労災 / 制度解説

精神障害の労災認定基準の読み方:パワハラの項目を強・中・弱で整理

この記事のもくじ
  1. 評価表の見方:5つの欄と「強・中・弱」の決まり方
  2. 項目22(パワハラ)の強・中・弱を並べて読む
  3. 近い項目との違い:いじめ・上司とのトラブル・退職強要
  4. 出来事が複数あるとき・長時間労働が重なるとき

精神障害の労災認定基準では、パワーハラスメント(パワハラ)は別表1「業務による心理的負荷評価表」の**項目22「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」**で評価されます。平均的な心理的負荷の強度は最も重い「Ⅲ」で、執拗な人格否定などは「強」、反復・継続していない攻撃は「中」、それに至らないものは「弱」と、具体例で段階が分かれています。同じ職場の出来事でも、同僚からのいじめは項目23、業務指導の範囲内の叱責は項目24と、当てはめる欄が変わります。この記事では、評価表の各欄の読み方と、パワハラに関係する項目の強・中・弱の違いを、通知の原文に沿って整理します。認定の要件全体はパワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れを先に読むと流れがつかめます。

評価表の見方:5つの欄と「強・中・弱」の決まり方

別表1は、仕事で起こりうる出来事を29の「具体的出来事」に分け、1行ごとに次の欄を並べた表です。

欄 書かれていること 読むときのポイント
出来事の類型 事故や災害、仕事の量・質、役割・地位の変化、パワハラ、対人関係、セクハラなど パワハラは独立した類型(⑤)になっている
具体的出来事 「上司等から〜を受けた」などの出来事の名前 自分の出来事がどれに当たるか、または近いかを考える
平均的な心理的負荷の強度 Ⅲ・Ⅱ・Ⅰ(Ⅲが最も強い) 出来事の一般的な重さの目安で、結論ではない
総合評価の視点 経緯、内容・程度、執拗性、会社の対応など 調査でどこを確かめられるかの一覧として使える
強・中・弱の具体例 「強」である例、「中」になる例、「弱」になる例 事実が例に合えばその強度で評価される

評価の順番は、パンフレットの説明では次のとおりです。まず「特別な出来事」(生死にかかわるケガ、本人の意思を抑圧したわいせつ行為、発病直前1か月におおむね160時間を超える時間外労働など)に当たれば、それだけで総合評価は「強」です。当たらなければ具体的出来事に当てはめ、具体例と照らします。事実が例と合わないときは、「総合評価の視点」の欄を考慮して事案ごとに評価します。

評価は本人の受け止め方ではなく、職種・立場・年齢・経験が似た「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるかで行われます。評価の物差しが決まっているぶん、事実を具体的に示すほど当てはめが正確になります。

項目22(パワハラ)の強・中・弱を並べて読む

項目22の「総合評価の視点」には、指導・叱責等に至る経緯や状況、攻撃の内容と程度、上司(経営者を含む)との職務上の関係、反復・継続など執拗性の状況、就業環境を害する程度、会社の対応と改善の状況が挙げられています。具体例を段階ごとに並べると次のとおりです。

段階 認定基準の具体例(要約)
強 治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた
強 暴行等の身体的攻撃を、反復・継続するなどして執拗に受けた
強 人格否定、必要以上に長時間の厳しい叱責・人前での大声の威圧的な叱責、無視などの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害を、反復・継続するなどして執拗に受けた
強 「中」程度の攻撃を受け、会社に相談しても、または会社がパワハラを把握していても適切な対応がなく、改善されなかった
中 治療を要さない程度の暴行や、上と同じ種類の精神的攻撃等が行われたが、行為が反復・継続していない
弱 「中」に至らない程度の身体的攻撃、精神的攻撃等が行われた

「強」と「中」を分けているのは、主に行為の種類ではなく、続き方と会社の対応です。同じ人格否定の言葉でも、繰り返されていれば「強」、一度きりなら「中」が基本になります。ただし認定基準は、一度の言動でも比較的長時間に及び、態様が強烈で悪質な場合は「執拗」と評価すべき場合があるとしています。また、「中」の行為でも、会社に相談して改善されなかった事情が加わると「強」の例に当たります。

この欄の注には、「上司等」には職務上の地位が上の人のほか、業務に必要な知識や経験を持ち、その協力がないと仕事が回らない同僚・部下や、抵抗や拒絶が難しい集団での行為も含むと書かれています。性的指向・性自認に関する精神的攻撃等も含まれます。6類型の言葉の意味はパワハラ6類型の早見表で確かめられます。

近い項目との違い:いじめ・上司とのトラブル・退職強要

パワハラの周辺には、似た出来事を扱う項目がいくつかあります。どこに当てはめられるかで、平均的な強度や具体例が変わります。

項目 平均的強度 「強」の例(要約) 「中」「弱」の例(要約)
23 同僚等から、暴行又はひどいいじめ・嫌がらせを受けた Ⅲ 治療を要する暴行、暴行や人格否定の言動を執拗に受けた、「中」程度で会社が対応せず改善なし 中:治療を要さない暴行や人格否定の言動が反復・継続していない/弱:「中」に至らない言動
24 上司とのトラブルがあった Ⅱ 方針をめぐり周囲も認識する大きな対立が生じ、その後の業務に大きな支障を来した 中:業務指導の範囲内の強い指導・叱責/弱:業務指導の範囲内の指導・叱責
16 退職を強要された Ⅲ 退職しないと表明しているのに長時間・威圧的な方法などで執拗に退職を求められた 中:強い退職勧奨だが方法・頻度から強要とはいえない/弱:断れば終わる退職勧奨
19 雇用形態や国籍、性別等を理由に不利益な処遇等を受けた Ⅱ 差別や不利益取扱いの程度が著しく大きく、人格を否定するもので、継続した 中:雇用形態や性別等を理由に不利益な処遇等を受けた

読者が迷いやすいのは項目22と24の境目です。項目24では、業務指導の範囲内の指導・叱責は「弱」、範囲内の強い指導・叱責は「中」とされています。つまり、叱責が「業務上明らかに必要性がない」「業務の目的を大きく逸脱している」「社会通念上許される範囲を超える」と示せるかどうかで、当てはめる項目そのものが変わります。指導との線引きはパワハラと指導の違いは?業務上必要な範囲を見分ける5つの視点が参考になります。

客からの迷惑行為は項目27、セクハラは項目29で評価されます。それぞれの読み方はカスハラは労災になる?とセクハラ・マタハラでも労災になる?で扱います。

出来事が複数あるとき・長時間労働が重なるとき

パワハラの被害では、叱責だけでなく配置転換や仕事の取り上げなど、複数の出来事が重なることがよくあります。認定基準は次のように扱います。

  1. 関連している出来事は一つにまとめる。 原則として最初の出来事を具体的出来事として当てはめ、関連して起きた出来事は「出来事後の状況」として評価します。
  2. 関連していない出来事は全体で見る。 単独では「強」にならなくても、「中」の出来事が複数あれば、近さや数、内容によって全体で「強」になる場合があります。「中」が一つでほかが「弱」だけなら、原則として全体も「中」です。
  3. 長時間労働で強まる。 1か月おおむね100時間の時間外労働を「恒常的長時間労働」とし、「中」の出来事の後にこれが続いた場合などは「強」と判断する例が示されています。
自分の出来事を評価表に当てはめる手順
  1. 出来事を時期順に書き出す(いつ・誰から・何を・何回・どれくらいの時間)
  2. それぞれを評価表の具体的出来事に当てはめる(項目22・23・24・16など)
  3. 具体例の「強・中・弱」と照らし、合わない点は「総合評価の視点」の言葉で事実を補う
  4. 会社に相談した日と、会社の対応・改善の有無を書き添える
  5. 同じ期間の時間外労働の目安を勤務記録から確かめる

当てはめの結論を出すのは労働基準監督署で、自分で「強」と決めて請求する必要はありません。それでも、この手順で整理しておくと、請求書や聴取で何を伝えるべきかがはっきりします。出来事の書き出し方はパワハラの時系列表の作り方、提出用に整える方法は精神障害の労災の申立書の書き方、評価表が実際にどう当てはめられたかはパワハラの労災認定事例の読み方で確かめてください。

よくある質問

Q. 評価表の「強」の例とぴったり同じでないと、「強」にはなりませんか?

認定基準は、具体例はあくまで例示であり、事実が具体例に合わない場合は「総合評価の視点」の欄と留意事項を考慮して個々に評価するとしています。例に書かれた言葉と同じかどうかより、行為の内容・続いた期間・会社の対応などの事実をそろえて説明することが大切です。

Q. パワハラか上司とのトラブルかは、誰が決めるのですか?

どの具体的出来事に当てはめるかも含めて、労働基準監督署が調査した事実をもとに判断します。業務指導の範囲内の叱責は項目24で評価されるため、指導の必要性がなかったことや、叱責の長さ・場所・言葉を示す記録があると、項目22に当たるかを判断する材料になります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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