教員が退職代行を使うとき:年度途中の辞職と公立・私立の違い
この記事のもくじ
教員が辞めたいときの手続きは、公立か私立かで根拠が分かれます。公立学校の教員は地方公務員で、辞職は任命権者(教育委員会など)の承認で決まります。私立学校の教員は民間の労働者なので、民法と就業規則が軸になります。退職代行を使うかどうかは、この違いを押さえてから決めると、無駄な出費や遠回りを避けられます。
自分がどの区分かを先に確かめる
同じ「教員」でも、雇い主と退職の根拠は次のように違います。契約書、任用通知書、給与明細の発行元のどれかで区分を確かめられます。
| 区分 | 退職の根拠 | 退職を決める人 | 退職代行を使うときの考え方 |
|---|---|---|---|
| 公立(正規の教員) | 辞職の承認(自治体の規則) | 任命権者(県費負担教職員は都道府県教育委員会) | 承認する人が行政機関なので、弁護士運営か自分で出す方法が中心 |
| 公立(臨時的任用・期限付きなど) | 任用期間の定めと辞職の承認 | 任命権者 | 任用通知書の期間と終期を先に確かめる |
| 私立(無期雇用) | 民法627条1項、就業規則 | 本人の申入れで成立 | 民間・労働組合・弁護士のどれでも選べる |
| 私立(有期の常勤講師など) | 民法628条、契約書 | 本人と学校法人の合意、またはやむを得ない事由 | 契約期間と更新の経緯を持って相談する |
市町村立の小中学校の教員(県費負担教職員)は、勤務先は市町村の学校でも、任命するのは都道府県教育委員会です。地方教育行政法は、県費負担教職員の任命権を都道府県教育委員会に置き(第37条)、任免その他の進退は市町村教育委員会の内申を待って行うと定めています(第38条)。校長や市町村教育委員会に話しても、最終的な承認は県側になる、という流れを覚えておくと手続きが見通せます。政令指定都市の学校は市の教育委員会が任命権者になる扱いなので、どちらに当たるかは、任用通知書の発令者の名前か教育委員会の担当課で確かめます。
公立の教員:辞職の承認と年度途中の動き方
公立の教員は、民間のように「申入れから2週間で終わる」という民法の仕組み(退職は2週間で成立する?民法627条・628条と即日退職の考え方)を、そのまま当てはめられません。国家公務員は、人事院規則8-12第51条が「書面による辞職の申出があったとき、特に支障のない限り承認する」と定めています。地方公務員は、辞職の手続きを各自治体の規則で定めているのが通常で、同じように辞職願を出し、任命権者が承認して退職になる流れが一般的です。承認までの日数は、国の規則にも定めがありません。
年度途中に辞めたいときは、次の順で進めます。
- 自治体の「職員の任用に関する規則」や教育委員会の案内で、辞職願の様式、提出先、提出の時期を確かめる
- 校長(または教頭)に、辞めたい意思と希望する日を伝える。口頭が難しければ、メールで時間をもらう
- 辞職願を書面で出す。控えを取り、提出日が分かるようにしておく
- 任命権者の承認を待つ間の勤務、有給休暇、年度内の担当の扱いを校長と決める
校長に最初に伝えるときの文例です。
「体調と家庭の事情を考え、年度末を待たずに辞職したいと考えています。希望は〇月〇日です。辞職願の出し方と、児童生徒への伝え方についてご相談させてください。」
校長との話し合いが難しい場合や、承認の日付をめぐって折り合えない場合は、本人の代理人として条件を話せるのは弁護士です(公務員は退職代行を使える?辞職の承認と弁護士運営が必要な理由)。民間企業の退職代行は、意思を伝える使者の範囲を超えて任命権者と日付や条件を決めることができません(民間企業の退職代行でできること・できないこと:使者の範囲)。
なお、校長や同僚から受けた言動がつらさの原因なら、辞める前に相談できる窓口があります。教員の場合の窓口は教師のパワハラ:校長・同僚からの被害の相談先(教育委員会・人事委員会)で整理しています。
私立の教員:民法と就業規則の組み合わせ
私立学校の教員は公務員ではなく、学校法人と労働契約を結んだ民間の労働者です。期間の定めのない雇用なら、退職を申し入れてから2週間がたてば雇用が終わるのが民法627条1項の仕組みです。会社の承諾は要件になっていません。
学校法人の就業規則に「退職は3か月前までに申し出る」などの定めがある場合があります。学校法人の規則が3か月前のように長い場合について、厚生労働省は、期間の定めのない契約について2週間を大きく超える期間や会社の許可を条件にする規定は無効とされると説明しています(考え方は退職代行で即日退職できる?「即日」の意味と2週間の関係)。その場合、条文と規則を並べて書き出し、学校法人に退職日の希望を文書で伝えます。
1年契約の常勤講師など、契約期間が決まっている場合は次のように考えます。
- 契約期間の途中で辞めるには、民法628条の「やむを得ない事由」が問題になる
- 学校法人と話し合って合意で退職日を決める道もある
- 契約期間が1年を超える契約では、契約開始から1年を経過すれば、労働基準法附則137条にもとづいて申し出ていつでも退職できる(一定の例外あり)
契約書の期間欄と、更新の経緯(何回更新されたか)が分かる書類を、相談の前に集めておきます。
年度途中ならではの確認点
退職の手続きとは別に、教員の仕事には「途中で抜ける」ことへの不安が重なりやすいものです。次の項目を整理しておくと、校長や学校法人に伝えるときの話が短く済みます。
| 確認する項目 | 具体的にすること |
|---|---|
| 担任・授業・部活動 | 受け持ちの一覧と、進み具合の一枚メモを作る。後任の割り当ては学校側の仕事 |
| 成績・指導要録 | 学校の公文書なので持ち帰らない。記入途中のものは、どこまで書いたかをメモで伝える |
| 保護者・生徒への説明 | 誰がいつ何を伝えるかは、校長と相談して決める。本人が個別に連絡する必要はない |
| 有給休暇(年休) | 残日数を確かめ、辞職日までの勤務と合わせて希望を伝える |
| 貸与物・鍵・パソコン | 郵送で返すか、学校の担当に渡す日を決める |
引継ぎの最小限の型は、退職の引き継ぎをしないとどうなる?最低限残すものと伝え方の資料例が使えます。
つらさが強いときは、辞める前に休む道も
文部科学省の令和6年度調査では、精神疾患による病気休職者は公立学校の教育職員で7,087人(0.77%)でした。休職の要因として、職場の対人関係や児童生徒への指導が挙がっています。つらさで眠れない、食べられないといった状態が続くときは、辞職を決める前に医療機関と相談できる窓口を使います(番号と時間は仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間にまとめています)。休職の手続きは教員がパワハラで休職するとき:公立・私立で違う手続きとお金で確かめられます。
退職代行を選ぶ前の確認点
退職代行は、辞めると決めて、本人が学校側と直接話すのが難しい人が選ぶ方法の一つです。公立の教員は、ここまで見てきたとおり承認の相手が教育委員会などの行政機関なので、私立の教員より対応できるサービスが絞られます。申し込む前に、次の点を確かめます。
同じ公務員の枠組みで自衛官の辞め方を知りたい場合は、自衛隊を辞めたいときも参考になります。
よくある質問
Q. 公立学校の教員が民間の退職代行を使うと、辞められますか?
公立の教員の退職は、教育委員会などの任命権者が辞職を承認して決まります。民間企業の退職代行は意思を伝える役にとどまり、承認の可否や日付を任命権者と話し合うことはできません。公立の場合は、弁護士運営のサービスに対応可否を聞くか、自分で辞職願を出す方法を先に考えます。
Q. 年度の途中でも辞職願は受け付けてもらえますか?
年度途中の辞職を禁じる定めは、この記事で開いた法令には見当たりませんでした。ただ、承認の時期や必要な書類は自治体ごとの規則で決まるので、教育委員会の担当課か校長に、辞職願の様式と提出先を聞いて確かめます。
Q. 私立学校の教員が1年契約の常勤講師のときは、どう考えますか?
期間の定めがある契約は、民法628条の「やむを得ない事由」が問題になります。契約開始から1年を超える契約なら、1年経過後はいつでも退職できる定めが労働基準法附則137条にあります。契約書の期間と、更新の経緯を手元に置いたうえで相談します。
出典・参考にした公的な情報
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第37条・第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 人事院規則8-12(職員の任免)第51条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第627条・第628条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 附則第137条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査(文部科学省)
- 労働者の退職(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。