公務員がパワハラで退職するとき:辞職願の出し方と承認の流れ
この記事のもくじ
公務員が辞めるときの手続きは、民間の退職とは仕組みが違います。国家公務員は、書面で辞職を申し出て、任命権者が承認すると退職になります。 人事院規則は「特に支障のない限り、承認するものとする」と定めていて、民間の2週間ルールのような日数の決まりはありません。パワハラで辞めたい人は、辞職願の出し方、承認までの調整、辞めた後の退職手当と失業給付の違いを先に知っておくと、準備を進めやすくなります。パワハラへの対応を含めた全体像は公務員のパワハラ相談先と対処:人事院・人事委員会など民間と違う窓口にあります。
公務員の辞職は「申出」と「承認」で成り立つ
人事院規則8-12の第51条は、任命権者が、職員から書面で辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとすると定めています。休職、退職、免職は、任命権者が国家公務員法と人事院規則に従って行います(国家公務員法第61条)。
民間の会社員の場合は、退職の意思表示から2週間で雇用契約が終わる、という考え方が基本です。国家公務員の辞職は、これとは違い、任命権者の承認(行政処分)によって効力が生じます。地方公務員は条文の置き方が異なるため、後の章で分けて説明します。このため、次のことが言えます。
- 辞職願を出した日と、実際に退職になる日は、一致しないことがある。
- 承認するかどうかは任命権者が判断する。規則は「特に支障のない限り」承認するとしているが、引き継ぎや人員の事情が調整の対象になりうる。
- 承認までの日数に定めがないので、希望日を人事担当と先に相談するのが現実的。
地方公務員は、地方公務員法に辞職の明文の規定がなく、各自治体の規則などで決まります。一般には、辞職願を出して任命権者が承認する形が取られますが、様式や提出先は自治体ごとに違います。自分の自治体の「職員の任用に関する規則」などの例規を、自治体のサイトで検索して確かめてください。公立学校の教員は、任命権者が都道府県の教育委員会(指定都市は市の教育委員会)になります。辞職願を校長経由で出すのか教育委員会に直接出すのかは、教育委員会の規程で確かめてください。
辞職願を出すまでの手順
| 順 | すること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 辞めたい日と理由を整理する | 理由に「パワハラ」と書くかは自分で決める。書くなら事実を日付つきで |
| 2 | 休職・異動・休暇の選択肢を確かめる | 辞職は退職手当や共済の扱いに影響するので、比べてから決める |
| 3 | 人事担当に、辞職の様式と提出先、承認までの目安を聞く | 上司がパワハラの相手のときは、人事担当に直接 |
| 4 | 辞職願を書面で出す | 控えを取り、提出日・渡した相手を記録する |
| 5 | 承認の通知を受け取り、退職日を確定する | 退職日までの有給休暇・病気休暇の残りを確かめる |
| 6 | 貸与品の返却、共済組合・年金などの手続き | 退職後の保険は退職手続きのチェックリスト:会社から受け取る書類と役所の手続きの考え方が参考になる |
辞職願に理由を書く欄があるときは、「一身上の都合」とだけ書く方法と、パワハラの事実を書く方法があります。書くかどうかは、後で公務災害の申し出や損害賠償を考える可能性があるかで変わります。先に記録を残してから決めてください。記録の書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきにあります。
文例(人事担当への最初の連絡)です。
文例:「辞職を考えています。◯月◯日付での退職を希望しています。辞職願の様式と提出先、承認までに必要な手続きの目安を教えてください。上司を通さず、人事の方と直接やりとりしたいです。」
辞職を強要されたときは、審査請求という道がある
「辞めるなら今のうちだ」「辞職願を出さなければ処分する」などと言われて、不本意に辞職願を出した場合は、辞職の承認自体を争う道があります。人事院は、不利益処分の審査請求の対象に、辞職を強要された場合の辞職承認処分も含まれると案内しています。
国家公務員の審査請求の期限は短く、処分説明書を受領した日の翌日から3か月以内で、処分の日の翌日から1年を過ぎるとできません(国家公務員法第90条の2)。地方公務員は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内で、処分の日の翌日から1年が上限です(地方公務員法第49条の3)。国と地方で起算の言い回しが違うので、混ぜないでください。審査請求は、国家公務員は人事院、地方公務員は人事委員会・公平委員会に行います。
強要の事実を後で説明できるよう、言われた日時、言った人、場所、メールやメモを残しておきます。辞職の話が出た段階で、弁護士や相談窓口に相談しておくのが有効です。
辞めた後のお金:退職手当と雇用保険は別の制度
民間の会社員なら、辞めた後は雇用保険の基本手当(失業給付)を考えます。公務員は事情が異なります。
- 雇用保険は原則として対象外。 雇用保険法第6条は、国・都道府県・市町村等の事業に雇用される人のうち、離職時に他の法令・条例などで支給される諸給与が求職者給付などの内容を超えると認められる人で、省令で定めるものを適用から除いています。
- 退職手当がある。 国家公務員は、退職手当法に基づく退職手当が支給されます。勤続12か月以上(特定退職者は6か月以上)で退職し、受け取った退職手当の額が雇用保険の基本手当に相当する額に満たないときは、その差額が「失業者の退職手当」として支給されます(同法第10条)。
- 地方公務員は条例。 退職手当と、失業者の退職手当にあたる制度の有無・要件は、各自治体の退職手当条例で決まります。
「公務員は失業保険が出ない」とだけ覚えず、「雇用保険の代わりに退職手当の制度がある」と理解して、辞職の前に人事担当へ金額の見込みを聞いておくと安心です。パワハラで辞めた民間の会社員の失業保険はパワハラで退職したときの失業保険:特定受給資格者になる場合と確かめ方で扱っていますが、公務員はこの仕組みと別です。
病気で働けない場合は、辞職の前に公務員がパワハラで休職するとき:病気休暇と休職の違い・給与・傷病手当金の共済組合の傷病手当金を確かめてください。退職後も一定の条件で受け取れる場合があります。
辞職の連絡がつらいとき:退職代行という選択肢
上司や職場に連絡すること自体が負担になる人もいます。辞職の承認は任命権者が行うので、代行する人が承認を得ることはできません。退職代行には運営形態による違いがあり、法律事務を扱えるのは弁護士だけです。公務員の辞職に対応しているかは、事業者ごとに確かめる必要があります。
選ぶ場合は、次の点を申し込む前に公式の案内で確かめてください。
- 運営が弁護士か(法律事務を扱えるのは弁護士です)。
- 公務員の辞職に対応しているか。
- 辞職願の作成や、任命権者への連絡をどこまで受けるか。
- 料金に含まれる範囲と、追加費用の条件。
公務員が退職代行を使えるかは、辞職の承認の仕組みと合わせて公務員は退職代行を使える?辞職の承認と弁護士運営が必要な理由で詳しく説明します。人に頼まず自分で伝える方法をまだ考えていない人は、パワハラ上司に退職を言うのが怖いとき:会わずに伝える選択肢も参考にしてください。
自衛官の退職は、さらに別の規定があります。自衛隊法第40条は、任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、限られた期間、退職を承認しないことができると定めています。詳しくは自衛隊のパワハラ相談先:防衛省のハラスメント窓口と外部の手段をご覧ください。
辞めるか迷う段階の整理は、会社を辞めたいのは甘え?迷うときに確かめたい5つの視点に書いています。
よくある質問
Q. 辞職願を出せば、2週間で辞められますか?
民間の「退職の意思表示から2週間で雇用が終わる」という考え方(民法第627条)は、公務員の辞職の説明にはそのまま使えません。国家公務員の辞職は、書面で申し出て任命権者が承認することで退職になります。人事院規則は、特に支障のない限り承認するものと定めていますが、承認までの日数の定めはありません。提出前に人事担当へ希望日を伝えて調整してください。
Q. 公務員は失業保険(基本手当)をもらえませんか?
雇用保険法は、国や自治体に雇用される人のうち、離職時に他の法令などで支給される諸給与が求職者給付の内容を超えると認められる人で省令で定めるものを、適用から除いています。原則として雇用保険の対象外と考えてください。代わりに退職手当があり、国家公務員は一定の要件で、足りない分が「失業者の退職手当」として支給される制度があります。地方公務員は条例で確かめてください。
Q. 公務員も退職代行を使えますか?
辞職を承認するのは任命権者なので、代行する人が承認を得ることはできません。使うなら、辞職願の作成や任命権者とのやりとりを弁護士に任せる形になります。弁護士運営でも公務員の辞職に対応しているとは限らないため、申し込み前に公式の案内で確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 人事院規則8-12(職員の任免)第51条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員法 第61条・第89条〜第92条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不利益処分についての審査請求(人事院)
- 雇用保険法 第6条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国家公務員退職手当法 第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 自衛隊法 第40条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。