法的手段の前に / 手順

パワハラで訴えられた側の対応:訴状・支払督促の期限と弁護士相談の準備

この記事のもくじ
  1. 届いた書面の見分け方と、それぞれの期限
  2. 本物の書面かどうかを確かめる
  3. 会社と自分の関係を整理する
  4. 弁護士相談に持っていく資料と時系列表

パワハラで訴えられたら、最初にするのは、届いた書面の種類と期限を確かめることです。訴状なら、書かれた口頭弁論の期日に欠席し、答弁書でも争う意図を示さないと、請求どおりの判決が言い渡される可能性があります。支払督促なら、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、仮執行の宣言が付されます。弁護士や本人から届く内容証明や通知書は裁判所の手続ではありませんが、どの書面も無視せず、早めに自分の弁護士に相談してください。

届いた書面の見分け方と、それぞれの期限

「訴えられた」と感じる書面には、性質の違う複数のものがあります。次の表で、手元の書面がどれに当たるかを確かめてください。

早見表:届いた書面の種類と最初にすること
書面 送り主 期限とその意味 最初にすること
訴状、口頭弁論期日呼出状、答弁書催告状 裁判所 期日に欠席し、答弁書でも争わないと、請求どおりの判決の可能性 期日と答弁書の提出期限をメモし、弁護士に相談
支払督促 簡易裁判所(書記官) 送達から2週間以内に督促異議を申し立てないと仮執行の宣言 送達を受けた日を確かめ、異議の申立てを検討
労働審判の申立書、期日呼出状、答弁書催告状 地方裁判所 3回以内の期日で審理が終わるのが原則。答弁書と証拠を早く出す必要 自分が事業主(経営者)として受け取った場合に限られる。期日と答弁書の期限を確かめ、弁護士に相談
内容証明・通知書(請求書) 相手本人、相手の弁護士 書かれた回答期限は送り手が設けたもの 内容を読み、返事をする前に弁護士に相談
社内の呼び出し・事情聴取の連絡 会社 社内の手続の日程 社内の手続として準備(下記リンク)

訴状が届いた場合。 民事訴訟法159条は、口頭弁論で相手の主張を争うことを明らかにしない場合、その事実を認めた(自白した)ものとみなし、期日に出頭しない場合にもこれを準用すると定めています。一方で158条は、最初の口頭弁論の期日に出頭しなくても、提出した答弁書に書いた事項を述べたものとみなせると定めています。答弁書の提出期限を守ることが、最初の大事な一歩です。

支払督促が届いた場合。 支払督促は、債務者(請求された側)の言い分を聞かずに出されます(386条1項)。送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、債権者の申立てで仮執行の宣言が付され(391条)、仮執行宣言付きの支払督促の送達から2週間を過ぎると、もう異議を申し立てられません(393条)。適法な異議を申し立てれば、通常の訴訟に移ります(395条)。

労働審判の書面が届いた場合。 労働審判法1条は、労働審判を個々の労働者と事業主の間の紛争を扱う手続としています。上司や同僚という立場の個人が相手方になる手続ではないので、個人あてに労働審判の書面が届くのは、自分が事業主(経営者)である場合などに限られます。裁判所は、相手方には期日呼出状と一緒に答弁書催告状や申立書の写しが届き、3回以内の期日で終わるため早期に言い分と証拠を出す必要があると説明しています。

社内での事情聴取や処分の手続については、パワハラの加害者にされたときとパワハラ加害者の処分の種類で整理しています。警察から連絡があった場合や刑事の手続については、パワハラに刑事罰はある?を参照してください。

本物の書面かどうかを確かめる

裁判所は、裁判所や裁判所職員を名乗る不審な郵便物・電話・メールの例を公表し、注意を呼びかけています。公表された例には、「裁判所書記官室」の名前で訴訟を起こされたと知らせるはがきや、封筒に「特別送達」と書かれていたのに実際には普通郵便(速達)で届いた口頭弁論期日呼出状などがあります。

確かめるときは、次の順番で進めてください。

  1. 書面にある裁判所名・事件番号・担当の書記官名を書き出す
  2. 書面に書かれた電話番号ではなく、裁判所の公式サイトの所在地・電話番号の一覧で、その裁判所の番号を自分で調べる
  3. その番号に電話し、事件番号を伝えて、自分を当事者とする事件があるかを聞く
  4. お金の振込みや、個人情報の送付を求められても、確かめるまでは応じない

不審な書面だと分かった場合でも、本物の訴状だった場合でも、届いた封筒は捨てずに保管してください。いつ届いたか(送達を受けた日)が、期限を数える起点になるからです。

会社と自分の関係を整理する

パワハラの損害賠償は、加害者とされた個人に対しては民法709条(不法行為)、会社に対しては715条(使用者責任)などを根拠に請求されることがあります。会社と個人が一緒に訴えられることもあれば、どちらか一方だけが訴えられることもあります。

ここで注意したいのは、会社と自分の利害が常に同じとは限らないことです。民法715条3項は、使用者責任で賠償した会社が、従業員に求償する(負担を求める)ことを妨げないと定めています。また、社内では懲戒の手続が並行して進むこともあります。会社の顧問弁護士は会社の代理人であり、弁護士法25条は、相手方の協議を受けて賛助した事件など、弁護士が職務を行えない場合を定めており、利益が対立する関係の双方を同じ弁護士が受けられないことがあります。会社と自分の利益が対立するおそれがあるため、会社側の弁護士が自分の弁護も引き受けてくれるとは限らず、自分の相談先は別に探すのが基本です。

相談先を探すときは、予約の段階で、原告(訴えた人)と会社の名前を伝えてください。依頼を受けられるかどうかを事前に確かめてもらえます。依頼先の探し方はパワハラを弁護士に相談するときの選び方にまとめています。費用の負担が重い場合は、収入などの要件のもとで使える法テラスの無料法律相談と費用の立替えがあります。使い方は法テラスでパワハラを相談するにはにまとめています。

この段階で避けたいのは、次の3つです。

  • 原告に直接連絡して、取り下げを求めたり事情を問いただしたりすること
  • 職場で原告や証言しそうな同僚に、訴えの話を持ち出すこと
  • 手元の記録(メールやチャット)を消すこと

どれも、手続の中で不利な事情として扱われるおそれがあります。

弁護士相談に持っていく資料と時系列表

相談では、期限が迫っている書面ほど先に見てもらう必要があります。予約の電話で「訴状(支払督促)が届いていて、答弁書(異議)の期限が○月○日です」と最初に伝えてください。持っていくものは次のとおりです。

  • 届いた書面一式と封筒(送達を受けた日が分かるもの)
  • 書面に書かれた出来事ごとの、自分の認識をまとめた時系列表
  • 指示や指導の背景が分かる資料(業務の指示メール、業務日報、ミスや遅れの記録、会議の議事録)
  • 原告とのやり取り(メール・チャット・LINE)
  • 社内の調査の連絡、事情聴取の記録、処分の通知
  • 就業規則やハラスメント防止規程

時系列表は、訴状などに書かれた主張を1つずつ拾い、「その日に何があったか」「自分は何を言った(した)か」「なぜそうしたか(業務上の必要)」「裏づける資料」の4列で整理すると、弁護士が反論の材料を見つけやすくなります。主張のうち、事実として認める部分と、違う部分と、覚えていない部分を分けて書くのがこつです。

例:「訴状の3ページ目の5月12日の発言は、言った言葉は近いが、会議室で2人だけのときの発言で、人前ではありません。その前日に納期遅れがあり、その指摘のつもりでした。そのときのメールがあります」

相談で聞くことは、パワハラを弁護士に相談する前の準備の質問リストが使えます。加えて、「答弁書や異議を期限までに出すには、いつまでに依頼すればよいか」を最初に聞いてください。被害を受けた側が訴える前に何を考えるかは、パワハラで訴える方法は6つで説明しています。

よくある質問

Q. 訴状が届いたことを会社に伝えるべきですか?

会社が一緒に訴えられているか、社内の調査や処分と並行しているかで判断が変わります。民法715条により会社も責任を問われうる一方、会社と自分の立場が同じとは限らないので、伝える時期と内容は、自分の弁護士に相談してから決めると安全です。

Q. 相手に謝れば、訴えを取り下げてもらえますか?

取り下げるかどうかは相手が決めることです。手続の途中で和解して終わることもありますが、謝罪の文面は事実を認めたものとして扱われることがあるので、相手に連絡する前に、何をどう伝えるかを弁護士と相談してください。相手に直接連絡して取り下げを迫ることは避けてください。

Q. 答弁書の締め切りに間に合いそうにありません。

書面に書かれた担当の書記官に連絡し、手続の進め方を相談してください。民事訴訟法158条により、最初の口頭弁論の期日に出頭できなくても、提出した答弁書に書いた内容は述べたものとみなされることがあります。何も出さずに放置することだけは避けてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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