職場のモラハラとは?パワハラとの違いと受けたときの整理の仕方
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職場のモラハラ(モラル・ハラスメント)は、言葉や態度で相手の人格や尊厳を傷つける嫌がらせを指して使われる言葉ですが、法律や厚生労働省の指針の用語ではありません。そのため、会社や労働局に相談するときは、「パワハラ(パワーハラスメント)」「いじめ・嫌がらせ」「セクハラ」などの、制度上の言葉に置き換えると、使える窓口や手続きがはっきりします。この記事では、モラハラとパワハラの違いを置き換えの表で示し、受けたときに何をどの順で整理すればよいかをまとめます。
職場のモラハラとは:法律の言葉ではないが、相談はできる
モラハラという言葉で語られることが多いのは、次のような言動です。
- 人前で失敗をあげつらう、嫌味や皮肉を繰り返す
- 挨拶や話しかけを無視する、自分だけ会話から外される
- 業務の連絡を回さない、会議に呼ばない
- 私生活を詮索し、噂を広める
- ため息や舌打ち、冷たい態度で萎縮させる
暴力のように目に見える攻撃ではなく、一つひとつは小さく見える言動が積み重なるのが特徴です。だからこそ「これくらいで相談していいのか」と迷いやすく、我慢が長引きがちです。
法律の側から見ると、パワハラは労働施策総合推進法 第31条で、会社に防止の措置が義務づけられています。厚生労働省のパワハラ指針が挙げる6つの類型のうち、「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」「過小な要求」は、モラハラと呼ばれる言動と重なる部分が大きい類型です。また、全国の総合労働相談コーナーは、パワハラに限らず「いじめ・嫌がらせ」も相談の対象にしています。モラハラという言葉がそのまま法律にないことは、相談できないという意味ではありません。
パワハラとの違い:どの言葉に置き換えるかで窓口が変わる
同じ「モラハラ」でも、相手が誰か、どんな言動かによって、当てはまる制度が変わります。置き換えの目安は次のとおりです。
| 置き換える言葉 | 当てはまりやすい場面 | 根拠 | 社外で使える手続きの例 |
|---|---|---|---|
| パワハラ | 上司、または業務上頼らざるを得ない同僚や集団からの言動 | 労働施策総合推進法 第31条・パワハラ指針 | 労働局長の助言・指導・勧告、紛争調整委員会の調停(会社の措置をめぐる紛争) |
| いじめ・嫌がらせ | 優越的な関係がはっきりしない同僚間の言動など | 個別労働紛争解決促進法 | 労働局長の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん(相手は会社) |
| セクハラ | 性的な言動 | 男女雇用機会均等法 第11条 | 雇用環境・均等部(室)での相談、調停 |
| マタハラ・育休等のハラスメント | 妊娠・出産・育児休業などに関する言動 | 均等法 第15条、育児・介護休業法 第25条 | 雇用環境・均等部(室)での相談、調停 |
| カスハラ | 客や取引先からの言動 | 労働施策総合推進法 第33条 | 雇用環境・均等部(室)での相談、調停 |
パワハラに当たるかは、指針の3要素、つまり①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就業環境が害されるもの、のすべてを満たすかで見ます。①の「優越的な関係」は上司だけに限りません。業務に必要な知識や豊富な経験を持ち、その協力がなければ仕事が回らない同僚や部下、抵抗が難しい同僚の集団からの言動も含まれます。詳しくは「優越的な関係」とは?同僚・部下からでもパワハラになりうる場面で扱っています。
なお、労働局の手続きは、加害者個人を相手にするものではなく、会社との間の紛争を扱うものです。あっせんの対象外として、厚生労働省は「労働者同士の紛争」を挙げています。どちらの手続きになるかは、相談の際に労働局が振り分けてくれます。
モラハラを受けたときの整理の仕方:4つの手順
「モラハラかどうか」を自分で決める必要はありません。相談先が判断しやすい材料をそろえることが、自分を守る近道になります。
- 出来事を事実で書く。 日時、場所、相手、言われた言葉はできるだけそのまま、その場にいた人、自分への影響(眠れない、仕事が手につかない等)を分けて書きます。書き方の型はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきにあります。
- 言動を群に分ける。 言葉、態度、情報や仕事の遮断、孤立、私生活への干渉、の5つに分けると、どの類型に近いかが見えてきます。分け方は職場のモラハラチェックリスト:言葉・態度・孤立の25項目で整理で使えます。
- 相手との関係を書く。 上司か、同僚か、その人がいないと仕事が進まない関係か、何人で行っているか。パワハラとして扱われるか、いじめ・嫌がらせとして扱われるかの分かれ目になります。
- 相談先を選ぶ。 社内の相談窓口や上司の上司から始め、動いてもらえないときは社外の窓口へ、という順が一般的です。
文例(社内の窓口へのメール):「○月から、同じ部署の○○さんから、業務連絡を私にだけ回さない、朝礼で私の失敗を繰り返し取り上げる、といった言動が続いています。日付ごとの記録があります。一度、お話を聞いていただける時間をいただけないでしょうか。」
- 相手は上司、または頼らざるを得ない同僚・集団 → パワハラとして相談
- 相手は同僚で、上下や依存の関係がはっきりしない → いじめ・嫌がらせとして相談
- 性的な言動 → セクハラ/妊娠・育休に関する言動 → マタハラ等
- 客・取引先から → カスハラ
- どれか迷う → 総合労働相談コーナーで、事実を話して振り分けてもらう
モラハラと感じても、指針で「該当しない例」とされるもの
整理の途中で、「これは指導の範囲かもしれない」と迷う場面もあります。パワハラ指針は、該当しないと考えられる例として、たとえば次のものを挙げています。
- 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない人に、一定程度強く注意すること
- 育成のために、いまより少し高いレベルの業務を任せること
- 能力に応じて、一定程度業務の内容や量を軽くすること
- 配慮を目的として、家族の状況などを聞き取ること
指針は、就業環境が害されるかを「平均的な労働者の感じ方」を基準に判断するとしています。本人がつらいと感じたことだけで決まるわけではない、という意味です。ただし同じ指針は、会社の相談窓口に対して、該当するか微妙な場合でも広く相談に応じるよう求めています。指導との境目に迷う段階でも、相談すること自体はためらわなくて大丈夫です。指導との線引きはパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目を指針の言葉で整理で詳しく扱っています。
相談先と、その先の選択肢
社内で相談できる先は、上司、上司の上司、人事、ハラスメント相談窓口、労働組合などです。会社には、相談に応じて事実を確かめ、被害を受けた人への配慮や再発防止の措置を講じる義務があり、相談したことを理由に不利益な扱いをすることは禁じられています。
社外では、総合労働相談コーナーが、予約不要・無料で、いじめ・嫌がらせやパワハラを含む労働問題の相談を受けています。都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)は、パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラの相談や、助言・指導・調停の申出を受け付けています。番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表を見てください。
年上の同僚からの嫌味や無視に悩んでいる場合は職場のおばさんのモラハラ:年上女性の嫌味・無視を受けたときの対処、加害者がどう処分されるのかを知りたい場合は職場のモラハラ加害者は処分される?懲戒の仕組みと被害者ができることへ進んでください。眠れない、朝になると体が動かないといった状態が続いているなら、パワハラでうつかもと思ったら:心身のサインと受診・休む順番を先に読んでください。
よくある質問
Q. 会社の窓口に「モラハラを受けています」と言っても通じますか?
通じることが多いですが、言葉より中身が伝わることが大切です。「○月から、毎朝の打合せで○○さんに『使えない』と人前で言われ、業務の連絡も私にだけ回ってきません」のように、日時・言葉・行為で話すと、窓口の担当者が指針に当てはめて動きやすくなります。
Q. 相手に直接「やめてください」と言ったほうがいいですか?
言える関係で、身の危険がなければ、短く伝えるのも一つの方法です。ただ、言い返したことで関係がこじれる心配があるなら、無理に一人で向き合う必要はありません。会社には相談に応じる体制を整える義務があるので、記録をそろえて上司や窓口に間に入ってもらう方が負担は小さくなります。
Q. 自分の受け止め方が過敏なだけかもしれず、相談をためらっています。
パワハラ指針は、判断の物差しとして「平均的な労働者の感じ方」を使うとしながら、会社の窓口には、該当するか微妙な場合も広く相談に応じるよう求めています。過敏かどうかを自分で決めてから相談する必要はありません。判断は窓口に任せ、事実を伝えることに集中しましょう。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別労働紛争解決制度(助言・指導・あっせん)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。