退職届を郵送で出す方法:受け取ってもらえないときの内容証明
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退職届は、郵送で出しても、会社に届けば退職の申入れとして効力を持ちます。意思表示は相手に届いた時に効力を生じ(民法第97条1項)、相手が正当な理由なく受け取りを妨げたときは、通常届くはずだった時に届いたものとみなされます(同条2項)。郵送で大切なのは、「いつ届いたか」を後から示せる送り方を選ぶことです。この記事では、郵便の種類の選び方、送る手順、受け取ってもらえないときの内容証明の使い方、届いた日から2週間の数え方を順に示します。
退職届を郵送するなら、記録の残る送り方を選ぶ
退職届は、手渡しでなければ受け付けないという決まりは法律にありません。高知県労働委員会の労働相談Q&Aは、辞職の申入れは使用者の承諾の有無にかかわらず退職できるとし、辞職の意思表示は使用者に届いた時点で撤回できなくなると説明しています。郵送でも「届いた」ことが軸になるので、送り方の違いは「何が記録に残るか」の違いだと考えてください。
日本郵便の案内(2026年10月23日に確認)をもとに、退職届で使う主な送り方を並べます。料金は、基本の郵便料金に加わる額です。
| 送り方 | 加算料金 | 記録・証明されること | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 特定記録 | 210円 | 差し出したこと(引受け)。郵便受けに配達され、受け取りの記録はない | 会社が受け取りを拒むおそれは小さいが、送った記録はほしい |
| 簡易書留 | 350円 | 引受けと配達 | 届いた日を残したい、費用は抑えたい |
| 一般書留+配達証明 | 480円+350円 | 引受けから配達までの記録と、配達した事実の証明 | 届いた日をはがきの形で手元に残したい |
| 一般書留+内容証明(+配達証明) | 480円+480円(2枚目以降は1枚290円)(+350円) | 誰が誰あてに、どんな文書を、いつ出したか | 受け取りを拒まれた、「そんな届は見ていない」と言われそう |
郵便法でも、書留は引受けから配達までを記録する取扱い(第45条)、配達証明は配達した事実を証明する取扱い(第47条)、内容証明は文書の内容を証明する取扱い(第48条)とされ、配達証明と内容証明は書留にする郵便物に付けるもの(第44条3項)です。内容証明は簡易書留では出せず、一般書留にする必要があります。配達証明は差し出した後からも請求でき、その場合は差し出してから1年以内に受領証を見せ、料金は480円になります。
迷ったら、まず簡易書留か配達証明つきの一般書留を選び、会社の対応が強硬なときだけ内容証明に進む、という順番で十分です。
郵送の手順:書く・写しを取る・窓口で出す・追跡する
- 退職届を書く:退職日、日付、所属、氏名、宛名を入れる。書き方と文例はパワハラで辞めるときの退職届の書き方で確かめる
- コピーを取る:自分の控えにする。署名した後のものをコピーする
- 送り状を用意する:退職届だけを入れるより、一枚添えると用件が伝わりやすい
- 封筒を書く:表に会社の所在地、会社名、宛名。裏に自分の住所と氏名。表の左下に赤字で「退職届在中」と書いておくと、開封前に用件が分かる
- 郵便局の窓口で出す:特定記録や書留はポストに入れず、窓口で差出票を書いて出す
- 受領証を保管する:引受番号で配達の状況を追える
- 配達されたら記録を残す:追跡画面の「お届け済み」を撮影し、日付を控える
送り状の例:「人事部 ご担当者様 ○年○月○日 営業部 氏名 退職届を同封いたします。○年○月○日付で退職いたしますので、お手続きをお願いいたします。 離職票、源泉徴収票など退職時の書類は、下記の住所あてに郵送でお送りください。貸与品の返却方法もあわせてご指示ください。 住所:○○ 電話:○○ メール:○○」
退職日を書くときは、配達にかかる日数を見込みます。差し出した日ではなく、会社に届いた日から2週間を考えるので、ぎりぎりの日付を書くと計算が合わなくなります。
受け取ってもらえないとき:受取拒否・「受理しない」への対応
郵送を選ぶ人の多くは、手渡しで受け取ってもらえなかった経験をしています。起こりやすい場面ごとに、取る手を整理します。
| 起きたこと | まずすること | 次の手 |
|---|---|---|
| 手渡ししようとしたら「受け取れない」と返された | その日時と相手、言われたことをメモする | 配達の記録が残る郵便で同じものを送る |
| 「退職は認めない」「受理しない」と言われた | 言われた内容を記録する | 書留か内容証明で送り、退職日を書面で示す |
| 書留が受取拒否で戻ってきた | 封筒を開けずに保管する | 戻った封筒と受領証を持って、労働局の窓口や弁護士に相談する |
| 不在のまま保管期間が過ぎて戻ってきた | 封筒を開けずに保管する | 宛先を人事部あてに変える、メールで「郵送した」と伝える |
| 届いたはずなのに「見ていない」と言われた | 追跡の記録・配達証明のはがきを示す | 内容証明で再度送る |
「受理しない」と言われても、辞職の申入れは会社の承諾を条件にしていないので、受理という手続きが退職の要件になるわけではありません。ただし、正当な理由なく受け取りを拒んだかどうか、通常いつ届くはずだったかは、事情によって判断が分かれます。戻ってきた封筒をどう扱うかを含め、具体的な扱いは、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に、記録を見せて確かめてください。どこへ相談するかはパワハラの相談窓口一覧で比べられます。
内容証明は、どんな文面を送ったかまで郵便局が証明するので、「何が書いてあったか分からない」という反論を封じたいときに使われます。用紙は自由ですが、謄本の字数と行数に決まりがあり、出せる郵便局も限られます。字数の決まりや、内容証明そのものの仕組みは、パワハラで内容証明を送る前にでまとめています。退職届を内容証明で送る場合、本文は退職の意思と退職日を短く書くだけでよく、受けた言動の説明や請求を書き込む必要はありません。
届いた日から2週間を数える:退職日の考え方
期間の定めのない雇用は、退職の申入れの日から2週間を経過することで終わります(民法第627条1項)。郵送の場合、数え始めは会社に届いた日です。期間の数え方の一般的な決まりでは、初日は数えず(民法第140条)、期間の末日が終わった時に満了します(第141条)。
筆者の計算で例を示します。
- 10月1日に退職届が会社に届いた場合、翌日の10月2日から数えて14日目は10月15日。この日が終わった時点で2週間がたつ
- 10月1日に郵便局から出し、10月2日に届いた場合は、10月3日から数えて10月16日が14日目になる
このずれが起きるので、退職届の退職日は、届く見込みの日から2週間より後の日付にしておくのが無難です。就業規則に「1か月前まで」などの定めがあるときの考え方、引継ぎとの兼ね合いは、会社を辞めたいといつ言う?2週間と就業規則の1か月前、言う日の決め方で扱います。
郵送しても会社から連絡がない、書類も届かないまま退職日が近づく、という場合は、手続きを人に任せる方法もあります。退職代行を選ぶなら、運営形態(弁護士・弁護士法人か労働組合か)と交渉できる範囲、料金に含まれるもの、返金の条件を先に確かめてください。
郵送の前に、メールで意思を伝えておきたい人は前の記事の退職をメールで伝えてもいい?上司・人事への退職メール例文を、会社が退職そのものを認めない態度をとっている人は会社が退職させてくれないときを読んでください。
よくある質問
Q. 退職届はポストに投函する普通郵便で送ってもいいですか?
送ることはできますが、普通郵便は差し出した記録も配達の記録も残りません。会社が「届いていない」と言ったときに示すものがないので、少なくとも引受けの記録が残る特定記録、届いた日まで残したいなら簡易書留か配達証明を付けた一般書留を選んでください。
Q. 退職届の郵送先は、上司の自宅でもいいですか?
上司の自宅あては避け、会社の所在地あてにします。宛名は会社名と代表者名、または人事部の担当者名にし、手続きを担う部署に届くようにしておくと、受け取った後の処理も進みやすくなります。
Q. 内容証明で退職届を出すと、会社との関係がこじれませんか?
受け取った側が身構えることはあります。ただ、受け取りを拒まれた、何度伝えても話を聞いてもらえない、という状況では、記録を残すことが先です。送り状に「手続きのご案内をお願いします」と添えるなど、事務的で落ち着いた文面にしておくと、受け取る側の印象も和らぎます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第97条・第140条・第141条・第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 郵便法 第44条・第45条・第47条・第48条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働相談Q&A「退職」(高知県労働委員会作成・令和7年3月、香川県ホームページ掲載)(香川県)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。