パワハラとは・判断の材料 / チェックリスト

パワハラの基準を3要素で確かめる:自分の出来事を書き出す20問

この記事のもくじ
  1. パワハラの基準:厚生労働省の指針が使う物差し
  2. ①優越的な関係を確かめる5問
  3. ②業務上必要かつ相当な範囲を確かめる8問
  4. ③就業環境への影響と、記録の有無を確かめる7問
  5. 答えを整理メモにまとめる:相談先で見せる形

パワハラの基準は、厚生労働省の指針が示す3要素(①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③就業環境が害されるもの)で、3つ全てを満たすかどうかで判断されます。このページでは、自分の出来事をこの3要素に沿って書き出すための20の質問を用意しました。

答えた結果で「パワハラだ」「違う」と決めるためのものではありません。相談先で事実を短時間で伝えられる整理メモを作るところまでが目的です。

パワハラの基準:厚生労働省の指針が使う物差し

指針は、3要素のそれぞれに判断の手がかりを書いています。②については、言動の目的、問題行動の有無を含む経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性を総合的に考えるとしています。③は「平均的な労働者の感じ方」が基準です。定義の全体はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目で説明しています。

「パワハラ 認定」という言葉で調べる人も多いのですが、実際には「認定」をする場面ごとに、判断する人と使う物差しが違います。

場面 判断するのは 主に使う物差し
社内の事実確認・懲戒 会社(相談窓口・人事など) 指針の3要素、就業規則
労働局の援助・調停 都道府県労働局長、紛争調整委員会 会社の措置義務(第31条)をめぐる労働者と会社の紛争(第36条の援助・第37条の調停)
労災の認定 労働基準監督署 心理的負荷による精神障害の認定基準
損害賠償の請求 裁判所 民法などの法律と証拠

どの場面でも、出来事の日時・言葉・状況が具体的に分かることが出発点になります。以下の20問は、そのための書き出し項目です。

①優越的な関係を確かめる5問

相手との関係を書き出します。上司だけでなく、同僚や部下からの言動が入る場合もあるため、肩書だけで判断しないでください。

  • Q1 相手の役職・立場は何か(直属の上司、上司の上司、役員、先輩、同僚、部下)
  • Q2 相手はあなたの評価・配置・勤務表・仕事の割り振りを決める立場にあるか
  • Q3 相手は、仕事に必要な知識や経験を持っていて、協力がないと業務が回らない人か
  • Q4 言動をしたのは1人か、複数人(集団)か
  • Q5 その場で断る・言い返すことが難しかった理由は何か(例:「評価に響くと思った」「周りが同調していた」)

Q3とQ4は、指針が同僚・部下からの言動でも優越的な関係に当たりうる例として挙げている場面です。詳しくは「優越的な関係」とは?同僚・部下からでもパワハラになりうる場面で扱っています。

②業務上必要かつ相当な範囲を確かめる8問

ここが一番迷いやすく、判断に使われる情報も多い部分です。相手の言い分として出てきそうなこと(「指導のつもりだった」など)も含めて、事実を並べます。

  • Q6 その言動の直前に、どんな業務上の出来事があったか(ミス、遅刻、締め切りの遅れなど。なければ「特になし」)
  • Q7 言われた・された内容を、できるだけそのまま書くと何か
  • Q8 内容は仕事の改善に関係していたか。人格・容姿・家族・出身など、仕事と関係ないことに触れていたか
  • Q9 時間はどれくらい続いたか(例:「会議室で約40分」)
  • Q10 場所はどこで、周りに誰がいたか(他の人の前か、個室か、メールやチャットの宛先に誰が入っていたか)
  • Q11 声の大きさ、机をたたくなどの態度、物を投げるなどの行為はあったか
  • Q12 同じような言動は何回目か。最初はいつ頃か
  • Q13 与えられた仕事の量・難しさ・内容は、あなたの経験や職種に見合っていたか(多すぎる、少なすぎる、私用の雑用など)

指針は、遅刻などを再三注意しても改善されない人に一定程度強く注意することを「該当しないと考えられる例」に挙げる一方、必要以上に長時間の厳しい叱責の繰り返しや、他の人の前での大声の威圧的な叱責の繰り返しを「該当すると考えられる例」に挙げています。Q6とQ9〜Q12は、この違いを判断する人が知りたい情報です。言動の型ごとの例はパワハラ6類型の早見表、考慮される要素の詳しい説明は業務上必要かつ相当な範囲とは?3要素の2つ目の解説にあります。

③就業環境への影響と、記録の有無を確かめる7問

最後に、働くうえでどんな支障が出ているかと、出来事を裏づける材料を書き出します。

  • Q14 その後、体調にどんな変化があったか(眠れない、食欲が落ちた、出勤前に動悸がする等)
  • Q15 受診したか。した場合、いつ、どこで、何と言われたか
  • Q16 遅刻・欠勤・休職・業務の遅れなど、仕事にどんな影響が出たか
  • Q17 同じ状況に置かれた同僚がいたら、その人も働きにくくなると思うか。その理由
  • Q18 出来事を記録したもの(メモ、日記、メール、チャット、録音)はあるか。いつ作ったか
  • Q19 見ていた人、相談した相手はいるか
  • Q20 会社の窓口や上司に、すでに伝えたことはあるか。そのときの対応はどうだったか

Q17は「平均的な労働者の感じ方」を意識した質問です。自分の受け止めを否定するためではなく、第三者に伝わる言葉で影響を説明する練習だと考えてください。③の考え方は「就業環境が害される」とは?3要素の3つ目の解説で例とともに説明しています。

答えを整理メモにまとめる:相談先で見せる形

20問に答えたら、1つの出来事を1枚にまとめます。相談の場では、時系列と「何を相談したいか」を先に伝えると話が進みやすくなります。

記入例:出来事1件ごとの整理メモ
項目 書く内容(例)
日時・場所 2026年9月14日(月)10時ごろ、2階の会議室
相手と関係(①) 課長(直属の上司。勤務評価を付ける)
直前の業務の状況(②) 提出期限を1日過ぎた報告書について
言われた・された内容(②) 「こんな仕事しかできないなら辞めてしまえ」と約40分。机を2回たたいた
周りにいた人 係長、同じ班の2人
回数 同じ趣旨の叱責は8月以降で4回目
影響(③) 翌朝から出勤前に吐き気。9月16日に内科を受診
記録 当日夜の手書きメモ、受診の領収書
相談したいこと 会社にどう伝えるか、社外の相談先はどこか
※判断は書かない。事実と、相談したいことだけを書く。

メモを作るときの注意は3つです。

  1. 評価の言葉より事実を書く。 「ひどいパワハラを受けた」より「人前で40分叱責された」のほうが判断する人に伝わります。
  2. 思い出せないことは空欄のままにする。 推測で埋めると、他の記録と食い違ったときに全体の信用に響くことがあります。
  3. 出来事が複数あれば、日付順の一覧も作る。 1件ごとのメモとは別に、日付と一行要約だけの表があると全体像が伝わります。作り方はパワハラの時系列表の作り方、表の項目はパワハラ記録のテンプレートを使えます。

できあがったメモは、社内の相談窓口、都道府県労働局、弁護士など、どの相談先でも使えます。持っていくものの確認はパワハラ相談の準備チェックリスト:持っていく記録と伝える5項目を見てください。体調の変化で受診や休職を考えている場合は、労災の判断に使われる認定基準の考え方をパワハラによる精神障害の労災認定で確かめておくと、残しておく記録の見当がつきます。

よくある質問

Q. 20問のうち「はい」がいくつあればパワハラになりますか?

点数で決まる仕組みはありません。指針は、3要素の全てを満たすかどうかを、目的や経緯、頻度、心身の状況などを総合的に考えて判断するとしています。この質問票は合否を出すためではなく、判断する人に事実を漏れなく伝えるための下書きとして使ってください。

Q. 答えられない質問があっても相談してよいですか?

相談して構いません。空欄は「覚えていない」「見ていない」と正直に残しておけば、相談先が必要に応じて確かめ方を案内してくれます。指針も、会社の相談窓口に対して、該当するか微妙な場合も広く相談に対応するよう求めています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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