「明日から来なくていい」と言われたら:解雇か退職勧奨かの確かめ方
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「明日から来なくていい」と言われても、その一言だけで会社を辞めたことにはなりません。その場で「分かりました」「辞めます」と答えず、同じ日のうちに「それは解雇の意味ですか、退職のお願いですか」と書面(メール)で聞くのが最初の一手です。 言葉の意味は、解雇の通告、退職勧奨、一時的な出勤停止のどれにもなり得ます。この記事では、意味を確かめる質問と、働く意思を伝える文例、賃金や書類の扱いを順に説明します。
「来なくていい」は何を意味するのか:3つの読み方
同じ言葉でも、会社の意図によって扱いがまったく違います。言われた直後にできるのは、どれなのかを断定せず、確かめる材料を集めることです。
| 読み方 | 会社の意図 | 確かめること |
|---|---|---|
| 解雇の通告 | 労働契約を会社から一方的に終わらせる | 解雇の日付、理由、予告の有無(30日前の予告か、予告手当か) |
| 退職勧奨 | 辞めてほしいと持ちかけ、同意を求めている | 辞める日や条件の提示があるか、返事の期限があるか |
| 出勤停止・自宅待機 | 一時的に出社を止める(調査、処分、人員調整など) | 理由、期間、その間の賃金、いつ戻れるのか |
解雇は、会社が一方的に労働契約を終わらせるものです。有効かどうかは労働契約法第16条が定めていて、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は権利の濫用として無効になります。会社は解雇を告げるとき、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法第20条)。厚生労働省の説明では、たとえば解雇の10日前に予告した場合は、不足する20日分の平均賃金を支払います。
退職勧奨は、会社が「辞めてほしい」と持ちかけるもので、応じるかどうかは労働者が決めます。応じなければ退職にはなりません。解雇との違いは、会社が終わらせるのか、本人が同意して終わるのかにあります。細かく比べたいときは解雇・退職勧奨・自己都合退職の違いを読んでください。
その場でやること:言わないことと、残すこと
言われたその場では、判断をしないことが一番の守りです。感情的になる場面ですが、次の順で動きます。
- 「辞めます」「分かりました」と答えない。答えるなら「突然のことなので、内容を書面でいただけますか」まで
- 退職届・合意書・「退職願」への署名を求められても、その場では書かない
- 言われた日時、場所、言った人、その場にいた人、言葉そのものをメモする(録音できる状況なら録音も選択肢。方法はパワハラの録音の仕方にあります)
- 荷物やパソコンを片づけるよう言われたら、何を持ち出したか、何を置いてきたかを記録する
- 当日中に、次の節の文例でメールを送る
特に4つ目は見落とされがちです。社員証を回収された、システムのIDを止められたといった事実は、会社が解雇として扱っていることを示す材料になります。写真やスクリーンショットが取れる範囲で残してください。
書面で確かめる質問と、働く意思を伝える文例
質問は、会社の意図を答えさせる形にします。「解雇ですか」とだけ聞くと、「そうではない」と曖昧に返されて終わることがあるので、選択肢を並べて聞きます。
メールの例:件名「本日の○○部長のお話について(確認のお願い)」/本文「本日○月○日、○○部長から『明日から来なくていい』とのお話がありました。このお言葉の趣旨を確認させてください。①解雇という趣旨か、②退職のお願い(退職勧奨)という趣旨か、③一時的に出社を控えるようにという趣旨か、ご回答ください。解雇の場合は、解雇の日付と理由を書面でいただけますでしょうか。③の場合は、期間と、その間の賃金の取り扱いをお知らせください。お返事をいただくまでは、通常どおり勤務できる状態で待機いたします。」
あわせて、辞める意思がないことも文字にしておきます。同意していないことを残すと、あとで「納得して辞めた」と言われにくくなります。
働く意思を伝える例:「私は退職に同意しておらず、引き続き勤務する意思があります。出社を控えるようご指示がある場合は、その理由と期間を書面でお知らせください。」
送る相手は、言った本人だけでなく、人事や総務の窓口も入れます。社内に窓口がないときは、直属の上司の上司を宛先に加えます。返事が来ない場合も、送った事実が残ります。
解雇だと分かったら:予告手当・理由証明書・賃金
返事で「解雇」と示されたら、次の請求ができます。いずれも請求しなければ会社が自動で出すとは限らないので、自分から求めます。
- 解雇予告手当:予告なしの即日解雇なら30日分以上の平均賃金。ただし、試用期間中の人は、働き始めて14日を超えると予告の対象になります。契約期間が2か月以内の人など、例外もあります(労働基準法第21条)。詳しい計算は解雇予告手当とはで扱います
- 解雇理由証明書:予告された日から退職日までの間に請求すると、会社は遅滞なく交付します(労働基準法第22条第2項)。予告がなく即日で解雇された場合も、退職証明書(同条第1項)なら、退職の事由として解雇の理由を書いてもらえます。どちらの書面で請求できるか迷うときは、労働基準監督署に確かめます。モデル様式を使った請求の文例は解雇理由証明書の請求方法にあります
- 賃金:出社を止められた期間の賃金は、休業手当(平均賃金の6割以上)の対象になる場合があり、民法第536条第2項によって全額を求められる考え方もあります。どちらに当たるかは事情次第なので、書面で理由を確かめたうえで窓口に相談します
なお、予告手当を払えば解雇が有効になるわけではありません。有効かどうかは、先ほどの労働契約法第16条の問題として別に判断されます。労働基準監督署は、予告手当の不払いのような労働基準法違反は扱いますが、解雇の有効・無効そのものは判断しません。
辞めさせられた事実を、離職票とあとの手続きに結びつける
会社に離職票(離職証明書)の理由欄を「自己都合」「一身上の都合」と書かれると、失業保険の給付で不利になることがあります。ハローワークの特定受給資格者の範囲には、解雇による離職(重大な責めに帰すべき理由による解雇を除く)や、退職勧奨を受けた離職が含まれます。離職理由に納得できないときは、ハローワークに相談すると、事実関係を調べて判定し直してもらえます。そのときに役立つのが、今回残したメールとメモです。
退職勧奨として扱われそうな場合は、条件の確かめ方を退職勧奨をされたらで、離職票の見方を退職勧奨で辞めたら会社都合になる?で確認できます。
相談先とパワハラが背景にあるとき
解雇なのか退職のお願いなのかが整理できたら、次は相談です。身近な入口は、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーです。予約不要・無料で、解雇や雇止めなど労働問題全般を聞いてもらえます(総合労働相談コーナーとは?)。電話番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧にまとめています。解雇の有効性や金銭面の交渉は弁護士の領域なので、費用が気になる場合は法テラスでパワハラを相談するにはにある無料法律相談も使えます。
パワハラへの相談や申告をしたあとに「来なくていい」と言われた場合は、相談を理由にした不利益な取扱いの禁止(労働施策総合推進法第31条第2項)が関わってきます。その場合の動き方はパワハラを相談したら解雇されたで扱います。暴言を伴う言い方だったなら、言葉をそのまま書き留めた記録が、別の場面でも役に立ちます。
よくある質問
Q. 口頭で「来なくていい」と言われただけでも、解雇になってしまいますか?
言われた事実だけで、解雇が有効か無効かが決まるわけではありません。解雇が有効かどうかは、労働契約法第16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」で見られ、最終的には裁判所が判断します。一方で、その言葉を会社が解雇として扱うのか、一時的な出勤停止なのかを確かめないまま時間が過ぎると、あとで「合意して辞めた」と主張される余地が生まれます。言われた日のうちに、書面で意味を聞いてください。
Q. 出社しなくていいと言われた期間の給料は、もらえますか?
会社の都合で働けない期間は、平均賃金の6割以上の休業手当(労働基準法第26条)の対象になり得ます。さらに、会社に責任があって働けない場合は、民法第536条第2項により賃金全額を請求できるという考え方もあります。どちらに当たるかは理由や事情で変わるので、「出社しなくてよい理由」と「期間」と「その間の賃金の扱い」を書面で聞くところから始めます。
Q. 言われた翌日に出社しなかったら、無断欠勤になりませんか?
会社から出社を止められているなら、出社しなかったことをもって一方的に欠勤とは言いにくくなります。ただし、本当に出社を止められたのかは、あとで争いになりやすい点です。「出社を禁じるという趣旨ですか」と書面で確認し、返事が来るまでは出社できる状態で待つ、入館できなかったら日時を記録する、という二つを守ると経緯が残ります。
出典・参考にした公的な情報
- 労働契約法 第16条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第20条・第21条・第22条・第26条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第536条第2項(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働契約の終了に関するルール(解雇予告・解雇権濫用法理)(厚生労働省)
- 確かめよう労働条件 Q&A「退職証明書を請求できますか」(厚生労働省)
- 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲(ハローワーク)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。