教師のパワハラ:校長・同僚からの被害の相談先(教育委員会・人事委員会)
校長や同僚の教師から受けるパワハラの相談先は、公立か私立かで分かれます。公立学校の教師は地方公務員なので、校内の窓口、教育委員会、人事委員会・公平委員会の順に外へ出ます。私立学校の教師は民間の労働者なので、学校法人の窓口と労働局が中心です。この記事では、自分の学校がどちらかを確かめるところから、記録の取り方、相談の順番までを手順で並べます。
公立か私立かで、使える窓口が分かれる
まず自分の勤務先の設置者を確かめます。公立学校の教師は地方公務員で、労働施策総合推進法の労働局による援助・調停(第35条〜第39条)は地方公務員に適用されません。そのため、民間向けの記事に出てくる「労働局へ」はそのまま使えません。私立学校は民間の労働者の扱いで、労働局の制度が使えます。なお、パワハラ防止の措置義務(第31条〜第34条)の適用除外は国の一般職や自衛隊員などに限られ、地方公務員は条文上、除かれていません。公立学校でも、設置者や任命権者に防止と相談対応の取り組みが求められる、と読めます。
| 項目 | 公立学校 | 私立学校 |
|---|---|---|
| 身分 | 地方公務員 | 民間の労働者 |
| 学校内の窓口 | 校長・教頭、学校のハラスメント相談員 | 学校法人の相談窓口、理事長・事務局 |
| 外の窓口 | 市町村・都道府県の教育委員会、人事委員会・公平委員会 | 労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー |
| 労働局の援助・調停 | 使えない | 使える |
| 勤務条件の措置要求 | 使える(人事委員会・公平委員会) | なし |
公立学校の任命権と服務監督の仕組みも押さえておきます。市町村立の小中学校などの県費負担教職員は、任命権が都道府県教育委員会にあり(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条)、都道府県教育委員会は市町村教育委員会の内申を待って任免を行います(第38条)。一方、日々の服務を監督するのは市町村教育委員会です(第43条)。指定都市など設置の仕方が違う学校もあるので、自分の学校の任命権者と監督者は、教育委員会のサイトで確かめてください。
公立学校の教師が外に出る順番
校長が加害者のときも、同僚が加害者のときも、基本の順番は同じです。校長が加害者なら、2の校内の窓口を飛ばして3から始める選び方もあります。
- 事実の記録を始める(次の見出しで書き方を示します)
- 校内で相談する:教頭、学年主任、学校のハラスメント相談員など。校長が加害者のときは、校長に伝わるかどうかを最初に確かめる
- 市町村教育委員会に相談する:服務を監督する立場なので、校長への対応を求める先になる。教職員向けの相談窓口を設けている教育委員会があるので、「(市町村名) 教育委員会 教職員 ハラスメント 相談」で探す
- 人事委員会・公平委員会に苦情相談する:地方公務員法は、これらの委員会が職員の苦情を処理すると定めている(第8条)。総務省の令和7年度調査では、内容別でパワハラが最多で、助言と当局への伝達が中心だった(内訳は地方公務員のパワハラ:人事委員会・公平委員会への相談と措置要求)。通知は教育職員も各制度の対象であることを周知するよう求めている
- 勤務条件の措置要求:席の配置、業務の割り振りなど、自分の勤務条件を将来に向けて改めるよう求める手続き(地方公務員法第46条)。懲戒や謝罪、損害賠償は求められない
外に出る前に、窓口ごとに「できること・できないこと」を確かめておくと、期待のずれが減ります。人事委員会・公平委員会の使い方は地方公務員のパワハラ:人事委員会・公平委員会への相談と措置要求に詳しくあります。県費負担教職員は、任命権者(都道府県教育委員会)と日々の服務を監督する側(市町村教育委員会)が分かれています。相談や申し立てをするときは、「誰に何を求めるのか」を、任命に関わることか、日々の勤務のことかに分けて整理しておくと、窓口で話が通じやすくなります。
職員室・会議・面談での記録の取り方
学校では、パワハラが起きる場面が決まっています。場面ごとに、記録するポイントを変えると、あとで使いやすくなります。
| 場面 | 記録すること |
|---|---|
| 職員会議・朝の打合せ | 日時、出席者、発言の言葉そのまま、他の教員の反応 |
| 校長・教頭との面談 | 日時、場所、時間の長さ、呼び出された理由、言われた内容 |
| 評価面談・異動希望の面談 | 評価や異動の話に絡めた発言、面談前後の経緯 |
| 職員室・廊下での言動 | その場にいた人、声の大きさ、他の教員や生徒に聞こえたか |
| メール・校務支援システム | 日付と送信者、文面を保存(改ざんしない) |
記録の例です。
「10月3日(金)16:20〜16:50、校長室。校長から『指導力がないなら辞めたらどうか』と言われた。理由の説明はなし。同席者なし。」
記録に児童生徒や保護者の氏名、成績、家庭の事情は書きません。地方公務員には職務上知った秘密を漏らしてはならない義務があり(地方公務員法第34条)、記録の書き方でこの義務に触れないよう、事実は「何が言われたか」「いつ・どこで」に絞ります。書き方の基本はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき、経過の整理はパワハラの時系列表の作り方:相談や申立てで使える経緯書の書き方にあります。
私立学校の教師の場合
私立学校の教師は民間の労働者です。学校法人は、事業主として、パワハラ防止の方針の明確化、相談窓口の設置、事後の迅速な対応などの措置を講じなければなりません(労働施策総合推進法第31条)。相談したことを理由とする不利益な取扱いも禁止されています。
学校内で相談しても対応がないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーに相談できます。労働局長による助言・指導・勧告(第36条)や、紛争調整委員会の調停(第37条)の仕組みもあります。窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表にまとめています。
休む・辞める・保護者対応が重なるとき
パワハラを受け続けると、心身に出ます。文部科学省の令和6年度調査では、休職の要因として教育委員会が挙げる項目には、上司・同僚・部下との職場の対人関係が入っています。休む判断が必要なときは教員がパワハラで休職するとき:公立・私立で違う手続きとお金に、保護者からの過度な要求が重なっているときは教員が保護者のカスハラを受けたとき:学校・教育委員会に求める対応に、順番に進んでください。
公立学校の窓口の分け方は、厚生労働省のハラスメント相談窓口の案内でも確かめられます。国家公務員、地方公務員、公立学校の教員は労働局の総合労働相談コーナーとは別の窓口になる、という整理です。自分の立場に合う入口を選んで、記録を持って進んでください。
よくある質問
Q. 校長が加害者のとき、校内の相談窓口に話してもよいですか?
校内の窓口が校長の指揮下にあるなら、先に市町村の教育委員会など学校の外の窓口へ行く選び方があります。市町村立学校の県費負担教職員の服務は、市町村教育委員会が監督します。窓口の担当者に、相談内容が校長に伝わるのかを最初に確かめてから話すと安心です。
Q. 同僚の教師からのいじめも、パワハラとして相談できますか?
指針では、同僚や部下でも、業務上必要な知識や経験を持ち、協力を得なければ仕事が進まない場合や、集団で抵抗が難しい場合に、優越的な関係にあたる例が挙げられています。当てはまるかは個別に整理する必要があるので、まず事実の記録を持って相談窓口に出してください。
Q. 私立学校の教師も、公立と同じ窓口を使えますか?
私立学校の教師は民間の労働者なので、学校法人の相談窓口のほか、労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーを使えます。公立は労働局の援助・調停が使えず、教育委員会や人事委員会などが窓口になります。
出典・参考にした公的な情報
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第37条・第38条・第43条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公務員法 第8条・第34条・第46条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第39条・第48条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和7年度 措置要求及び審査請求の状況等に関する調査(総務省)(総務省)
- 令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査(文部科学省)(文部科学省)
- ハラスメント相談窓口の案内(あかるい職場応援団)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。