休職中の傷病手当金と社会保険料・住民税:免除はなく払い方は会社に確認
この記事のもくじ
休職中も、健康保険と厚生年金の保険料(本人負担分)はかかり続けます。病気やけがによる休職には、育児休業や産前産後休業のような保険料の免除がないためです。給与が出ない月は天引きができないので、会社に振り込む、会社が立て替えて復職後に精算するなど、払い方を会社と決める必要があります。住民税も前の年の所得にかかるため、休職中も払う必要があります。一方、傷病手当金そのものには所得税も住民税もかかりません。
休職中も社会保険料はかかる:免除がない理由
会社員の健康保険料と厚生年金保険料は、被保険者と会社が半分ずつ負担し、会社がまとめて納める仕組みです(健康保険法161条、厚生年金保険法82条)。休職しても会社に籍があるあいだは被保険者のままなので、保険料は毎月発生します。
保険料を「徴収しない」特例が法律に置かれているのは、次の2つの休業だけです。
- 育児休業等(健康保険法159条、厚生年金保険法81条の2)
- 産前産後休業(健康保険法159条の3、厚生年金保険法81条の2の2)
パワーハラスメント(パワハラ)による心身の不調を含め、病気やけがで休職する場合に保険料を免除する同じような特例はありません。給与がゼロでも、保険料は標準報酬月額をもとに「各月につき」決まる(健康保険法156条)ため、本人負担分を何らかの形で払うことになります。
休職中に何がかかり、何がかからないかを表にまとめます。
| 項目 | 休職中(給与なし)の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 健康保険料(40〜64歳は介護保険料を含む) | かかる。本人負担は半分 | 健康保険法156条・161条 |
| 厚生年金保険料 | かかる。本人負担は半分 | 厚生年金保険法82条 |
| 雇用保険料 | 支払われた賃金に率を掛けて計算するため、賃金のない月は差し引く元がない | 労働保険徴収法11条 |
| 住民税 | かかる。前の年の所得に対する税 | 総務省「個人住民税」 |
| 所得税 | 傷病手当金にはかからない | 健康保険法62条 |
なお、休職中でも給与の一部が出る会社では、その給与から保険料が天引きされます。給与が出ているあいだの傷病手当金の扱いは、正本の休職中の傷病手当金の条件と金額の計算で確かめてください。
給与が出ないときの払い方:会社に確かめる5つの項目
会社が本人負担分を給与から差し引けるのは「報酬を支払う場合」です(健康保険法167条、厚生年金保険法84条)。給与が出ない月は差し引けないため、会社は本人負担分を別の方法で受け取ることになります。どの方法かは会社ごとに決まっているので、休職が始まる前後に、人事・総務へ次の5つを聞いておくと後で慌てずに済みます。
- 払い方:毎月会社の口座へ振り込むのか、会社がいったん立て替えて復職後の給与で精算するのか
- 金額:毎月いくらか(健康保険・介護保険・厚生年金の内訳)
- 期日:毎月何日までに払うのか、振込手数料はどちらが持つのか
- 住民税の扱い:給与から引けない月の住民税をどう納めるのか
- 窓口:払い方を変えたいときや遅れそうなときに連絡する担当者
立て替えの形をとる場合は、休職が長引くほど復職後にまとめて精算する額が大きくなります。精算の方法(一括か分割か)も、この時点で文書かメールで確かめておくと安心です。
聞くときのメールの例です。
文例:「休職中の社会保険料と住民税の納め方について確認させてください。給与の支給がない月の本人負担分は、どのような方法で、毎月いつまでにお支払いすればよいでしょうか。金額の内訳もあわせて教えていただけますと助かります。」
休職中の会社との連絡の頻度や窓口の決め方は休職中の会社への連絡と経過報告のメール例文にまとめています。
- 給与の支給があるか(全額・一部・なし)を就業規則と会社の案内で確かめる
- 支給がない月:社会保険料の本人負担分の払い方(振込/立て替え後に精算)と期日を聞く
- 住民税:給与から引けない月の納め方を会社と市区町村に確かめる
- 傷病手当金の振込日と、会社への支払日の順番を家計表に書く
- 復職・退職の時点で、立て替え分の残りと精算方法を確かめる
住民税:前の年の所得にかかるので休職中も続く
住民税は、その年の1月1日に住んでいる市区町村で、前の年の所得をもとに翌年度に課税されます(総務省「個人住民税」)。休職して今の収入が減っても、今年度の住民税は去年働いて得た所得で決まっているため、休職中も払い続けることになります。
会社員の住民税は、通常は会社が毎月の給与から差し引いて納める「特別徴収」です。地方税法321条の5は、会社が給与を払う際に毎月徴収して納めると定めています。給与が出ない休職中は差し引く元がないので、次のどの形になるかを会社に確かめます。
- 会社が立て替えて納め、本人が会社に払う(または復職後に精算する)
- 本人が毎月会社に振り込み、会社が納める
- 市区町村から届く納付書で本人が納める形に切り替える
どれが使えるかは会社の事務の扱いと市区町村の手続きによるので、会社で分からないと言われたら、住民税を担当する市区町村の窓口に相談します。
翌年度の住民税は、休職した年の所得をもとに計算されます。傷病手当金は課税されない(健康保険法62条)ため所得に入らず、給与が減った分、翌年度の住民税は下がる方向になります。反映されるのは翌年度の分で、特別徴収なら6月から翌年5月に引かれる額です(地方税法321条の5)。今年度に払う額が休職によって下がるわけではない点は、家計を組むときに押さえておきます。
傷病手当金から払うときの家計の組み立て
給与が出ないあいだの収入の柱は、健康保険の傷病手当金です。1日あたりの額は「支給開始日以前の直近12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2」です(健康保険法99条2項、端数処理あり)。手取りの3分の2ではない点に注意します。
協会けんぽの計算例では、標準報酬月額の平均17万円で1日3,780円です。これを使って、保険料の支払いを含めた家計を組んでみます(筆者の計算)。
| 項目 | 金額の考え方 |
|---|---|
| 傷病手当金(30日分) | 3,780円×30日=113,400円 |
| 会社に払う社会保険料 | 直近の給与明細の「健康保険」「厚生年金」欄の合計が目安 |
| 住民税 | 給与明細の「住民税」欄の月額が目安 |
| 残り | 生活費に回せる額 |
組み立てるときのポイントは3つです。
- 入る時期と出る時期をずらさない。 傷病手当金は申請してから支払われるので、最初の振込までに保険料の支払日が来ることがあります。最初の1〜2か月分を払える現金を確保するか、会社に支払日の調整を相談します。申請から支給までの流れは休職中の傷病手当金の申請方法で扱っています。
- 給与明細の額は目安にとどめる。 保険料は標準報酬月額が見直されると変わるので、正確な額は会社に聞きます。
- 足りないと分かったら早めに動く。 支払いが難しいと分かった時点で会社に相談し、生活費そのものが足りないときは休職中でお金がないときの公的な貸付・支援制度を確かめます。
休職中の給与と保険料・税金について、よくある分かれ道
最後に、休職中の人がつまずきやすい場面を3つ挙げます。
有給休暇を使っているあいだ。 有給休暇の日は給与が出るので、保険料と住民税はいつもどおり給与から引かれます。その日は傷病手当金が出ない(差額を除く)点も含め、順番の考え方はパワハラ休職の前に有給を使うときの傷病手当金との順番で扱っています。
パワハラが原因で労災を申請するとき。 労災保険の休業補償給付を受ける場合でも、会社に籍がある限り健康保険・厚生年金の被保険者であることは変わりません。傷病手当金と労災のどちらを使うかは、次の記事のパワハラの休職は傷病手当金と労災のどちらかで比べています。
休職中に退職するとき。 退職すると会社の健康保険と厚生年金を抜け、保険と年金の切り替えを自分で行います。療養を続ける人は、退職後も傷病手当金を受け取れる条件(退職日まで1年以上加入しているか、退職日に受け取れる状態か)を先に確かめます。詳しくは休職から退職後も傷病手当金を受け取る条件へ。休職中の給与そのものがどうなるかは前の記事のパワハラ休職中の給与は出るかにまとめています。
よくある質問
Q. 傷病手当金に所得税や住民税はかかりますか?
かかりません。健康保険法62条は、保険給付として受け取ったお金を標準として税金などを課すことはできないと定めています。そのため傷病手当金は、所得税の計算にも翌年度の住民税の計算にも含まれません。
Q. 休職中の社会保険料を会社に払えないときはどうすればいいですか?
払えないまま放っておかず、早めに人事・総務へ「今月は払えない」「いつなら払える」と伝え、復職後の給与からの精算や分割などの相談をします。生活費そのものが足りないときは、公的な貸付や相談窓口を先に確かめてください。
Q. 休職中に退職したら保険料はどうなりますか?
退職すると会社の健康保険と厚生年金の被保険者ではなくなり、任意継続・国民健康保険・家族の扶養のどれかと、国民年金への切り替えを自分で選んで手続きします。療養中に辞める場合は、退職後も傷病手当金を受け取れる条件を先に確かめておくことが大切です。
出典・参考にした公的な情報
- 健康保険法 第62条・第99条・第156条・第159条・第159条の3・第161条・第167条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 厚生年金保険法 第81条の2・第81条の2の2・第82条・第84条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第321条の5(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人住民税(総務省)
- 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。