パワハラ退職の仕返しが怖いとき:退職を伝えた後の嫌がらせへの備え
退職を伝えたあとの嫌がらせが怖いときは、退職日まで何が起きても、出来事を日付つきで記録し、出勤・有給・欠勤の扱いを書面で確かめながら進めるのが基本の備えです。パワハラのあった職場で退職を切り出すと、無視や仕事外し、強い言葉が増えることがあります。この記事では、退職を伝えたあとに起きやすい嫌がらせの型ごとの備え、残りの期間の過ごし方、記録の項目、退職後に続く場合の相談先を整理します。
退職を伝えたあとに起きやすい嫌がらせと、まずやること
嫌がらせの形は、職場によって違います。型ごとに、その場でやることを分けておくと慌てずに済みます。
| 起きること | その場の対応 | 残す記録 | 次の窓口 |
|---|---|---|---|
| 無視・挨拶をされない・会議に呼ばれない | 反応せず、業務の連絡はメールで送る | 呼ばれなかった会議の日付、無視された場面 | 総合労働相談コーナー |
| 仕事を外される・過大な引き継ぎを求められる | 指示はメールで文字にしてもらう | 外された業務と日付、引き継ぎの量と期限 | 労働局の窓口(労働局のハラスメント相談窓口) |
| 強い言葉・長時間の面談・脅し | 面談は短く切り上げ、同席者を頼む | 言葉と時刻、場所、同席者 | 脅しや暴力は警察(職場で暴力・脅しを受けたら) |
| 給料・有給・書類のやり取りを渋られる | 申請を書面で出し、返事の期限を書く | 申請日、返答、給与明細 | 労働基準監督署 |
| 「出社しなくていい」と自宅待機を命じられる | 指示を書面かメールで求める | 指示の日時と内容 | 総合労働相談コーナー |
仕返しを恐れて何も言えなくなるより、退職日を決めたあとは「残りの期間をどう守るか」に気持ちを切り替えるほうが、実際の被害を小さくしやすくなります。
退職日までの過ごし方:出勤・有給・欠勤の整理
退職を伝えてから退職日までは、雇用が続きます。民法第627条1項により、期間の定めのない雇用は申入れから2週間で終了しますが、この間も労働契約は有効で、賃金の支払いも続きます。
出勤できるうちは出勤する
出勤は、嫌がらせへの一番の備えにもなります。理由は2つあります。
- 会社が欠勤を口実にしにくい:出勤の記録があれば、「無断欠勤だった」という主張が成り立ちにくくなります。
- 目の前で起きたことを記録できる:その日のうちに、メモに事実だけを残せます。
出勤がつらいときは、有給休暇を使う
年次有給休暇が残っているなら、出勤しない日を有給にするのが負担の少ない方法です。労働基準法第39条により、年休は労働者が請求した時季に与えるのが原則で、会社にできるのは請求された時季の変更までです。退職日までに日数が足りず変更先がない場合の考え方と申請の文例は、退職時の有給消化:拒否されたときの考え方と伝え方の例文にまとめています。
文例:「退職日の〇月〇日までの出勤日のうち、〇月〇日から〇月〇日まで、残っている年次有給休暇を請求します。残日数と取得の扱いについて、書面かメールでご回答ください。」
有給が足りないとき:診断書と連絡
残りの日数が足りない場合は、体調不良なら医療機関を受診して診断書を取り、休む理由と期間を書いたメールを人事・総務に送ります。無断で休まず、連絡の記録を残すことがポイントです。心身の不調でそのまま休職に入る場合は、パワハラ休職中に退職する手順で伝え方と書類の流れを確かめられます。
会社が出社を止めて自宅待機を命じた場合は、賃金の扱いが変わります。民法第536条2項は、会社の責めに帰すべき事由で働けなくなったときは、会社が賃金の支払いを拒めないと定めています。労働基準法第26条も、会社の責めに帰すべき事由による休業には、平均賃金の6割以上の休業手当を求めています。指示の日時と文面を保存し、給与明細で支払われたかを確かめます。
仕返しの嫌がらせを記録する項目
嫌がらせは、「退職を伝えたあとから」変わったことが分かると、説明が通りやすくなります。退職を伝えた日を基準日にして、その前後で何が変わったかを並べる形で記録します。
- 基準日:退職の意思を伝えた日、書面を出した日
- 変化の内容:外された業務、呼ばれなくなった会議、態度や言葉の変化
- 日時・場所・相手:いつ、どこで、誰が
- 指示のあった事実:言われた内容、メールやチャットの文面
- 体調の変化:眠れない、食欲が落ちるなどと、受診した日
一つひとつの書き方は、パワハラの記録の書き方に記入例があります。会社の端末やクラウドに記録を置くと、退職日以降に見られなくなるおそれがあるため、メモやコピーは自分の持ち物に残してください。
文例(メール):「〇月〇日付でお渡しした退職届に基づき、退職日は〇月〇日です。本日付で、私が担当していた〇〇の業務が他の方に移されたと伺いました。今後の担当範囲について、書面で確認させてください。」
感情的な反論は返さず、事実の確認だけを書面に残すのが、後から使いやすい記録になります。
相談先:状況によって窓口を分ける
状況に合わせて、相談先を選びます。
| 状況 | 相談先 | できること |
|---|---|---|
| パワハラの相談を会社にしたことを理由に不利益に扱われた | 労働局の雇用環境・均等部(室) | 労働施策総合推進法第31条2項は、相談したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いを禁じている。援助の申出ができる |
| 退職をめぐる嫌がらせ・いじめ全般 | 総合労働相談コーナー | 助言・指導、あっせんの案内。厚生労働省の案内で、いずれも無料 |
| 給料・有給・書類の扱いなど労働基準法の問題 | 労働基準監督署 | 違反の疑いの申告。申告を理由とする不利益取扱いは禁止(労基法第104条2項) |
| 退職後の悪評や、損害賠償を口にされた | 弁護士、法テラス | 事案ごとの法的な判断と代理 |
退職後に嫌がらせが続く場合の考え方は、パワハラで退職した後に訴えることはできる?とパワハラで退職した後に証拠を集めるで扱っています。相談窓口の番号と受付時間は、パワハラの相談窓口一覧に載せています。
会社と顔を合わせたくない、連絡のやり取り自体が負担なときは、退職代行という選択肢もあります。
退職の意思を会社に届ける手順は、前の記事の会社が退職させてくれないとき:退職の意思を書面で届ける手順にあります。嫌がらせが続いても、退職日・届けた書面・出来事の記録の三つがそろっていれば、相談先に説明できる材料になります。
よくある質問
Q. 退職を伝えたら、急に仕事を与えられなくなりました。出社して座っているだけでよいのですか?
仕事を与えられない状態そのものが、嫌がらせとして問題になる場合があります。いつから、誰の指示で、どんな仕事が外されたかを日付つきで記録し、退職日まで通常どおり出勤して賃金を受け取ります。会社の指示で働けないのであれば、民法第536条2項や労働基準法第26条が関わるため、欠勤扱いにされたときは労働局の窓口に給与明細を持って相談してください。
Q. 退職後に、前の会社が転職先に悪い評判を伝えていないか心配です。
転職先に連絡が入ったことが分かる記録(誰から聞いたか、いつ、どんな内容か)を日付つきで残してください。言われた内容によって、どの制度で扱うかが変わるため、記録を持って弁護士や労働局の総合労働相談コーナーに確かめます。自分で相手に抗議の連絡をする前に、相談先の意見を聞いてください。
Q. 退職日まで出社するのが怖く、休みたいのですが、欠勤にすると不利になりますか?
年次有給休暇が残っていれば、退職日までの出勤しない日を有給休暇に充てる方法があります。残りが足りない場合は、医師の診断書で休む期間を示せることもあります。欠勤にする前に、休む旨と理由をメールなど記録の残る形で上司や人事に伝えてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第536条・第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第26条・第39条・第104条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別労働紛争解決制度(助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。