公務員のパワハラ労災は公務災害:地方・国家公務員の申請先
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公務員がパワハラで精神疾患になったとき、補償は民間の労災保険ではなく公務災害の制度で行われます。地方公務員は、任命権者(所属の自治体など)を経由して地方公務員災害補償基金の支部長に認定を請求します。一般職の国家公務員は、勤めている府省の災害補償担当部署(人事院によれば人事課・秘書課が多い)に申し出て、府省が認定します。どちらも労働基準監督署は窓口にならず、不服申立ての先と期限も民間とは違います。
公務員のパワハラ労災は公務災害:まず自分の立場を確かめる
同じ「公務員」でも、立場によって使う法律と申請先が分かれます。最初に自分がどれに当たるかを確かめてください。
| 立場 | 使う法律 | 申請・申し出の先 | 不服の最初の先 |
|---|---|---|---|
| 一般職の国家公務員(常勤・非常勤) | 国家公務員災害補償法 | 勤めている府省の災害補償担当部署 | 人事院(災害補償審査申立て) |
| 地方公務員の常勤職員(教員・警察・消防を含む) | 地方公務員災害補償法 | 任命権者を経由して基金の支部長 | 基金の支部審査会 |
| 地方公務員で常勤でない職員(会計年度任用職員など) | 勤務の形態により、基金・条例の補償制度のほか、現業などでは労災保険 | 所属の人事担当で確かめる | 制度による |
| 私立学校の教員、民間の委託先の職員 | 労災保険法(民間) | 労働基準監督署 | 労災保険審査官 |
国家公務員災害補償法の対象は一般職の職員です(第1条)。自衛官など特別職の人は、所属の担当部署で根拠になる制度を確かめてください。民間の労災の仕組みはパワハラで労災は認められる?精神障害の3つの要件と申請の流れで説明しています。パワハラそのものの相談先が民間と違う点は公務員のパワハラ相談先と対処にまとめています。
地方公務員:任命権者を経由して基金に認定を請求する
地方公務員災害補償基金の案内では、手続きは次の順で進みます。
- 所属の担当に申し出て、請求書を用意する。 様式は基金のサイトの様式一覧にある。
- 任命権者を経由して、基金の支部長に請求する。 その災害が公務災害であることの認定請求と、補償の請求を併せて行う。
- 基金が任命権者の意見を聞いて認定する。 基金は認定に当たって任命権者の意見を聞かなければならず、結果を請求した人と任命権者に通知する(地方公務員災害補償法第45条)。
- 認定されれば、補償の決定と支給が行われる。
職場を経由する仕組みなので、提出した書類の写しと、渡した日・相手の名前を控えておいてください。加害者とされる人が上司の場合は、提出の経路を人事担当に相談しておくと気持ちの負担を減らせます。
精神疾患の認定は、基金の通知「精神疾患等の公務災害の認定について」(地基補第61号、令和6年3月22日に第3次改正)に沿って判断されます。発症前おおむね6か月の間に業務で強度の精神的・肉体的負荷を受けたこと、業務以外の負荷や個体側の要因で発症したとは認められないこと、が要件です。強度の負荷の例として「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けた」場合が挙げられ、負荷の強さは「同種の職員」が一般的にどう受け止めるかで判断されます。民間の心理的負荷評価表とは組み立てが違うので、民間向けの解説をそのまま当てはめないでください。
補償の種類は、療養補償・休業補償・傷病補償年金・障害補償・介護補償・遺族補償・葬祭補償です(第25条)。休業補償は、療養のため勤務できず給与を受けない期間について、平均給与額の60%に当たる額です(第28条)。このほか、基金は福祉事業も行っていて、種類は基金のサイトの「福祉事業の種類」で確かめられます。
国家公務員:府省への申し出と実施機関の認定
人事院のQ&Aによると、府省の補償事務担当者が災害を把握していれば担当者が手続きを進め、把握していなければ本人や遺族が担当者に申し出ます。その後、担当者が調査と資料の収集を行い、府省(実施機関)が認定します。実施機関は、公務上の災害を受けた人に、補償を受ける権利があることを速やかに通知しなければなりません(国家公務員災害補償法第8条)。
- 非常勤も対象。 人事院は、非常勤の国家公務員も補償の対象になると答えている。
- 認定前の受診。 認定前に共済組合員証で受診し、後で公務災害と認定された場合は、病院から本人と共済組合に返金され、その後に療養補償として支給される(人事院Q&A)。病院に公務災害だった旨を伝える。
- 休業補償。 平均給与額の60%(第12条)。平均給与額は、原則として疾病の発生が確定した日の属する月の前月末日から過去3か月の給与の総額を、その期間の総日数で割った額(第4条)。
- 休職中の給与。 公務上の病気で休職した場合は給与の全額が支給される。公務上でない心身の故障による休職は、満1年まで100分の80を支給できる定めになっている(一般職の職員の給与に関する法律第23条)。地方公務員は各自治体の条例による。
休む間の制度の違いは公務員がパワハラで休職するとき:病気休暇と休職の違い・給与・傷病手当金で確かめてください。
不服申立ての期限と時効:民間・地方・国家で違う
| 民間(労災保険) | 地方公務員 | 国家公務員 | |
|---|---|---|---|
| 最初の不服申立て | 労災保険審査官へ審査請求。決定を知った日の翌日から3か月 | 支部審査会へ審査請求。決定を知った日の翌日から3か月 | 人事院へ災害補償審査申立て(期限の確かめ方は下の説明) |
| 次の段階 | 労働保険審査会へ再審査請求。2か月 | 基金審査会へ再審査請求。裁決を知った日の翌日から1か月 | — |
| 時効 | 療養・休業は2年、障害・遺族は5年(政令で定める疾病は2027年4月1日から5年になる予定) | 2年(障害補償・遺族補償は5年)(第63条) | 2年(傷病補償年金・障害補償・遺族補償は5年)(第28条) |
地方公務員の場合、支部審査会に審査請求をして3か月たっても裁決がないときは、棄却されたものとみなして次に進むこともできます(地方公務員災害補償法第51条第3項)。取消訴訟は、裁決を知った日の翌日から6か月以内と基金は案内しています。審査請求と再審査請求は、時効の完成猶予と更新について裁判上の請求とみなされます(同条第4項)。
国家公務員の審査申立ては、国家公務員災害補償法第24条と人事院規則13-3(災害補償の実施に関する審査の申立て等)が定めています。民間の「3か月」に当たる申立ての期限は、この法律と規則の本文には書かれていません。人事院の「手引」に「災害補償審査申立ての期限」の項があるので、決定の通知を受けたら日付を控え、早めに人事院へ確かめてください。
文例(人事院への問い合わせ):「○月○日付で公務災害の認定に関する通知を受けました。災害補償審査申立てを考えています。申立ての期限と、提出に必要な書類を教えてください。」
申立書は人事院の公平審査局か地方事務局(所)に出します。持参・郵送なら正副2通、オンラインなら1通です。申し立てられるのは在職中の職員だけでなく、離職した人や遺族も含まれます。申立ても時効の完成猶予と更新については裁判上の請求とみなされます(国家公務員災害補償法第24条第3項)。
時効の改正は民間の労災保険(労災保険法)の話で、公務災害の時効は地方公務員災害補償法と国家公務員災害補償法で別に決まっています。民間の審査請求の流れは労災が不支給になったら:審査請求の期限と手続きの流れで扱っています。公務災害の補償にも慰謝料に当たるものは含まれていないので、損害賠償との関係はパワハラ労災が認められた後の慰謝料の考え方が参考になります。
申し出る前に準備しておくこと
公務災害でも、判断の土台は「いつ、誰から、何をされ、どう体調が変わったか」の記録です。次の5点をそろえてから担当に申し出ると、調査が進めやすくなります。
- 発症前おおむね6か月の出来事を、日付・相手・内容で並べた時系列表(作り方はパワハラの記録はいつから必要か)
- 診断書と通院の記録(頼み方はパワハラで診断書をもらうには)
- 上司や相談窓口に相談した日と、その後の対応の記録
- 勤務時間の記録(超過勤務が多かった場合)
- 提出した書類の写しと、提出日・提出先の控え
申請を自分で進めるのがつらいときは、家族に日付の整理を手伝ってもらう方法もあります。民間の労災と比べて申請するかを考えたい場合は、パワハラで労災申請するメリット・デメリット:会社との関係も含めてを参考にしてください。
よくある質問
Q. 会計年度任用職員でも公務災害の対象になりますか?
地方公務員災害補償法の「職員」は常勤の職員が中心で、常勤でない職員のうち勤務の形態が常勤に準ずる人も含みます(第2条)。それ以外の職員は、自治体が条例で補償の制度を定めることになっており(第69条)、勤務の形態によっては労災保険の対象になる場合もあります。自分がどの制度に当たるかは、所属の人事担当に任用の形態を伝えて確かめてください。
Q. 公務災害を申し出ると、人事上不利になりませんか?
人事院は国家公務員災害補償制度のQ&Aで、災害補償の認定を申し出ても人事上の支障は生じないと答えています。地方公務員の場合も、補償の請求は職員の権利として法律に定められています。申し出た日と相手は控えておき、気になる扱いを受けたら日付つきで記録してください。
Q. すでに退職していても申請できますか?
国家公務員について、人事院は退職した人も公務災害と認定されれば補償の対象になると案内しており、まず勤めていた府省の災害補償担当部署に相談するよう求めています。地方公務員も、補償を受ける権利の時効は2年(障害補償・遺族補償は5年)なので、期間内に元の所属か基金の支部に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 地方公務員災害補償法 第2条・第25条・第28条・第45条・第51条・第63条・第69条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 認定・補償等の手続(地方公務員災害補償基金)
- 不服申立ての概要(地方公務員災害補償基金)
- 精神疾患等の公務災害の認定について(地基補第61号)(地方公務員災害補償基金)
- 国家公務員災害補償法 第1条・第4条・第8条・第12条・第24条・第28条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員災害補償制度Q&A(人事院)
- 災害補償審査申立て(人事院)
- 人事院規則13-3(災害補償の実施に関する審査の申立て等)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 一般職の職員の給与に関する法律 第23条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。