パワハラ・いじめの相談件数は?最新の公的統計を令和7年度で読む
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令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ寄せられたパワーハラスメント(パワハラ)の相談は77,514件で、前年度の70,429件から増えました。よく引用される「職場のいじめ・嫌がらせ55,614件(14年連続最多)」は総合労働相談コーナー等の別の統計で、厚生労働省の資料には、パワハラの相談はこの数字に含まれないと注記があります。この記事は、どちらも厚生労働省が公表した令和7年度の資料から、件数・推移・解決の数字を読み分けます。
令和7年度の主な数字:パワハラ77,514件と、いじめ・嫌がらせ55,614件
まず二つの統計の主な数字を並べます。出どころが違うので、表の行ごとに「何を数えたか」を見てください。
| 数字 | 何を数えたか | 出典の資料 |
|---|---|---|
| 77,514件 | 労働局 雇用環境・均等部(室)への、労働施策総合推進法のパワハラに関する相談 | 雇用均等関係法令の施行状況 |
| 80,969件 | 同じ窓口への労働施策総合推進法の相談の合計(パワハラが95.7%) | 同上 |
| 1,198,010件 | 総合労働相談コーナー等への総合労働相談(18年連続で100万件超) | 個別労働紛争解決制度の施行状況 |
| 277,053件 | そのうち民事上の個別労働関係紛争の相談 | 同上 |
| 55,614件 | 民事上の紛争相談の内容のうち「いじめ・嫌がらせ」(14年連続最多) | 同上 |
パワハラの相談の推移は、令和5年度60,053件、令和6年度70,429件、令和7年度77,514件です。前年度からの増加は約10.1%です(筆者の計算:7,085÷70,429)。77,514件の内訳は、法令や制度の内容についての問い合わせが33,583件、法違反の疑いがある相談が43,931件でした。
「いじめ・嫌がらせ」にパワハラが入らない理由
令和4年4月に、中小企業を含むすべての事業主にパワハラ防止の措置が義務づけられました。これに伴い、労働施策総合推進法に定めるパワハラの相談は同法に基づいて対応されることになり、総合労働相談の中では「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上され、民事上の個別労働関係紛争(いじめ・嫌がらせ)の件数には計上されていません。資料の注記はこの扱いを説明しています。
- 労働局 雇用環境・均等部(室)の統計(雇用均等関係法令の施行状況)
- 労働施策総合推進法のパワハラ相談 77,514件 → パワハラの件数はここを見る
- 総合労働相談コーナー等の統計(個別労働紛争解決制度の施行状況)
- 総合労働相談 1,198,010件
- 法制度の問い合わせ/労働基準法等の違反の疑い → 法に基づくパワハラ相談はこちらに計上
- 民事上の個別労働関係紛争 277,053件 → 内訳の「いじめ・嫌がらせ」55,614件(パワハラ相談は含まない)
- 総合労働相談 1,198,010件
いじめ・嫌がらせの中身の内訳は公表されていません。同僚同士のいじめや、パワハラの3要素に当てはまらない嫌がらせなどが含まれると読めますが、それ以上は数字から言えません。同僚や先輩からの言動に悩んでいる人は、先輩からのパワハラ・いじめの整理や職場のいじめを相談・あっせんにつなぐ方法が近い内容です。
なお、令和3年度以前と令和4年度以降では集計の対象が違うため、いじめ・嫌がらせの10年推移を見て「減った」「増えた」と単純には比べられません。
総合労働相談の内訳:民事上の紛争で多い相談の上位5つ
民事上の個別労働関係紛争の相談を内容別に見ると、個別の項目の上位は次のとおりです。一つの相談に複数の内容があれば重ねて数えるため、割合の分母は延べ327,359件です。資料には項目を特定しない区分として「その他の労働条件」59,647件(18.2%)と「その他」34,209件(10.4%)も載っていますが、これらは中身が一つに定まらない集計区分なので、下の表からは除いています。「いじめ・嫌がらせが最多」は、内容が特定された項目の中での順位です。
| 順位 | 相談の内容 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | いじめ・嫌がらせ | 55,614件 | 17.0% |
| 2 | 自己都合退職 | 38,386件 | 11.7% |
| 3 | 労働条件の引き下げ | 33,368件 | 10.2% |
| 4 | 解雇 | 32,651件 | 10.0% |
| 5 | 退職勧奨 | 26,022件 | 7.9% |
相談の先にある手続きの数字も出ています。労働局長の助言・指導の申出は9,616件で、内容は労働条件の引き下げ1,220件、いじめ・嫌がらせ1,163件の順でした。紛争調整委員会のあっせんの申請は4,486件で、処理した4,220件のうち合意の成立は1,141件(27.0%)、一方が参加しないことによる打ち切りは2,006件(47.5%)です。あっせんは会社に参加を強制できない手続きだと、この数字からも読めます。窓口の使い方は総合労働相談コーナーでできる相談と次の手続きにまとめています。
パワハラ相談のその後:是正指導・援助・調停の数字
雇用均等関係法令の施行状況の資料には、相談の後の数字も載っています。資料は改正前の条番号(第30条の2など)で書かれていますが、2026年10月1日以降の条番号ではパワハラの措置義務は第31条です。
- 是正指導:労働局が雇用管理の実態を確かめた3,034事業所のうち1,714事業所(56.5%)で違反が見つかり、2,525件の是正指導がありました。最も多いのはパワハラ防止の措置についての指導で1,524件(60.4%)です。是正指導は会社の体制に向けたもので、個々の行為を労働局が認定して処分する手続きではありません。
- 労働局長による紛争解決の援助:申立ての受理は1,675件。年度中に援助を終えた1,648件のうち956件(58.0%)が、助言・指導・勧告によって解決しました。
- 調停(優越的言動問題調停会議):申請の受理は692件。調停を始めた656件のうち、調停案の受諾勧告が14件(すべて双方受諾)、受諾勧告の前に和解したものが171件で、合わせて約28.2%です(筆者の計算:185÷656)。
援助や調停に強制力はなく、受け入れるかどうかは当事者が決めます。手続きの流れは労働局の助言・指導と調停の仕組みで説明しています。セクハラ・マタハラの相談は男女雇用機会均等法の数字として別に集計されており、令和7年度はセクシュアルハラスメントの相談が8,723件、妊娠・出産等に関するハラスメントの相談が1,663件でした。
数字を読むときの注意と、自分の相談への使い方
公的な件数を記事や会社への説明で使うときは、次の点を添えると誤解が起きにくくなります。
- 年度と出典を書く:「令和7年度、厚生労働省『雇用均等関係法令の施行状況』」のように書く。次の令和8年度分は2027年7月ごろの公表が目安です。
- 窓口に寄せられた数だと書く:会社の相談窓口、弁護士、労働組合への相談は入っていません。起きた件数そのものではありません。
- 二つの統計を足さない:窓口も数え方も違うので、合計値を作らない。
- 「パワハラが○件認定された」と書かない:相談件数は、パワハラに当たると判断された件数ではありません。
相談した人がどれくらいいて、そのあとどうしたかは、労働者へのアンケートである職場のハラスメント実態調査の数字で見られます。精神障害の労災の請求・認定件数は精神障害の労災の件数の記事に分けています。
自分の状況で使うなら、年に7万件を超える相談が労働局に寄せられていること自体が、「こんなことで相談してよいのか」と迷う人への一つの答えになります。会社の相談窓口についても、パワハラ指針は該当するか微妙な場合も含めて広く相談に応じることを事業主に求めています。相談の前に、出来事の日時と内容をメモにしておくと、短い時間でも状況が伝わります。
よくある質問
Q. 「職場のいじめ・嫌がらせが14年連続で最多」という数字は、パワハラの件数のことですか?
違います。55,614件は総合労働相談コーナー等の「民事上の個別労働関係紛争」の相談の内訳で、令和4年4月以降は労働施策総合推進法上のパワハラの相談が含まれていません。パワハラの件数を知りたいときは、雇用均等関係法令の施行状況にある77,514件(令和7年度)を見ます。
Q. 二つの数字を足せば、職場のハラスメント相談の総数になりますか?
なりません。集計する窓口も数え方も違い、どちらも窓口に寄せられた相談の数で、職場で起きた件数そのものではありません。会社の相談窓口や弁護士への相談は入っていないので、合計を作らずに、それぞれ何を数えた数字かを添えて使います。
Q. 令和8年度の数字はいつ出ますか?
個別労働紛争解決制度の施行状況は、令和7年度分が2026年7月7日に公表されました。例年7月ごろの公表なので、令和8年度分は2027年7月ごろが目安です。
出典・参考にした公的な情報
- 令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況(2026年7月7日公表)(厚生労働省)
- 令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況(資料本体PDF)(厚生労働省)
- 雇用均等関係法令の施行状況(厚生労働省)
- 令和7年度 法施行状況(詳細)PDF(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。