派遣社員のパワハラ相談先:派遣元・派遣先それぞれの責任
派遣で働いていて、派遣先でパワハラを受けたとき、相談できる先は派遣元と派遣先の両方です。労働者派遣法47条の4は、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなして、労働施策総合推進法の31条1項(パワハラの措置義務)などを適用すると定めています。この記事では、その責任の分担、相談の順番、伝え方の文例、更新や労災の考え方を手順にして並べます。
派遣元と派遣先、それぞれの責任
| 相談先 | 立場 | できること・求めること | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 派遣元(雇用主) | 契約と給与を結ぶ会社 | 苦情の処理にあたる派遣元責任者を選任している。派遣先との連絡調整も担当する | 労働者派遣法36条、パワハラ措置は労働施策総合推進法31条 |
| 派遣先(指揮命令する会社) | 日々の指示を出す会社 | 派遣労働者から苦情を受けたら、内容を派遣元に通知し、連携して適切かつ迅速に処理する。派遣先責任者が苦情処理にあたる | 労働者派遣法40条1項、41条、47条の4 |
| 都道府県労働局 | 行政機関 | 総合労働相談コーナーで相談、雇用環境・均等部(室)で援助・調停の案内 | 労働施策総合推進法36条・37条 |
つまり、派遣先で起きたパワハラでも、派遣元は雇用主として、派遣先は日々の指揮命令をする会社として、それぞれが措置を講じる責任を持ちます。47条の4の読み替えにより、「雇用管理上」の措置に加えて「指揮命令上」の措置も、条文の上で位置づけられています。セクハラやマタハラは、同様に派遣法47条の2が、男女雇用機会均等法の措置義務を派遣先にも適用しています。
指針も、派遣労働者について、派遣元だけでなく派遣先も措置を講じる必要があるとし、派遣先が相談を理由に派遣の役務の提供を拒むなどの不利益な取扱いをしてはならないとしています。
相談の順番:5つのステップ
- 記録を取る。派遣先の名前、場所、加害者の立場(指揮命令者、同じ部署の社員、他の派遣社員など)、日時、言われた言葉を書きます。書き方はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきの型が使えます
- 派遣元の担当者に連絡する。営業担当やコーディネーターに伝え、苦情として扱ってほしいことを明示します。派遣元責任者が苦情の処理にあたるので、窓口が分からなければ、責任者に当たる人を聞きます
- 派遣先の窓口・派遣先責任者に伝える。派遣元から伝えてもらう方法と、自分で派遣先の相談窓口に伝える方法があります。派遣先は、苦情を受けたら派遣元に通知し、派遣元と連携して処理する決まりです
- 返答を待つ間に、被害を減らす工夫をする。席の配置、指示を受ける窓口の一本化、メールでの指示への切り替えなど、頼めることを派遣元に伝えます
- 進まなければ労働局へ。総合労働相談コーナーは無料で、予約なし。パワハラの紛争は労働局長の助言・指導・勧告や、紛争調整委員会の調停の対象になります(労働施策総合推進法36条・37条)
窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表にあります。
伝え方の文例
派遣元の担当者への連絡の例です。メールで送ると、日付が残ります。
件名:就業先での言動について相談したいことがあります(氏名) 「お世話になっております。〇〇です。就業先の〇〇部で、〇月〇日、〇月〇日、〇月〇日に、指示をくださる〇〇さんから『何度言っても使えない』と他の方の前で言われました。メモは日付ごとに残しています。仕事に集中できなくなっているため、苦情として受け付けていただき、派遣先とどう進めるか、一度お電話で相談させてください。」
派遣先の責任者や窓口に直接伝える場合の例です。
「派遣元の〇〇(営業担当)にも相談しています。〇月以降、同じ部署の〇〇さんから、挨拶を返してもらえない状態が続いています。指示の窓口を一本にしていただくことは可能でしょうか。」
どちらも、事実と、頼みたい対応を一つに絞った形です。感情的な言葉を並べるより、日付と言葉が並んでいる方が、受け手が動きやすくなります。メールの型は会社にパワハラを相談するメールの書き方:件名から結びまでの例文も参考になります。
契約の更新や派遣先の変更が気になるとき
派遣は、派遣契約と雇用契約の期間に影響されやすく、苦情を言いにくい働き方です。次の点を押さえてください。
- 相談したこと、事実確認に協力したことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(労働施策総合推進法31条2項)。派遣先についても指針が同様の趣旨を示しています
- 相談の結果として、派遣先の変更や就業条件の調整が出ることはありますが、それが望む形になるとは限りません。希望を先に派遣元に伝えて、選択肢を確かめます
- 相談後に契約の更新を打ち切られた、就業先が急に変わったなどの変化は、日付と書面を残します。パワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処に動き方があります
体調を崩したとき・労災を考えるとき
眠れない、食欲がない、出勤前に気分が悪くなる状態が続くときは、受診して医師に相談してください。仕事が原因の心の不調には、労災の認定要件(発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷があったことなど)があり、ハラスメントのように繰り返される出来事は一体として評価されます。要件と申請の流れはパワハラによる精神障害の労災認定:3つの要件と申請の流れで整理しています。
派遣労働者が労働災害に被災した場合は、派遣元が加入する労災保険の適用を受け、給付の請求では派遣元が、けがをした日時・場所・状況などを証明する、と厚生労働省の派遣元向け資料は説明しています。派遣元は現場の状況を把握しにくいため、派遣先から派遣元への状況の通知が欠かせません。つまり、派遣先での出来事を記録した自分のメモが、派遣元に事情を伝える材料になります。労働基準監督署に連絡するときは最初に派遣労働者であることを伝えて、書類の出し方を聞いてください。報酬を払って書類の作成や提出の代行を頼むなら、社会保険労務士の業務になります。
同じ職場にいるパートやアルバイトの人の相談先は、パートのパワハラ:パート同士・社員からの嫌がらせの相談先とアルバイトのパワハラ:店長からの暴言・シフト外しの相談先に整理しています。
よくある質問
Q. 派遣先の人からの嫌がらせなのに、派遣元に相談してよいのですか?
相談できます。労働者派遣法47条の4により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなして、労働施策総合推進法31条1項などが適用されます。派遣元は雇用主として、派遣先は指揮命令をする立場として、それぞれ措置を講じる責任があります。どちらに先に話すかは、話しやすさで決めて構いません。
Q. 派遣先に苦情を言ったら、契約を切られませんか?
指針は、派遣労働者が派遣先に相談したことなどを理由に、派遣先が派遣の役務の提供を拒むなどの不利益な取扱いをしてはならないと定めています。不安なときは、先に派遣元の担当者に事情を話し、派遣先への伝え方を相談してください。扱いが変わった場合は、日付とやり取りを記録します。
Q. 派遣先でのパワハラで体調を崩しました。労災の申請はどこへ相談しますか?
派遣労働者が被災した場合、適用を受けるのは派遣元が加入する労災保険で、給付の請求では派遣元が日時・場所・状況などを証明する仕組みと厚生労働省は説明しています。精神障害の認定要件は別の記事で整理しています。最初に労働基準監督署へ「派遣労働者である」と伝え、派遣元と派遣先のどちらに何を頼むかを聞いてください。
出典・参考にした公的な情報
- 労働者派遣法 第36条・第40条・第41条・第47条の2・第47条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 派遣労働者が労働災害に被災した場合の派遣元の対応(派遣元向け資料)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針本文を収録・令和8年10月1日適用時点)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準(発病前おおむね6か月・繰り返される出来事の一体評価)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。