カスハラ被害を受けたときの対処:記録・報告・会社に求める対応
この記事のもくじ
カスハラ被害を受けたら、まず自分の安全を確保し、その場で上司に報告して一人で対応し続けないことが出発点です。暴行や脅し、帰ってもらえない居座りなど身の危険があるときは110番で警察を呼びます。落ち着いたら、その日のうちに日時・相手・言葉・時間の長さを書き残し、会社に報告して対応を求めます。2026年10月1日から、会社には相談に応じる体制を整えるなどの措置が義務づけられていて、指針は担当の交代や複数での対応といった配慮を例に挙げています。
カスハラ被害を受けた直後にすること:安全・報告・交代
客や取引先から怒鳴られている最中は、頭が真っ白になって当然です。その場では次の順だけを意識します。
- 距離をとる:カウンターや机を挟む、出入口側に立つ。物を投げる・つかみかかるなどの動きがあれば、その場を離れる。
- 人を呼ぶ:上司や同僚に声をかけ、一人で対応しない。電話なら「上の者に代わります」と保留にして、一度区切る方法もある。
- 危険なら110番:暴力を振るわれた、刃物や「殺す」などの脅しがある、退去を求めても居座る、といった場合。
- 急がない警察への相談:つきまといや後日の脅しのメッセージなど、いま危険が迫っていない相談は、警察相談専用電話が受け付けています。番号と受付時間、警察への伝え方は職場で暴力・脅しを受けたら:110番と#9110、警察への相談の仕方にまとめています。
文例(接客中に交代を求める):「確認のため、責任者と代わります。少々お待ちください。」
文例(電話を区切る):「本件は担当部署で確認のうえ、改めてご連絡します。本日はこれで失礼します。」
会社が定める対処の例として、カスハラ指針は「直ちに報告し指示を仰ぐ」「可能な限り一人で対応させない」「十分に説明しても要求が続けば一定の時間で退店を求める・電話を切る」を挙げています。職場にこうした手順があるかは、カスハラ対策義務化で会社は何をする?従業員が確かめたい措置の中身のチェックリストで確かめられます。
記録の残し方:その日のうちに書く項目
記録は、会社に配慮を求めるとき、労働局に相談するとき、体調を崩して労災を考えるときのいずれにも役立ちます。記憶が新しいうちに、事実と気持ちを分けて書きます。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日時・時間の長さ | 10月21日 14:05〜14:50(45分) |
| 場所・手段 | 店舗レジ前/電話(店の代表番号)/問い合わせフォーム |
| 相手 | 名乗った名前、会員番号、外見の特徴、電話番号 |
| 発端 | 商品の在庫切れを伝えた |
| 言われた言葉 | 「お前じゃ話にならない」「SNSに名前を書いてやる」をそのまま |
| 行動 | カウンターを叩いた、土下座を求めた、閉店後も帰らなかった |
| その場にいた人 | 同僚A、店長(14:30から対応を交代) |
| 体の状態 | その夜眠れなかった、手の震えが続いた |
| 残っている物 | 防犯カメラ、通話の録音、受信メール、SNSの投稿の画面 |
電話やメール、SNSでのカスハラは、着信履歴やメール本文、投稿の画面を日付が分かる形で保存します。会社の防犯カメラや通話録音は自分では保存できないことが多いので、保存期間が過ぎる前に上司に保存を頼んでおきます。指針も、会社が事実を確かめる方法として録音・録画の確認を挙げています。
書き方の基本はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つき、電話の場合は電話のパワハラを録音・記録する方法:通話録音と着信履歴の残し方が使えます。いずれも社内の相手を想定した記事ですが、残す項目は同じ考え方です。
会社への報告と、求められる対応
カスハラ被害を会社に伝えるときは、口頭で済ませず、記録をもとにメールでも送っておきます。会社には、相談に応じ適切に対応するための体制の整備などの措置が法律で義務づけられています(労働施策総合推進法第33条)。指針は、事実を確かめたうえで被害を受けた人に配慮することを求めており、その例の一覧はカスハラ対策義務化で会社は何をする?従業員が確かめたい措置の中身にあります。報告のときに頼みやすいのは、次の2つです。
- 担当の交代や複数人での対応:同じ客が来たとき、一人で受けない形にしてもらう。
- 責任者が代わって対応する:電話や窓口で、責任者に引き継ぐ流れを決めてもらう。
自分の職場に当てはめて、次の3点を報告の前に確かめておくと、頼む内容が具体的になります。
- 同じ客に、これまで何回、誰が対応したか(記録のメモから数える)。
- 自分の職場に、責任者へ引き継ぐ決まりや、通話を録音するルールがあるか。
- 頼みたい措置を、上の2つのどちらにするか(体調に影響が出ているなら、受診の相談も添える)。
文例(上司・窓口への報告メール):「10月21日14時頃、店頭で顧客から約45分にわたり大声での叱責を受け、『SNSに名前を書く』と言われました。経緯は添付のメモのとおりです。同じ方が来店した場合に、私が一人で対応しないで済むよう、担当の交代か複数での対応をお願いできますか。防犯カメラの映像の保存もお願いします。」
報告したことや、会社の事実確認に協力したことを理由に解雇などの不利益な取扱いをすることは禁じられています(第33条2項)。「客商売なのだから我慢して」と言われた場合も、その言葉と日時を記録しておきます。
会社が守ってくれないとき:社外の相談先
報告しても何もしてもらえない、繰り返し同じ客の対応に回される、という場合は、社外に相談できます。
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室):カスハラの措置義務に関する窓口です。会社との紛争について、労働局長の助言・指導・勧告(第36条)や、紛争調整委員会の調停(第37条)を使えます。窓口の役割は労働局のハラスメント相談窓口:雇用環境・均等部(室)でできることへ。
- 弁護士:顧客に損害賠償を求めたい、会社の対応の責任を問いたいなど、個別の見通しが必要なときの相談先です。
- 警察:暴行・脅迫・つきまといなど、犯罪に当たりうる行為。
窓口ごとの受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表に一本化しています。
つらさが続くとき:休む・労災・離れるの選択肢
カスハラのあと、眠れない、出勤前に動悸がする、客の声が頭から離れないといった状態が続くなら、早めに医療機関を受診してください。働く人向けの公的な相談窓口として、厚生労働省の「こころの耳」が電話とLINEの相談を受け付けています(ハラスメントに当たるかの判断はしない窓口です)。番号と受付時間は仕事がつらい・限界のときの相談先:電話・LINEの窓口と受付時間にあります。
精神障害の労災認定基準は2023年9月1日の改正で、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」を出来事の一つに加えました。認定基準の具体例には、中程度の迷惑行為を受けて会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった場合を、心理的負荷が「強」になる例として挙げているものがあります。会社に報告した記録は、この点でも意味を持ちます。詳しくはカスハラは労災になる?2023年改正の認定基準に入った出来事へ。
休んでも状況が変わらず、職場を離れることを考える場合の休職・異動・転職の比べ方は、カスハラで仕事を辞めたいとき:休む・異動・転職の選び方と準備で扱っています。
よくある質問
Q. 一度きりの暴言でも、会社に報告してよいのでしょうか?
報告してかまいません。カスハラ指針は、言動の頻度や継続性も考慮するとしたうえで、強い身体的・精神的苦痛を与える態様なら一回の言動でも就業環境を害する場合がありうるとしています。報告しておくと、同じ相手が別の従業員に同じことをしたときに会社が対応しやすくなります。
Q. お客さんとのやり取りを自分のスマホで録音してもいいですか?
指針は、会社が定める対処の例として、顧客等とのやり取りの録音・録画を個人情報保護法などを守って行うことを挙げています。まず職場に録音のルールがあるかを確かめ、ルールがあればそれに沿います。私物での録音の考え方は[パワハラを無断で録音してもいい?相手の同意と使い方の注意点](/rokuon-mudan/)で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 労働施策総合推進法 第33条・第36条・第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- カスタマーハラスメントに関する指針(令和8年厚生労働省告示第51号)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準(令和5年9月1日改正)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準について(別表1 具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」)(厚生労働省)
- 犯罪被害者白書 資料「相談先一覧」(令和7年4月現在)(警察庁)
- こころの耳 電話相談(厚生労働省)
- こころの耳 SNS相談(LINE)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。