パワハラ6類型の早見表:該当する例・しない例を指針から一覧に
パワハラの6類型とは、厚生労働省の指針が職場のパワーハラスメント(パワハラ)の代表的な言動として示す、身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6つの型です。指針は類型ごとに「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」を挙げています。
下の早見表は、2026年10月1日適用時点の指針本文(厚生労働省パンフレット収録)から例を写し、要点を短く整えたものです。例は限定列挙ではなく、個別の事案では判断が異なることもあります。また、該当すると考えられる例は、いずれも優越的な関係を背景にしていることが前提です。
パワハラ6類型の早見表(厚生労働省の指針の例)
| 類型 | 該当すると考えられる例 | 該当しないと考えられる例 |
|---|---|---|
| 身体的な攻撃(暴行・傷害) | 殴打、足蹴りを行う/相手に物を投げつける | 誤ってぶつかる |
| 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言) | 人格を否定するような言動(性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を含む)/業務の遂行に関する必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返す/他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返す/能力を否定し罵倒するような内容のメール等を、本人を含む複数の労働者宛てに送る | 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない人に一定程度強く注意する/業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動をした人に一定程度強く注意する |
| 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視) | 意に沿わない人を仕事から外し、長期間別室に隔離したり自宅研修させたりする/一人に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる | 新規採用者の育成のために短期間集中的に別室で研修等を行う/懲戒処分を受けた人を通常業務に戻す前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせる |
| 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害) | 長期間にわたり、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で勤務に直接関係のない作業を命じる/新卒採用者に必要な教育をしないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できないと厳しく叱責する/業務と関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる | 育成のために現状より少し高いレベルの業務を任せる/繁忙期に業務上の必要性から、通常時より一定程度多い業務の処理を任せる |
| 過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる・仕事を与えない) | 管理職を退職させるため、誰にでも遂行できる業務を行わせる/気にいらない人に嫌がらせのために仕事を与えない | 能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する |
| 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る) | 職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする/性的指向・ジェンダーアイデンティティや病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、了解を得ずに他の労働者に暴露する、または開示を禁止する・強要する | 配慮を目的として家族の状況等についてヒアリングを行う/了解を得て、機微な個人情報を必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝え、配慮を促す |
類型ごとの詳しい説明は、身体的な攻撃とは?叩く・物を投げるなど職場の暴力を受けたときの対応、精神的な攻撃とは?暴言・人格否定・長時間の叱責が当たる例、人間関係からの切り離しとは?隔離・別室・集団の無視が当たる例、過大な要求とは?こなせない仕事量やノルマがパワハラになる境目、過小な要求とは?能力に見合わない雑用ばかりがパワハラになる例、個の侵害とは?私生活への干渉・病歴の暴露がパワハラになる例の各ページにあります。暴行や脅しを受けていて身の危険があるときは、類型を確かめるより先に、身の安全の確保と警察への相談を考えてください。
早見表を読むときの4つの注意
表は便利ですが、そのまま当てはめると判断を誤りやすい点があります。
- 3要素がそろって初めてパワハラになる。 6類型は「どんな言動が典型か」を示すもので、それぞれの例も、優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲を超えること、就業環境が害されることの3要素を前提にしています。定義の全体はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を見てください。
- 例と少し違うだけで結論は変わらない。 厚生労働省のパンフレットは、例と少し異なる場合(たとえば「繰り返し」とある例が1回だけだった場合)でも、それだけで該当しない、または該当するとはならないと説明しています。
- 「一定程度」の幅は、事案ごとに考えられる。 「該当しない例」にある「一定程度強く注意」「一定程度多い業務」の程度は、個別の事情を総合的に考えて判断されます。強い注意でも、人格の否定や長時間の叱責の繰り返しに及べば、表の左側に近づきます。
- 類型の外にも当たりうる言動がある。 指針は、例が限定列挙ではないとしています。どの型にもぴったり合わない言動でも、記録と相談をためらう理由にはなりません。
2026年10月1日適用の指針で確かめておきたい点
2026年10月1日に適用された現行の指針では、次の点が書かれています。インターネット上には改正前の文言のままの解説も多いため、比べるときは注意してください。
- 個の侵害の例に「開示の禁止・強要」が入った。 機微な個人情報を了解なく暴露することに加えて、開示することを禁止したり強要したりすることも、該当すると考えられる例に含まれています。用語も「ジェンダーアイデンティティ」になっています。
- 商品の買い取り強要に関連する言動。 労働者の自由な意思に反して自社の商品やサービスを購入させる行為に関連する言動も、3要素を全て満たす場合はパワハラに当たると明記されました。
- 精神的な攻撃の対象となる属性。 パンフレットは、人格を否定するような言動に、外国人であることや特定の国・地域の出身・ルーツなどについての侮蔑的な言動も含まれると説明しています。また、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する言動については、一見特定の相手に向けていないようでも、実際には特定の相手に向けて行われていると客観的に認められるものが含まれます。
- 服装の指示。 パンフレットのQ&Aは、服装の指示には業務上の必要性・相当性が認められるものもある一方、足をけがしている人にヒールのある靴の着用を強制するような言動は該当し得ると説明しています。
なお、性的指向・ジェンダーアイデンティティへの嫌がらせや、本人の了解のない暴露を指す「SOGIハラ」「アウティング」という言葉は、指針の中の用語ではありません。指針上は、精神的な攻撃と個の侵害の例として扱われます。詳しくはSOGIハラとは?性的指向・性自認への嫌がらせとアウティングの扱いで説明しています。
自分の出来事を類型に当てはめるときの記録
類型が分かると、何を記録しておけば判断する人に伝わるかが見えてきます。類型ごとに、特に残しておきたい事実は次のとおりです。
| 類型 | 特に残しておきたい事実 |
|---|---|
| 身体的な攻撃 | 日時・場所、何をされたか、けがの写真、受診の記録、目撃者 |
| 精神的な攻撃 | 言われた言葉そのまま、続いた時間、周りにいた人、メールやチャットの宛先 |
| 人間関係からの切り離し | 外された業務・会議・連絡、始まった時期と期間、別室の場所と理由の説明 |
| 過大な要求 | 指示された業務量・期限・目標、自分の経験年数、教育や引き継ぎの有無 |
| 過小な要求 | 以前の担当業務と今の業務の比較、仕事がない日の記録、理由の説明 |
| 個の侵害 | 聞かれた・広められた情報の内容、誰に伝わったか、了解の有無 |
1つの出来事が複数の類型にまたがることもあります。類型名を無理に1つに決めるより、事実を分けて書いておくほうが、相談先で正確に整理してもらえます。出来事を3要素ごとに書き出す質問票はパワハラの基準を3要素で確かめる20問、公表された事例から会社の対応の分かれ目を読む方法はパワハラ事例の読み方:厚労省の公表事例から分かる会社の対応の分かれ目にあります。
よくある質問
Q. 6類型のどれにも当てはまらない言動は、パワハラにならないのですか?
指針は、6類型の例は限定列挙ではないとしています。どの類型にもはっきり当てはまらなくても、①優越的な関係、②業務上必要かつ相当な範囲を超える、③就業環境が害される、の3要素を全て満たせばパワハラに当たりえます。類型名より、具体的な言動と状況を記録しておくことが大切です。
Q. 1つの出来事が複数の類型にまたがることはありますか?
あります。たとえば、人前で長時間怒鳴りながら仕事を取り上げた場合は、精神的な攻撃と過小な要求の両方の要素を含みえます。記録では類型を無理に1つに決めず、言われたこと・されたことを分けて書いておけば、相談先が整理してくれます。
出典・参考にした公的な情報
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。