労災 / 比較

精神障害の労災申請は社労士・弁護士に頼むか:自分で出す場合との違い

この記事のもくじ
  1. 自分で出す・社労士に頼む・弁護士に頼むの違い(早見表)
  2. 社労士ができること・できないこと
  3. 弁護士に頼むのは、どんな場面か
  4. 費用の確かめ方:見積で項目を分けて聞く
  5. 依頼先の確かめ方と、相談前に用意するもの

精神障害の労災申請は、社労士や弁護士に頼まなくても本人が自分で出せます。労災保険の給付は請求に基づいて行われるため(労災保険法12条の8)、請求書を書いて労働基準監督署(以下、労基署)に出す手続き自体は、本人ができるものです。そのうえで、書類づくりや手続きの段取りを専門家に任せたいときの選択肢が、社会保険労務士(社労士)と弁護士です。この記事では、できることの違い、費用の確かめ方、依頼先の確かめ方、相談前の準備を比べます。

自分で出す・社労士に頼む・弁護士に頼むの違い(早見表)

先に、3つの選び方を表で比べます。法律上の業務の範囲は、社会保険労務士法と弁護士法の条文に基づいて整理しています。

比較表:労災申請を誰が進めるか
項目 自分で出す 社労士に頼む 弁護士に頼む
請求書・申立書の作成 自分で書く 作成を任せられる(社労士法2条1項1号) 依頼できる(弁護士法3条の一般の法律事務)
労基署への提出 自分で出す 提出手続の代行ができる(同2条1項1号の2) 依頼できる
調査や審査請求での主張・陳述 自分で話す 申請や審査請求、調査に関する主張・陳述の代理ができる(同2条1項1号の3) 審査請求などの不服申立ても職務に含まれる(弁護士法3条)
会社への損害賠償の請求・交渉・訴訟 自分で行う 社労士の業務に含まれない 弁護士の職務の範囲
費用 請求書の費用はかからない(コピー代・交通費などの実費) 事務所ごとに決める。見積で確かめる 事務所ごとに決める。見積で確かめる
向く場面 書類が少なく、会社との関係が単純 書類づくりと手続きの段取りを任せたい 労災と損害賠償を同時に考えたい、会社と争いがある

表の「向く場面」は目安で、どれが良いかを順位づけするものではありません。たとえば、退職後に会社と連絡を取りたくない人は社労士に頼んでも、弁護士に頼んでも、自分で進めてもよく、費用と負担の大きさで選びます。

社労士の業務のうち、労災保険法に基づく請求書の作成は、社会保険労務士法の別表第一に労働者災害補償保険法が載っていることから、社労士の業務の範囲に入ります。社労士法27条は、申請書の作成や提出代行などの業務を、報酬を得て他人の求めに応じて業として行うことを、社労士・社労士法人以外には認めていません。一方、弁護士は弁護士法3条の定めにより、行政庁に対する審査請求などの不服申立事件を含む一般の法律事務を職務としていて、社労士とは別の根拠で扱えます。

社労士ができること・できないこと

社労士ができることは、労働と社会保険の法令に基づく書類の作成、提出の代行、申請や審査請求に関する代理です。労災でいえば、請求書や申立書の整理、会社への証明の依頼の段取り、提出、決定後の不服の申立ての準備などの場面が考えられます。申立書の項目は精神障害の労災の申立書の書き方で説明していて、それを元に事実を整理する相談に乗ってもらう使い方もあります。

社労士が単独でできないことも、条文から分かります。

  • 会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求する、交渉する、訴えること(社労士の業務を定めた2条に含まれていません)
  • 裁判所で単独の代理人になること(裁判所では、弁護士である代理人とともに出頭して陳述する補佐人の立場とされています)
  • 会社との示談交渉

労働局のあっせんや調停の手続では、試験に合格して付記を受けた特定社労士が、紛争の当事者の代理をできます。ただし、これは手続の中での代理であり、その外で会社と示談交渉をする業務ではありません。労働局の仕組みは労働局の助言・指導と調停で整理しています。

弁護士に頼むのは、どんな場面か

弁護士に頼む場面は、労災の請求に加えて、会社や加害者への損害賠償、地位の確認、退職をめぐる争いなどの法的な手続きを視野に入れる場合です。労災給付と損害賠償の関係はパワハラ労災が認められた後の慰謝料で説明しています。

弁護士に頼んで何ができるかは、依頼の範囲を決める契約で決まります。労災の請求書の作成から頼むのか、損害賠償の交渉だけを頼むのか、審査請求も含むのかを、最初に決めます。時効の期限が近いときは、請求できる期限を最初の相談で確かめるのが基本です。退職後の請求なら退職後でもパワハラの労災申請はできる?時効と準備すること、不支給のあとの審査請求を頼むかどうかなら労災が不支給になったら:審査請求の期限と手続きの流れで、期限の数え方を先に押さえておけます。期限の整理はパワハラの時効は何年?にあります。

弁護士に相談するときの選び方はパワハラを弁護士に相談するときの選び方、持っていく資料はパワハラを弁護士に相談する前の準備で説明しています。

費用の確かめ方:見積で項目を分けて聞く

社労士や弁護士の費用は、事務所ごとに決められます。公的な統計や相場表がないため、この記事では金額を示しません。依頼する前に、見積書か料金表をもらって、次の項目を分けて聞いてください。

  1. 相談料:初回の相談は無料か、有料か。時間はどこまでか
  2. 着手金や基本料:依頼したときに払う費用。どの作業までが含まれるか
  3. 報酬金や成功報酬:何を基準に払うのか。労災が認められたときの給付額に連動するのか
  4. 追加費用:審査請求や、会社との交渉など、範囲が広がったときの料金
  5. 実費:郵送代、診断書の費用、交通費
  6. 解約:途中で依頼をやめたときの精算

不支給になった場合の費用や、成功報酬の払い方は、事務所によって扱いが違うことがあります。言葉だけでなく、書面で受け取ってください。弁護士費用の内訳はパワハラの弁護士費用の内訳で詳しく扱っています。

費用が心配なときは、法テラスの無料法律相談や、弁護士費用の立替え制度に条件が合うかを確かめる方法があります。収入や資産の要件があり、無料相談は同じ問題につき3回までです。入口は法テラスでパワハラを相談するにはにあります。

依頼先の確かめ方と、相談前に用意するもの

依頼する前に、相手が資格を持っているかを確かめます。他人の労災請求の書類を報酬を得て作ったり代行したりする業務は、社労士か弁護士に限られているため、資格のない「申請代行」を名乗る業者は社労士法に違反するおそれがあり、書類の不備やトラブルの原因にもなります。

  • 社労士:社会保険労務士名簿に登録を受けている必要があります(社労士法14条の2)。名刺の肩書だけでなく、登録している都道府県の社労士会や、全国社会保険労務士会連合会の案内で確かめます。
  • 弁護士:各地の弁護士会の法律相談センターは、弁護士会が運営しています。日本弁護士連合会の「ひまわりお悩み110番」は、近くの弁護士会の法律相談センターにつながります。個人の弁護士に頼むときは、所属の弁護士会を名刺や事務所のサイトで確かめ、不安があれば弁護士会に問い合わせます。

相談の前に、次のものを手元に集めておくと、時間を無駄にしません。

  • 診断書、通院歴の分かるもの、お薬手帳
  • 時系列表(パワハラの時系列表の作り方)と、記録のメモやメール
  • 雇用契約書、給与明細、出退勤の記録
  • 会社に相談した記録と、会社の返事
  • 申立書の下書き(あれば)
  • 聞きたいことのリスト(依頼する範囲、費用、期間、連絡の方法)

依頼先を決めたら、どこまで任せるかを文書にしてもらい、書類の写しを手元に残しておきます。請求書の出し方の全体はパワハラの労災申請の流れで確認できます。

よくある質問

Q. 専門家に頼むと、労災が認められやすくなりますか?

労災に当たるかは、労基署が事実を調べて認定基準に当てはめて決めます。専門家に頼んだかどうかが、決定の条件になるという定めはありません。頼むことで変わるのは、書類づくりの負担、書き方の整理、提出や手続きの段取りです。

Q. 会社の顧問の社労士に頼めますか?

顧問の社労士は、会社から依頼を受けて動いている場合があります。パワハラの相手や会社との関係が絡む請求では、本人の側に立って動いてもらえるのかを、依頼する前に確かめてください。心配なときは、会社と関係のない社労士や弁護士に別に相談する方法があります。

Q. 費用が出せないときはどうすればいいですか?

労災の請求書は、本人が自分で出すことができます。労基署や労働局の窓口で書類の書き方を聞けます。弁護士に相談する費用が心配なときは、法テラスの無料法律相談や費用の立替え制度に条件が合うかを確かめる方法があります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

精神障害の労災の申立書の書き方:出来事・時期・相手を整理する

パワハラの労災申請の流れ:請求書の提出から調査・決定まで

パワハラの弁護士費用の内訳:相談料・着手金・報酬金の確かめ方

パワハラ労災が認められた後の慰謝料:労災給付と損害賠償の関係