公務員がパワハラで休職するとき:病気休暇と休職の違い・給与・傷病手当金
この記事のもくじ
公務員が心身の不調で仕事を休む方法は、大きく二つあります。病気休暇と休職です。国家公務員の場合、病気休暇は職員の請求で承認される休暇で、公務上・通勤などによるものを除くと連続して取れる上限は90日です。休職は任命権者の処分で、心身の故障では3年を超えない範囲で定められます。休職中の給与は、私傷病の扱いなら満1年まで俸給等の8割までを支給できます。地方公務員は、同じ形でも日数と割合は各自治体の条例で決まるので、条例で確かめる手順が大事になります。この記事では、手順、給与、共済組合の給付、復職や退職への分かれ道を順に説明します。相談先の全体は公務員のパワハラ相談先と対処:人事院・人事委員会など民間と違う窓口にあります。
病気休暇と休職の違い:国家公務員の場合
同じ「休む」でも、制度の性質が違います。
| 病気休暇 | 休職(分限) | |
|---|---|---|
| 性質 | 職員が請求し、承認される休暇 | 任命権者の処分(本人の意に反してもできる) |
| 根拠 | 人事院規則15-14 第21条 | 国家公務員法第79条、人事院規則11-4 |
| 期間 | 療養に必要な最小限度。公務上・通勤などを除く病気休暇は連続して90日が上限。症状が明らかに異なる別の傷病は、承認できる例外がある(規則15-14第21条第3項・第4項) | 心身の故障は3年を超えない範囲。3年に満たなければ通算3年まで更新できる |
| 給与 | 休暇中は減らない。例外で90日を超えて続くと、その後の日は俸給が半額になる(給与法附則6項) | 給与は原則なし。私傷病は満1年まで8割までを支給できる(給与法第23条第3項) |
| 身分 | 保有 | 保有(職務には従事しない) |
病気休暇が連続8日以上続いたあと、実際に勤務した日数が20日に達するまでに再び病気休暇を取ると、前後が連続しているものとみなされます(規則15-14第21条第2項)。「少し出勤して、また休む」を繰り返すと、90日の計算が続くということです。細かい数え方は、人事担当に日付を並べて確かめてください。
休職は、本人が望まなくても、心身の故障のため長期の休養を要するときに処分としてできる(国家公務員法第79条)ことが、病気休暇との大きな違いです。休職中は身分を保有しますが、職務には従事せず、給与は法律の定めがない限り支給されません(第80条第4項)。
休むまでの手順:受診→診断書→人事への申し出
- 受診して、診断書をもらう。 休む期間の見立てを書いてもらいます。診断書の頼み方はパワハラで診断書をもらうには:受診で伝えることと証拠としての使い方にあります。
- 所属の上司ではなく、人事担当に連絡してもよいか考える。 上司がパワハラの相手のときは、上位の管理職や人事担当に、診断書を出す窓口を指定してもらいます。
- 病気休暇の請求をする。 請求書の様式、診断書を求められる日数は、各府省・各自治体の規程で決まります。
- 休む期間が長くなりそうなら、休職の見通しを聞く。 病気休暇が90日に近づいたら、休職になるか、復職できるかを人事担当と医師に相談します。
- 給与と給付の扱いを、書面で確かめる。 次の章の表の項目を、人事担当に聞いてメモに残します。
人事担当への連絡文の例です。
文例:「診断書を取得しました。◯月◯日から◯週間の休養が必要とされています。病気休暇の請求の方法と、診断書の提出先、休暇中の給与の扱いを教えてください。上司への連絡は人事を通して行いたいです。」
給与の扱い:国と地方で何が違うか
国家公務員の給与は、給与法で定められています。
- 病気休暇。 休暇の間は給与は減りません。ここで90日の二つの定めを書き分けます。人事院規則15-14第21条は、公務上・通勤などを除く病気休暇を連続90日までとする取れる期間の上限です。給与法附則6項は、病気休暇が90日(人事院規則で定める場合は1年)を超えて引き続くとき、その後の日の俸給を半額にする給与の定めです。上限があるので、半額になるのは、症状が明らかに異なる別の傷病で承認が続くなど、例外で90日を超えたときです。どの場合が当たるかは、人事担当に確かめてください。
- 休職。 公務上の負傷・疾病は給与の全額(第23条第1項)。結核性疾患は満2年まで8割(同条第2項)。それ以外の心身の故障は、休職期間が満1年に達するまで、俸給・扶養手当・地域手当・住居手当・期末手当等の8割を支給できる(同条第3項)。1年を超えると、給与法上の支給はなくなります。
パワハラによるうつ病や適応障害は、公務災害と認定されなければ「それ以外の心身の故障」の扱いです。公務災害と認められれば全額の扱いにもなりうるため、申し出の判断が収入に響きます。申請先は公務員のパワハラ労災は公務災害:地方・国家公務員の申請先で説明しています。
地方公務員の給与は、条例で決まります。 地方公務員法第28条第3項は、休職の手続きと効果を条例で定めると書いています。休職期間や休職中の給与の根拠は、自治体ごとの条例です。自治体の例規集(インターネットで公開されています)で、次の条例を検索して確かめてください。
- 職員の分限に関する条例(休職の事由と期間)
- 職員の給与に関する条例(休職中の給与の割合)
- 職員の勤務時間、休暇等に関する条例(病気休暇の日数と給与)
見る場所は、休職の「期間」と「給与の割合」と「通算の考え方」の3点です。教員の場合は、結核性疾患の休職に特例があります(教育公務員特例法第14条)。詳しくは教員がパワハラで休職するとき:公立・私立で違う手続きとお金で扱います。
給与が減ったときの支え:共済組合の傷病手当金
公務員の健康保険にあたる共済組合には、傷病手当金があります。国家公務員共済組合法第66条と、地方公務員等共済組合法第68条は、ほぼ同じ形で次のように定めています。
- 組合員が公務によらないで病気やけがをして、療養のために勤務できないとき、勤務できなくなった日から3日を経過した日から支給する。
- 1日の額は、支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額の平均額の22分の1の3分の2。
- 支給期間は、同一の傷病について、支給を始めた日から通算して1年6か月。
- 1年以上組合員であった人が退職した際に受けている場合は、退職しなかったら受けられた期間、継続して支給される。
つまり、パワハラが原因でも、公務災害と認定されない間は「公務によらない病気」として傷病手当金の対象になります。公務災害と認定された場合は、公務上の扱いなので、傷病手当金の対象外です。
休職中に給与の8割を受けているときは、傷病手当金は給与との調整が入り、給与を受ける期間は全部または一部が支給されません(国家公務員共済組合法第69条)。実際の金額は、所属する共済組合に問い合わせて確かめるのが確実です。
民間の健康保険の傷病手当金は休職中の傷病手当金はいくら?条件・計算式・期間を協会けんぽで確認で説明しています。公務員は共済組合の規定が根拠になる点だけ押さえてください。
休む前に押さえる分かれ道:復職・公務災害・退職
休職に入る前後で、次の分かれ道があります。
- 公務災害を申し出るか。 申し出ると決めたら、診断書とパワハラの記録を整理します。申し出と休職は同時に進められます。
- 休職期間が満了に近づいたとき。 自動的に免職になるわけではなく、分限の判断が別にあります(国家公務員法第78条、地方公務員法第28条第1項)。復職の見通しを、医師と人事担当で相談します。
- 復職しない選択。 辞職を考えるなら、承認の仕組みと退職手当を先に知っておくと判断しやすくなります。公務員がパワハラで退職するとき:辞職願の出し方と承認の流れに説明があります。
- 加害者への対応。 休職とは別に、加害者の処分は任命権者が判断します。基準は公務員のパワハラは懲戒処分になる?停職・減給・戒告の標準例と令和7年の件数で確かめられます。
休む・戻る・辞めるのどれを選ぶ場合も、診断書の期間、人事とのやりとりの日付、給与明細を残しておくと、後の手続きで役に立ちます。
よくある質問
Q. 病気休暇の間は、給与は減りますか?
国家公務員は、病気休暇の間も給与は減らされません(給与法第15条は、休暇による場合は勤務しない時間の給与を減額しない定めです)。公務上・通勤によるものを除く病気休暇は連続90日が上限で、その上限の例外などで90日(人事院規則で定める場合は1年)を超えて引き続くときに限り、その後の日の俸給が半額になります(給与法附則6項)。診断書を求められる時期など細かい扱いは、各府省の人事担当に確かめてください。地方公務員は各自治体の条例で決まります。
Q. 休職期間が終わったら、自動的にクビになりますか?
国家公務員法も地方公務員法も、心身の故障で職務に支障があるときの降任・免職は、休職とは別の分限の判断として定めています(国家公務員法第78条、地方公務員法第28条第1項)。休職期間が満了すると自動的に免職になる、という書き方ではありません。期間満了前に、人事担当へ復職の見通しと手続きを確認してください。
Q. パワハラが原因なら、休職中の給与は全額もらえますか?
公務上の負傷・疾病による休職は、給与の全額が支給されます(給与法第23条第1項)。パワハラによる精神疾患が公務災害と認定されれば、この扱いになりえます。認定される前や、認定されない場合は、私傷病の休職として、満1年までは給与の8割までを支給できる定めです(同条第3項)。認定を申し出るかは公務災害の記事で確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 一般職の職員の給与に関する法律 第23条・附則(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員法 第75条・第78条〜第80条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事院規則11-4(職員の身分保障)第5条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公務員法 第27条・第28条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員共済組合法 第66条・第69条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公務員等共済組合法 第68条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。