精神障害の労災認定件数【令和7年度】請求・支給決定とパワハラの割合
精神障害の労災の認定件数(支給決定件数)は、厚生労働省の最新の統計である令和7年度「過労死等の労災補償状況」(2026年7月15日公表)で1,082件でした。請求件数は4,958件で前年度より1,178件増え、決定件数は3,839件、決定に占める支給決定の割合(認定率)は28.2%です。出来事別に見ると、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が222件で最も多く、支給決定全体の約2割(20.5%、筆者の計算)を占めます。この記事では、令和7年度の数字、5年間の推移、出来事・業種・年齢の内訳と、数字を読むときの注意を順に整理します。
令和7年度の精神障害の労災件数(最新)
令和7年度は、2025年4月から2026年3月までの1年間です。精神障害の業務災害についての主な数字は次のとおりです。
| 区分 | 請求件数 | 決定件数 | 支給決定件数 | 認定率 |
|---|---|---|---|---|
| 精神障害(全体) | 4,958 | 3,839 | 1,082 | 28.2% |
| うち女性 | 2,597 | 1,992 | 530 | 26.6% |
| うち自殺(未遂を含む) | 215 | 212 | 76 | 35.8% |
出典は厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況」の別添資料2(表2-1)です。
言葉の意味をそろえておきます。
- 請求件数:その年度に労働基準監督署へ出された請求の数
- 決定件数:その年度に支給・不支給の決定が出た数(前年度以前に請求された分を含む)
- 支給決定件数:決定のうち、業務上と認められて支給が決まった数。一般に「認定件数」と呼ばれるのはこの数字です
- 認定率:決定件数に占める支給決定件数の割合(1,082÷3,839)
請求件数のうち女性は2,597件で、半数を超えています(52.4%、筆者の計算)。比較のため、同じ令和7年度の脳・心臓疾患(報道発表の本文で確認)は請求1,254件、支給決定217件で、精神障害の請求はその約4倍です。
5年間の推移:請求は2倍に、「過去最多」の読み方
令和3年度からの推移を並べると次のようになります。
| 年度 | 請求件数 | 決定件数 | 支給決定件数 | 認定率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 2,346 | 1,953 | 629 | 32.2% |
| 令和4年度 | 2,683 | 1,986 | 710 | 35.8% |
| 令和5年度 | 3,575 | 2,583 | 883 | 34.2% |
| 令和6年度 | 3,780 | 3,496 | 1,056 | 30.2% |
| 令和7年度 | 4,958 | 3,839 | 1,082 | 28.2% |
- 棒グラフの案:年度ごとに請求件数と支給決定件数を並べる(数値は上の表)
- 添える注:請求は5年で約2.1倍、支給決定は約1.7倍(筆者の計算)。認定率は令和4年度の35.8%から令和7年度の28.2%へ下がっている
請求件数も支給決定件数も、この5年間は毎年増えています。令和7年度の請求件数は表の5年間で最も多く、前年度からの増加幅(1,178件、約31%)も目立ちます。一方、認定率は令和4年度以降下がっていますが、これは支給決定の伸びより決定件数の伸びが大きかったためで、この数字だけで審査が厳しくなったとは読めません。
検索では「精神障害の労災が過去最多」という言い方をよく見かけます。令和7年度の報道発表の本文を確かめたところ、請求件数・支給決定件数とも「前年度比○件の増加」という書き方で、「過去最多」という表現は使われていませんでした。この記事では、確かめられる範囲として「この5年間で最多」と書いています。過去の年度の公表資料は、年度ごとの公表一覧のページからさかのぼれます。
出来事別の内訳:パワハラが最多
支給決定件数を、認定で「業務による強い心理的負荷」と評価された出来事ごとに見て、36件以上のものを並べると次のとおりです。出来事の名前は2023年9月1日改正の認定基準の評価表(別表1)によります。
| 出来事 | 決定件数 | 支給決定件数 | 支給決定に占める割合(筆者の計算) |
|---|---|---|---|
| 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた | 403 | 222 | 20.5% |
| 顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた | 240 | 127 | 11.7% |
| セクシュアルハラスメントを受けた | 233 | 127 | 11.7% |
| 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった | 353 | 113 | 10.4% |
| 業務に関連し、悲惨な事故や災害の体験、目撃をした | 164 | 110 | 10.2% |
| 特別な出来事(心理的負荷が極度のものなど) | 74 | 74 | 6.8% |
| 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた | 133 | 62 | 5.7% |
| 1か月に80時間以上の時間外労働を行った | 90 | 40 | 3.7% |
| 上司とのトラブルがあった | 1,061 | 36 | 3.3% |
パワハラ、カスタマーハラスメント(顧客等からの著しい迷惑行為)、セクハラの3つで476件となり、支給決定全体の約44%に当たります(筆者の計算)。令和6年度はパワハラ224件、カスハラ108件、セクハラ105件で、カスハラとセクハラは1年で約20件ずつ増えました。
目を引くのは「上司とのトラブル」です。決定件数は1,061件と全項目で最も多いのに、支給決定は36件にとどまります。評価表では業務指導の範囲内の叱責はこの項目で「弱」や「中」と評価されるため、上司との問題で請求しても、パワハラの項目に当たると判断されるかどうかで結果が大きく分かれていると読めます。この点から見た準備はパワハラの労災認定は難しい?、項目ごとの強・中・弱は精神障害の労災認定基準を読む、カスハラの項目はカスハラは労災になる?、セクハラの項目はセクハラ・マタハラでも労災になる?で扱います。
業種・年齢・時間外労働で見た内訳
業種(大分類)別では、請求件数・支給決定件数とも「医療、福祉」が最も多く、請求は1,288件(請求全体の26.0%)、支給決定は292件でした。もう少し細かい分類で請求が多いのは、社会保険・社会福祉・介護事業(706件)、医療業(578件)、道路貨物運送業(202件)です。
年齢別の支給決定件数は次のとおりで、20代から50代まで、どの年代でも200件を超えています。
| 年齢 | 19歳以下 | 20〜29歳 | 30〜39歳 | 40〜49歳 | 50〜59歳 | 60歳以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 支給決定件数 | 11 | 236 | 243 | 294 | 244 | 54 |
時間外労働の長さ別では、労働時間を調べるまでもなく強い心理的負荷が認められたなどの「その他」が699件で最も多く、支給決定の約65%を占めます(筆者の計算)。ハラスメントのように、長時間労働がなくても出来事そのものの強さで認められる事案が多いことがうかがえますが、「その他」のすべてがハラスメントというわけではありません。
数字を読むときの注意
統計を自分の状況に当てはめるときは、次の点に気をつけてください。
- 認定率は請求件数で割った値ではない。 決定件数が分母で、決定には前年度以前の請求分も入ります。
- 審査請求で覆った分は別に数えられる。 審査請求などで取り消されて新たに支給となった件数(令和7年度の精神障害で28件)は、支給決定件数に含まれていません。
- 出来事別の割合は、その出来事として評価された事案の中の話。 自分が「パワハラを受けた」と考えていても、評価される項目は調査で決まります。
- 公務員は含まれない。 労災保険の統計なので、公務災害の件数は入っていません。手続きは公務員のパワハラ労災は公務災害を見てください。
数字の中には、自殺(未遂を含む)の事案も含まれます。いま気持ちがつらいときは、統計を読むより先に、電話やLINEで話せる仕事がつらい・限界のときの相談先を使ってください。
労働局に寄せられたパワハラの相談件数など、労災以外の統計はパワハラ・いじめの相談件数は?最新の公的統計を令和7年度で読むにまとめています。数字の背景にある認定の型はパワハラの労災認定事例の読み方、要件と請求の流れはパワハラによる精神障害の労災認定で確かめられます。
よくある質問
Q. 次の統計はいつ公表されますか?
「過労死等の労災補償状況」は年度ごとにまとめられ、例年6〜7月ごろに前年度分が公表されています。令和7年度分は2026年7月15日の公表でした。令和8年度分が出たら、この記事の数字も差し替えます。
Q. 公務員の公務災害の件数も含まれていますか?
この統計は労災保険の請求と決定をまとめたものです。労災保険法3条2項は、国の直営事業と官公署の事業(労働基準法別表第一に掲げる事業を除く)にはこの法律を適用しないと定めており、公務員の多くは公務災害の制度で扱われます。手続きの違いは公務員向けの記事で整理しています。
Q. 自殺の事案はどれくらい認められていますか?
令和7年度の精神障害のうち、自殺(未遂を含む)は請求215件、決定212件、支給決定76件で、支給決定は前年度より12件減りました。出来事別では、パワハラの項目で支給決定された222件のうち12件が自殺の事案です。
出典・参考にした公的な情報
- 令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(2026年7月15日)(厚生労働省)
- 令和7年度 精神障害に関する事案の労災補償状況(別添資料2)(厚生労働省)
- 過労死等の労災補償状況(年度ごとの公表一覧)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準(基発0901第2号・別表1)(厚生労働省)
- 労働者災害補償保険法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。