職場のいじめへの対処法:大人のいじめを相談・あっせんにつなぐ方法
この記事のもくじ
職場のいじめは、記録を残す→社内の窓口や上司に相談する→総合労働相談コーナーに相談する→労働局の助言・指導やあっせんを使う、という順に外へ出していけます。大人のいじめは「いじめ」という言葉が法律にない分、どこに持ち込めばいいか迷いやすいのですが、公的な手続はそろっています。いじめがパワーハラスメント(パワハラ)の要件に当たるかどうかで使う手続が変わるので、その分かれ目も含めて整理します。
職場のいじめは労働相談で最も多い悩みの一つ
厚生労働省の「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」では、総合労働相談コーナーに寄せられた民事上の個別労働紛争の相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」が内容別で最も多い分類であり続けています。自分だけの特殊な悩みではなく、公的な窓口が日常的に受けている相談だということです。件数と推移はパワハラ・いじめの相談件数の最新統計にまとめています。
なお、この「いじめ・嫌がらせ」の数には、労働施策総合推進法に基づくパワハラの相談は含まれていません。パワハラの相談は同法に基づいて別に受け付け、別に数えられています。窓口と手続が2系統あるのは、次の見出しで説明する分かれ目があるためです。
大人のいじめは、子どものいじめのように目立つ形をとるとは限りません。よくある型を、パワハラ指針の6類型と並べると次のようになります。
| 職場でよくあるいじめの型 | 近い指針の類型 | 記録で押さえる点 |
|---|---|---|
| 無視・仲間外れ・飲み会や連絡網から外す | 人間関係からの切り離し | いつから、誰が、どの連絡から外されたか |
| 人前での嘲笑・陰口・人格を否定する言葉 | 精神的な攻撃 | 言われた言葉をそのまま、聞いていた人 |
| 仕事を回さない・雑用だけさせる | 過小な要求 | 本来の担当業務と実際に任された業務 |
| 一人では終わらない量や締切を押し付ける | 過大な要求 | 指示の日時・量・期限、他の人との比較 |
| 私生活の詮索・病歴などを周りに話す | 個の侵害 | 誰に、何を話されたか |
| 叩く・物を投げる・わざとぶつかる | 身体的な攻撃 | けがの写真、受診記録 |
叩かれる、物を投げられるなど身の危険がある場合は、社内の手続より先に身の安全を確保します。警察への相談の仕方は職場で暴力・脅しを受けたときの警察への相談にあります。
パワハラに当たるかで、使える手続が変わる
パワハラ指針は、パワハラを「優越的な関係を背景とした言動」で「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により「就業環境が害されるもの」と定め、3つをすべて満たすものとしています。優越的な関係には、上司だけでなく、抵抗や拒絶が難しい同僚・部下の集団による行為も含まれます。同僚たちからのいじめでも、パワハラとして扱われる場合があるということです。
| いじめの整理 | 主な窓口 | 使える手続 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| パワハラの3要素に当たりうる(会社の措置義務の問題) | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー | 労働局長の助言・指導・勧告、紛争調整委員会の調停 | 労働施策総合推進法36条・37条 |
| 3要素に当たるか分からない・当たらないいじめ・嫌がらせ | 総合労働相談コーナー | 労働局長の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん | 個別労働紛争解決促進法4条・5条 |
分かれ道を、自分の状況で見極めるための問いを挙げておきます。
- 数人が同じ側に立っているか。 集団による無視や陰口なら、優越的な関係に近づきます。
- 業務の指示・配置・評価に絡んでいるか。 仕事を回さない、評価で不利に扱うといった形なら、パワハラの類型に近づきます。
- 1対1で、業務に関係のない嫌味にとどまるか。 その場合はいじめ・嫌がらせとして、あっせんの道が中心になります。
どれに当たるかが分からないままでも、窓口は受け付けます。
どちらに当たるかを相談する前に自分で決める必要はありません。総合労働相談コーナーはパワハラもいじめ・嫌がらせも受け付けていて、話を聞いたうえで、どの手続が使えるかを案内し、必要に応じて担当の部署へつなぎます。調停とあっせんの違いをもう少し詳しく知りたいときは、労働局の調停とあっせんの違いが役に立ちます。
あっせんの前にしておくこと:記録と社内での相談
労働局の手続に進む前に、出来事を日付つきで1件ずつ書いた記録と、社内で相談した経過の記録を手元に置きます。いじめは一つひとつが小さく見えやすいので、まとめて見せられる形が土台になります。記録の項目と社内への文例は、手順書として職場の嫌がらせへの対処:陰湿な嫌がらせを止めるための5ステップにまとめました。証拠の集め方はパワハラの証拠集めと今日から残す記録の手順でも扱っています。
会社には、相談に応じて事実を確認し、被害者への配慮や再発防止をとる措置が求められています(労働施策総合推進法31条とパワハラ指針)。社内の窓口が動かないときや、相談した相手が加害者側だったときに、社外の手続へ進みます。
あっせんにつなぐ流れと、知っておきたい限界
総合労働相談コーナーは、全国の労働局や労働基準監督署の中などにあり、予約不要・無料で、面談か電話で相談できます。所在地と受付時間は窓口ごとに違うので、パワハラの相談窓口一覧で探してから連絡してください。相談の後、いじめ・嫌がらせとして会社との間で解決を図りたい場合は、次のように進みます。
- 助言・指導の申出:労働局長が紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示して、会社に自主的な解決を促します。強制力はありません。
- あっせんの申請:あっせん申請書を労働局に出します。電子申請もできます。
- 相手方の意思確認:労働局が会社に参加するかどうかを確かめます。参加しない場合、あっせんは打ち切られます。
- あっせん期日:弁護士や大学教授、社会保険労務士などのあっせん委員3人が間に入ります。手続は非公開で、原則として双方が別室で待ち、顔を合わせずに進みます。
- あっせん案:委員があっせん案を示すことがありますが、受け入れるかは当事者の自由です。合意できれば終了、できなければ打ち切りです。
限界も知っておく必要があります。会社に参加の義務はなく、参加しなければ打ち切りになります。令和7年度に処理を終えたあっせん4,220件のうち、紛争当事者の一方が不参加だったものは2,006件(47.5%)で、約半数にのぼります(厚生労働省の施行状況)。打ち切られた場合、通知を受けた日から30日以内に同じ請求で訴えを起こせば、時効の完成猶予についてあっせん申請の時に訴えがあったものとみなされます(個別労働紛争解決促進法16条)。その後の選択肢は労働局のあっせんを会社が拒否したときにまとめています。申請書の書き方から当日の流れは労働局のあっせんの流れで扱っています。
心身がつらいとき、職場を離れることも考えるとき
いじめが続くと、眠れない、朝になると体が動かない、職場に近づくと動悸がする、といった変化が出ることがあります。手続を進めるより先に、休むことや受診を優先してよい場面です。今すぐ誰かに話したいときは、仕事がつらい・限界のときの相談先に電話やLINEの窓口をまとめています。
職場を離れることを考え始めたら、辞める前に記録の保管や体調の受診を済ませておくと、後で労災や失業保険の手続を考えるときに困りにくくなります。順番はパワハラで退職するか迷うときで整理しています。いじめの中でも「物を隠される」「嘘の噂を流される」といった陰湿な嫌がらせへの動き方は次に読む職場の嫌がらせへの対処の5ステップで、無視については職場で無視されるときの対処で型ごとに扱います。
よくある質問
Q. 同僚からのいじめでも、労働局のあっせんを使えますか?
あっせんは労働者と会社(事業主)の間の紛争を扱う制度で、厚生労働省は労働者同士の紛争を対象外としています。同僚からのいじめでも、会社に職場環境の改善や対応を求める形で会社との紛争として整理できるか、同僚の集団による行為としてパワハラの調停の対象になるかは、事情によって変わります。総合労働相談コーナーで、同僚の言動と会社の対応を時系列で話し、どの手続が使えるかを整理してもらってください。
Q. いじめのせいで心の病気になった場合、労災になりますか?
精神障害の労災認定では、ハラスメントやいじめのように繰り返される出来事は一体として評価するとされています。認定されるかは労働基準監督署が要件に沿って判断するので、通院の記録といじめの記録を残したうえで、[パワハラによる精神障害の労災認定](/rousai-seishin/)で要件と申請の流れを確かめてください。
Q. 会社に知られずに労働局へ相談できますか?
厚生労働省は、労働局でのハラスメントの相談について、匿名でも受け付け、プライバシーを守り、相談は無料だと案内しています。一方、助言・指導やあっせんは会社に働きかける手続なので、申し出れば会社に知られます。まず相談だけして、手続を使うかはその後で決める順番にできます。
出典・参考にした公的な情報
- 令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況(厚生労働省)
- 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
- 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 第4条・第5条・第16条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。