□□さんは名前を出してよいと了承)。翌週の◯日、課長から経費精算の担当を外すと言われた。理由の説明はなかった。」

伝え聞いた話だけでは弱いと感じても、日付と経路が書いてあれば、会社が事実確認をするときの手がかりになります。記録しにくい行為の残し方は無視のパワハラを証拠に残すにはが参考になります。

SNSで晒し返さない理由

悪口を言われた側が、相手の名前を出してSNSに書いたり、録音を公開したりすると、今度は自分が責任を問われる側になるおそれがあります。刑法230条1項は、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた者を、その事実の有無にかかわらず3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金としています。本当のことを書いただけでも対象になりうるということです。事実を示さない悪口でも、公然と人を侮辱すれば231条の侮辱罪の対象になりえます。

230条の2には、公共の利害に関する事実で、目的が専ら公益を図ることにあり、真実であることの証明があったときは罰しないという特例がありますが、3つの条件をそろえ、証明するのは書いた側です。同僚への仕返しの投稿がこれに当てはまると考えて書くのは危険です。刑事だけでなく、名誉を傷つけた側として民法709条・710条の損害賠償や、723条の名誉を回復するための処分を求められる民事の問題にもなりえます。

反対に、自分がSNSなどで書かれた側なら、名誉毀損罪と侮辱罪は告訴がなければ起訴されない罪で(刑法232条)、告訴は犯人を知った日から6か月を過ぎるとできなくなります(刑事訴訟法235条)。刑事手続を考えるなら、記録を持って早めに警察や弁護士に相談します。仕返しをしたい気持ちとの向き合い方はパワハラ上司に仕返ししたいときに、刑法の罪との関係はパワハラに刑事罰はあるかにまとめています。

相談先:社内の窓口から、労働局・法務局の人権相談まで

相談の段階に来たら、まず社内の上司や相談窓口に、記録と影響を添えて伝えます。会社には、相談に応じて事実を確認し、被害者への配慮や再発防止をとる措置が求められています(労働施策総合推進法31条とパワハラ指針)。

文例(相談窓口へ):「◯月ごろから、私が経費を不正に処理しているという事実と違う話が課内で広まり、◯日に精算の担当を外されました。経緯の記録を添付します。事実関係の確認と、担当変更の理由の説明をお願いできないでしょうか。」

社内で動かないときは、総合労働相談コーナーや都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。噂やネット上の書き込みによる人権の問題は、法務省の「みんなの人権110番」でも相談を受けていて、最寄りの法務局につながります。電話をかける前に、法務局の人権相談の番号も含めてパワハラの相談窓口一覧で受付時間を確かめておくと安心です。

悪口に加えて無視や仲間外れが続いている場合は、前の記事の職場で無視されるときの対処と、職場のいじめへの対処法で全体の流れを確かめてください。会社がハラスメントを防ぐためにどんな研修や周知をしているかを知りたいときは、次に読むハラスメント研修は義務かが手がかりになります。

よくある質問

Q. 陰口を言っている人を特定できなくても、会社に相談できますか?

相談できます。誰が言い出したか分からなくても、「◯月ごろから、私が◯◯をしたという事実と違う話が課内で広まっている」「それを理由に◯◯の担当から外された」と、内容と影響を伝えれば、会社は事実確認の進め方を考えられます。聞いた相手と日時が分かる範囲で記録を持っていくと、確認の糸口になります。

Q. 本当のことを言われているだけなら、名誉毀損にはならないのですか?

刑法230条1項は、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合を「その事実の有無にかかわらず」処罰の対象としています。内容が本当かどうかだけで決まるわけではありません。ただし、言われた内容が罪に当たるかは捜査機関や裁判所が事実をもとに判断することなので、刑事手続を考える場合は警察や弁護士に相談して決めます。

Q. 自分のことがSNSに書かれていたら、まず何をすればいいですか?

投稿の画面を、URL・投稿日時・アカウント名が分かる形で撮影して保存します。そのうえで、反論の投稿や相手への直接の書き込みはせず、会社の相談窓口や法務局の人権相談に相談します。投稿が消される前に記録を残しておくことが、後の相談や手続の土台になります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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