労災 / Q&A

パワハラで労災申請するメリット・デメリット:会社との関係も含めて

この記事のもくじ
  1. パワハラで労災申請するデメリットとメリットの早見表
  2. Q. 労災申請のメリットは、傷病手当金と比べて何が違いますか?
  3. Q. 労災申請は会社にバレますか?
  4. Q. 会社との関係が悪くなりませんか? 伝え方は?
  5. Q. 時間や負担はどのくらい? 認められないこともありますか?

パワハラで労災申請するメリットは、労災と認められると、治療費と休業中の収入が労災保険から出ること(休業は4日目から給付基礎日額の6割に特別支給金2割)です。業務上の病気で療養のために休む間とその後30日間は解雇が制限される効果もありますが(労働基準法第19条)、これは業務上と認められた場合の話で、申請しただけで生じるものではありません。デメリットとして考えておくのは、会社に申請が伝わること、出来事を書面や聴取で説明する負担、結論が出るまで時間がかかること、認められない場合があることです。会社に知られずに労災申請を進める仕組みはないので、伝わる前提で準備を整えるのが現実的です。

パワハラで労災申請するデメリットとメリットの早見表

早見表:労災申請で得られるものと、考えておくこと
得られるもの(メリット) 考えておくこと(デメリット)
認められれば、治療は療養補償給付として受けられる(労災保険法第13条) 請求書の事業主証明欄などを通じて、会社に申請が伝わる
認められれば、休業補償給付60%+休業特別支給金20%(4日目から) 申立てや聴取で、つらい出来事を思い出して説明する
業務上と認められた場合、療養のための休業中とその後30日は解雇が制限される(申請しただけでは当てはまらない) 決定までの期間が読みにくく、その間は生活費の段取りが要る
退職しても給付を受ける権利は変わらない(第12条の5) 認められないこともある(令和7年度の認定率28.2%)
認定の過程で集めた事実が、その後の話し合いの材料に使えることがある 会社や上司との関係に気まずさが生じることがある

Q. 労災申請のメリットは、傷病手当金と比べて何が違いますか?

休職中のお金を考えると、比べる相手は健康保険の傷病手当金です。傷病手当金は業務外の病気が対象、労災保険は業務上の病気が対象で、同じ休業に両方を重ねて受けることはできません。

労災保険(休業補償給付) 健康保険(傷病手当金)
対象 業務上の病気・けが 業務外の病気・けが
休業中の額 給付基礎日額の60%+特別支給金20%(4日目から) 標準報酬月額をもとにした日額の3分の2(4日目から)
期間 療養のため働けない間。療養開始から1年6か月で傷病補償年金に当たるかを見る 支給開始から通算1年6か月
治療費 療養補償給付で治療を受ける 健康保険の自己負担がある
退職後 権利は退職で変わらない 継続給付の要件を満たした場合

休業の給付の数字は、最初の3日が待期で、その分は業務災害なら会社が平均賃金の60%を補償する仕組みです。給付基礎日額の出し方と計算の例はパワハラ労災の休業補償給付で示しています。どちらで休むかの考え方と切り替えはパワハラの休職は傷病手当金と労災のどちら?で扱っています。

解雇の制限には例外もあります。療養開始から3年たっても治らず、会社が平均賃金の1,200日分の打切補償を払った場合などです(労働基準法第81条・第19条)。私傷病の休職期間満了による退職は、この制限とは別の話です。詳しくは休職中に解雇される?を見てください。

Q. 労災申請は会社にバレますか?

伝わります。休業補償給付の請求書には、発病の年月日や平均賃金、休業の期間などについて事業主の証明を受ける欄があります(労災保険法施行規則第13条第2項)。会社は、証明を求められたら速やかに証明しなければなりません(同規則第23条)。監督署の調査では関係者からの聴取も行われるので、会社が申請を知らないまま進むことは考えにくいといえます。

会社が証明を拒んだり、すでに退職していたりしても、請求そのものはできます(厚生労働省のパンフレットに明記)。証明を頼む手順と、断られたときの進め方は会社の対応が悪いとき:事業主の証明なしで出せるかに、退職してから申請する場合は退職後でもパワハラの労災申請はできる?にまとめています。

会社が労災に消極的になる理由の一つに、保険料の仕組みがあります。一定の規模などの要件を満たす事業では、業務災害の保険給付の額に応じて労災保険率が上下します(労働保険徴収法第12条第3項、いわゆるメリット制)。会社側の事情を知っておくと、「健康保険で」と言われたときに、理由を落ち着いて聞き返せます。

Q. 会社との関係が悪くなりませんか? 伝え方は?

関係がまったく変わらないとは言い切れません。ただ、請求は本人の権利で、給付を受けるかどうかを会社が決めるわけではありません。関係のこじれを小さくするには、伝える相手を人事の担当者1人に絞り、やりとりをメールなど記録に残る形にするのが一つの方法です。

文例(人事へのメール):「人事部 〇〇様 業務が原因と考えている体調不良について、労働基準監督署に労災の請求をすることにしました。請求書の事業主証明欄へのご記入をお願いします。記入が難しい項目がある場合は、その項目と理由をメールでお知らせください。」

パワハラの相談をしたことを理由とする不利益な取扱いは、労働施策総合推進法第31条で禁じられています。申請の後に配置や評価で気になることが起きたら、日付と内容を記録して、労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

Q. 時間や負担はどのくらい? 認められないこともありますか?

精神障害の請求では、発病前おおむね6か月の出来事を時系列で説明し、主治医の意見も求められます。出来事を思い出す作業は体調に響くことがあるので、家族に日付の整理を手伝ってもらう、社会保険労務士に書類作成を頼む(精神障害の労災申請は社労士・弁護士に頼むか)といった分け方を考えてください。つらさが強いときは、手続きより先に仕事がつらい・限界のときの相談先を使ってください。決定までの進み具合は、所轄の労働基準監督署に照会できます。

厚生労働省の「令和7年度 過労死等の労災補償状況」では、精神障害の決定件数3,839件のうち支給決定は1,082件で、認定率は28.2%でした。不支給だった場合は、決定を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます(労災が不支給になったら)。また、休業補償給付の請求権は休んだ日ごとに2年で時効になるので(労災保険法第42条)、迷っている間に古い日の分から請求できなくなっていきます。政令で定める疾病は2027年4月1日から5年に延びる予定です(改正の中身はパワハラの労災申請の流れ:請求書の提出から調査・決定まで)が、いま迷っている人は現行の2年を前提にしてください。

申請を決める前に、次の点を確かめておくと動きやすくなります。

  • 発病前おおむね6か月の出来事を、日付・相手・内容で書き出せるか
  • 診断書と通院の記録がそろっているか
  • 会社に相談した日と、その後の対応を記録しているか
  • 傷病手当金を受けている場合、切り替えの手続きを把握しているか
  • 会社とのやりとりの窓口を誰にするか決めたか

認定後に慰謝料を考える場合の関係はパワハラ労災が認められた後の慰謝料:労災給付と損害賠償の関係にあります。公務員は労災保険ではなく公務災害の制度になるので、公務員のパワハラ労災は公務災害:地方・国家公務員の申請先を読んでください。

よくある質問

Q. 会社から「労災ではなく健康保険で休んでほしい」と言われました。

労災保険の給付は本人の請求に基づいて行われ、業務上かどうかは労働基準監督署長が調査して判断します。会社の意向で決まるものではありません。健康保険の傷病手当金は業務外の病気が対象なので、業務が原因と考えるなら、請求するかどうかを自分で決めて、監督署に相談してください。

Q. 労災を申請したら、パワハラの加害者にも伝わりますか?

監督署の調査では、本人の申立てや主治医の意見のほか、関係者からの聴取も行われます。加害者とされる人や同僚に話が聞かれることはありうると考えておいてください。会社内でどこまで共有されるかは会社の対応によるので、気になる点は人事に書面で尋ねておくと記録が残ります。

Q. 労災を申請したら解雇されませんか?

業務上の病気の療養のために休む期間とその後30日間は、労働基準法第19条で解雇が制限されています。ただし、これは業務上と判断された療養が前提です。申請中や私傷病として休職している間の扱いは別に考える必要があるので、解雇や退職を求められたときは、労働局や弁護士に早めに相談してください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

パワハラの休職は傷病手当金と労災のどちら?違いと切り替え

パワハラの労災申請の流れ:請求書の提出から調査・決定まで

パワハラ労災申請で会社の対応が悪いとき:事業主の証明なしで出せるか

公務員のパワハラ労災は公務災害:地方・国家公務員の申請先