職場・立場別 / 制度解説

地方公務員のパワハラ:人事委員会・公平委員会への相談と措置要求

この記事のもくじ
  1. 地方公務員のパワハラ:まず「使えない制度」と「使える制度」を分ける
  2. 人事委員会と公平委員会:自分の自治体はどちらか
  3. 苦情処理(相談)と措置要求の違い
  4. 所属の窓口から委員会へ:動き方の順番
  5. 市役所・県庁で起こりやすいことと、地方ならではの注意

市役所や県庁などで働く地方公務員がパワハラを受けたときは、所属のハラスメント相談窓口に加えて、人事委員会または公平委員会を使えます。この委員会は、職員の苦情を処理し、勤務条件の措置要求を審査する機関です(地方公務員法第8条)。労働局のあっせんや調停は使えないので、委員会が外の公的な窓口の中心になります。国家公務員の場合は別の制度なので、国家公務員のパワハラ:人事院規則10-16と人事院への苦情相談をご覧ください。全体の立場分けは公務員のパワハラ相談先と対処:人事院・人事委員会など民間と違う窓口にあります。

地方公務員のパワハラ:まず「使えない制度」と「使える制度」を分ける

地方公務員には、一般行政職のほか、教員、警察官、消防職員、会計年度任用職員も含まれます。厚生労働省の相談窓口の案内では、地方公務員の相談は総合労働相談コーナーと都道府県労働委員会では扱っておらず、各自治体の人事委員会(公平委員会)や人事担当課などに問い合わせるとされています。

法律上は次の整理になります。

  • 労働施策総合推進法のパワハラ措置義務(第31条〜第34条)。 地方公務員は適用除外に入っていません(同法第48条の除外は一般職の国家公務員などだけです)。つまり、自治体にはパワハラ対策の措置をとる義務があります。
  • 労働局長の援助・調停。 同法第48条で、地方公務員には適用されません。
  • 労働局のあっせん・助言指導。 個別労働関係紛争解決促進法の第22条で、地方公務員には適用されません。ただし、地方公営企業の企業職員、特定地方独立行政法人の職員、一部の単純労務職員は例外です。

この組み合わせから、地方公務員のパワハラ対応は、自治体の内部の窓口と、人事委員会・公平委員会の二段になります。

人事委員会と公平委員会:自分の自治体はどちらか

地方公務員法第7条は、次のように設置を定めています。

比較表:人事委員会・公平委員会の設置
自治体 置かれる機関
都道府県、指定都市 人事委員会
人口15万以上の市、特別区 人事委員会または公平委員会
人口15万未満の市、町、村、組合 公平委員会

公平委員会は、他の団体と共同で設置することや、他の団体の人事委員会に事務を委ねることもできます。自分の自治体の委員会は、自治体のサイトや人事課で確かめられます。総務省のサイトには全国の設置状況の資料があります。

どちらの委員会も、法律上の権限は共通です。勤務条件の措置要求を審査して判定すること、不利益な処分への審査請求を裁決すること、そして職員の苦情を処理することです(第8条)。苦情処理は、委員または事務局長に委ねることができます。

苦情処理(相談)と措置要求の違い

委員会の入口は二つあります。目的に合うほうを選ぶことが大切です。

苦情処理(苦情相談)。 職員の苦情を聞いて助言し、必要に応じて当局に伝えたり、あっせんしたりする窓口です。パワハラを含む幅広い悩みを、手続きの形式をあまり気にせず相談できます。総務省の令和7年度調査では、全国の苦情処理の新規相談は2,570件で、前年度より242件増えました。内容別で最も多いのが「パワーハラスメント」で681件(26.5%)でした。処理結果の件数に対する割合で見ると、「制度説明及び助言」が1,381件(53.6%)、「当局への伝達」が997件(38.7%)、「あっせん」が51件(2.0%)、「当局を指導」が28件(1.1%)でした。

勤務条件に関する措置要求(第46条・第47条)。 給与、勤務時間その他の勤務条件について、人事委員会または公平委員会に、地方公共団体の当局により適当な措置がとられるよう要求する制度です。委員会は口頭審理その他の方法で審査して判定し、権限内のことは自ら実行し、それ以外のことは権限を持つ機関に勧告します。

措置要求の件数は、令和7年度の新規が326件で、うちパワハラに関するものが14件(4.3%)でした。処理された359件の結果は、全部容認6件、一部容認25件、全部否認140件、却下(不受理含む)149件です。苦情処理の新規相談2,570件と比べると、措置要求の新規326件は件数が少なく、処理の結果も全部または一部が認められたのは3割に届きません(31件÷359件、筆者の計算で約8.6%)。

使い分けの目安を表にします。

早見表:苦情処理と措置要求の使い分け
場面 向く入口
まず誰かに状況を聞いてもらい、助言がほしい 苦情処理(相談)
所属の窓口に伝えたいが、自分では言いにくい 苦情処理(当局への伝達の依頼)
仕事を与えられない、不当な配置など、自分の勤務条件を具体的に改善したい 措置要求
加害者の処分、損害賠償、謝罪を求めたい 委員会の対象ではない(任命権者、弁護士へ)

措置要求の様式や提出先、期限などの手続きは各委員会の規則で決まります。国の人事院の運用では、損害賠償、懲戒処分の要求、上司の謝罪を求めるものは対象外ですが、地方の扱いは委員会ごとに違うことがあります。出す前に、委員会の事務局に電話かメールで、自分の求める内容が対象になるかを聞いてください。

所属の窓口から委員会へ:動き方の順番

  1. 記録をつくる。 日付、場所、言われたこと、同席者、体調の変化を残します。パワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきの書き方が使えます。
  2. 所属のハラスメント相談窓口、または人事課に相談する。 加害者が上司や課長のときは、その上位の管理職や、別の部署の相談員を選べるかを最初に聞きます。
  3. 委員会の事務局に電話する。 相談の対象かを聞き、予約や面談の方法を確かめます。「所属には伝えず、助言だけほしい」と最初に言ってかまいません。
  4. 措置要求を考える場合は、様式と期限を事務局で確かめる。
  5. 処分を受けたときは、審査請求の期限に注意する。 懲戒などの不利益処分の審査請求は、人事委員会または公平委員会に対してのみ行えます(第49条の2)。期間は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内で、処分の日の翌日から1年を過ぎるとできません(第49条の3)。国家公務員は起算点が「処分説明書を受け取った日」で、地方とは言い回しが違います。

文例を一つ置きます。

文例:「◯◯課の職員です。直属の上司から日常的に人格を否定する言葉を受けています。記録は手元にあります。まず、苦情処理の対象になるか、内容を所属に伝えずに相談できるかを教えてください。」

市役所・県庁で起こりやすいことと、地方ならではの注意

総務省が2025年4月に公表した職員アンケート(388団体の一般行政部門の職員2万人が対象、有効回収11,507件)では、過去3年間にパワハラを受けたと感じた経験がある人は15.7%でした。年代別では40代が19.3%で最も高く、行為者は「上司(幹部以外)」が最多で過半数でした。自己申告の数字で、厚生労働省の民間調査とは別の調査です。同じアンケートで、人事委員会・公平委員会への苦情相談ができることの周知は、職員に十分に届いていない結果でした。委員会という窓口があること自体を知らない人が多いということです。

地方ならではの注意が三つあります。

最後に、委員会が対応できるのは勤務条件と苦情の範囲です。加害者の処分の基準は公務員のパワハラは懲戒処分になる?停職・減給・戒告の標準例と令和7年の件数、委員会で動かなかったときの手段は公務員のパワハラで泣き寝入りしない:所属が動かないとき外に出せる3つの手段で整理しています。

よくある質問

Q. 自分の市役所に人事委員会があるか、公平委員会かはどう調べますか?

都道府県と指定都市は人事委員会を置き、人口15万以上の市と特別区は人事委員会か公平委員会、人口15万未満の市町村は公平委員会です。公平委員会は他の団体と共同で設けたり、他の団体の人事委員会に事務を委ねたりもできます。自治体のサイトで「人事委員会」「公平委員会」を検索するか、人事課に聞いてください。

Q. 措置要求をすれば、パワハラをやめさせてもらえますか?

措置要求は勤務条件について、当局が適当な措置をとるよう求める制度です。総務省の令和7年度調査では、処理359件のうち全部容認が6件、一部容認が25件、全部否認が140件、却下(不受理を含む)が149件でした。認められる事案は多くないので、目的に合うかを事前に委員会の事務局で確かめてください。

Q. 市役所の窓口で働く人は、利用者からの暴言にも相談できますか?

労働施策総合推進法は2026年10月1日から、顧客などの言動による就業環境の悪化にも事業主が措置をとるよう定めています(第33条)。この規定は地方公務員にも適用除外されていません。総務省の職員アンケートでは、地方公務員の35.0%が過去3年間にカスハラを受けたと答えており、窓口業務ほど割合が高い結果でした。所属の相談窓口に伝えてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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