セクハラとパワハラの違いは?法律・相談先・会社の義務を比較
セクハラとパワハラの違いは、まず根拠の法律です。セクハラは男女雇用機会均等法11条、パワハラは労働施策総合推進法31条が、それぞれ会社に防止の措置を義務づけています。中身の違いでいちばん大きいのは、セクハラが「性的な言動」であれば同僚・部下・取引先・顧客からでも当たりうるのに対し、パワハラは「優越的な関係を背景とした言動」であることが要件になっている点です。相談先は重なっており、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)がどちらも受け付けています。
セクハラとパワハラの違い:比較表
最初に、法律・定義・相談先・紛争解決の手続を1つの表で並べます。条番号は2026年10月1日施行の改正後の番号です(パワハラの措置義務は、改正前は30条の2でした)。
| 項目 | セクハラ | パワハラ |
|---|---|---|
| 根拠の法律 | 男女雇用機会均等法11条 | 労働施策総合推進法31条 |
| 指針 | 平成18年厚生労働省告示第615号 | 令和2年厚生労働省告示第5号 |
| 何をめぐる言動か | 性的な言動(性的な発言・性的な行動) | 優越的な関係を背景とした言動 |
| 成り立つ要素 | 拒否したことで不利益を受ける(対価型)か、就業環境が害される(環境型) | ①優越的な関係 ②業務上必要かつ相当な範囲を超える ③就業環境が害される、の3つを全て満たす |
| 行為者 | 事業主・上司・同僚のほか、取引先、顧客、患者やその家族なども | 職務上の上位者が典型。知識や経験で優位な同僚・部下、集団での行為も |
| 業務上の必要性 | 定義の要素に入っていない(性的な言動かどうかが入口) | 業務上必要かつ相当な範囲の指導は該当しない |
| 社外の相談先 | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 総合労働相談コーナー、雇用環境・均等部(室) |
| 労働局の手続 | 労働局長の援助(23条)、調停(24条) | 労働局長の援助(36条)、調停(37条) |
| 会社への制裁 | 勧告に従わなければ公表(36条)、報告拒否・虚偽報告は20万円以下の過料(39条) | 勧告に従わなければ公表(42条)、報告拒否・虚偽報告は20万円以下の過料(51条) |
表のとおり、会社に求められる措置の骨組み(方針の明確化と周知、相談体制、事後の対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止)は、両方の指針でほぼ同じです。違うのは「どんな言動が対象になるか」の入口の部分です。それぞれの定義をもう少し詳しく知りたい場合は、セクハラとはとパワハラとはで指針の言葉を確かめてください。
定義の違い:「性的な言動」と「優越的な関係」
セクハラの定義の中心は「性的な言動」です。指針は、性的な事実関係を尋ねる、性的な情報を意図的に流す、といった発言と、性的な関係の強要、必要なく身体に触る、わいせつな図画を配る、といった行動を挙げています。上下関係は要件に入っていないので、同期の同僚、後輩、取引先の担当者、来店した顧客からの言動でも、職場で行われた意に反する性的な言動であれば対象になりえます。
パワハラは、3つの要素を全て満たすものと定義されています。優越的な関係とは、抵抗や拒絶ができない可能性が高い関係のことで、上司のほか、業務に必要な知識や経験を持ち協力を得ないと仕事が回らない同僚・部下や、集団での行為も含まれます。さらに、業務上必要かつ相当な範囲を超えていることが求められ、適正な業務指示や指導は当たりません。
この違いから、相談のときに整理しておきたい点も変わります。
| 相談前に書き出すこと | セクハラの場合 | パワハラの場合 |
|---|---|---|
| 言動の中身 | 性的な発言・接触・画像などをそのまま | 言葉・態度・指示の内容をそのまま |
| 相手との関係 | 社内か社外か、立場(取引先・顧客を含む) | 上下関係、相手の協力なしに仕事が回るか |
| 業務との関係 | 業務の場か、業務の延長の場か | 指導の目的があったか、業務の必要性・頻度・手段 |
| 影響 | 拒んだ後の人事上の扱い、就業意欲・体調 | 仕事・体調への支障 |
両方に当たりうるときと、境目の例
1つの言動がセクハラとパワハラの両方の性質を持つこともあります。セクハラの指針は、セクハラがパワハラや妊娠・出産等に関するハラスメントなどと複合的に生じることも想定し、相談窓口を一体にして一元的に応じる体制を整えることが望ましいとしています。どちらに当たるかを相談する側が決めておく必要はありません。
境目の考え方として、指針の書き分けを知っておくと整理がしやすくなります。
- 上司が性的な関係を求め、断ったら担当を外された:セクハラの対価型の例に近い。上司からの言動なのでパワハラの性質も帯びる
- 性的指向やジェンダーアイデンティティをからかう、侮辱する:パワハラ指針は「精神的な攻撃」の例に、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を含めている
- 性的指向や病歴を本人の了解なく他の人に話す:パワハラ指針の「個の侵害」の例。性的な発言とは別の枠で扱われる
- 「女なんだから」「男のくせに」といった決めつけ:セクハラの指針は、性別役割分担意識に基づく言動がセクハラの原因や背景になりうるとし、会社が周知するよう求めている
- 顧客からの性的な言動:セクハラの指針の行為者に顧客が入っている。カスハラの対策とも重なるのでカスハラとはも参考になる
どの枠で受け付けるかは窓口が判断します。相談する側は「何が、いつ、誰から」を具体的に伝えることに集中すれば足ります。
相談先と紛争解決の手続の違い
社内では、多くの会社でハラスメントの相談窓口が共通になっています。社外の公的な窓口は、セクハラは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、パワハラは総合労働相談コーナーと雇用環境・均等部(室)が案内されています。どちらも相談は無料で、匿名でも相談できると厚生労働省は案内しています。窓口ごとの電話番号と開いている時間は、パワハラの相談窓口一覧で比べられます。
会社との話し合いで解決しないときの手続も、法律ごとに用意されています。
- 労働局長の援助:当事者の一方または双方の求めで、労働局長が助言・指導・勧告をする(セクハラは均等法23条、パワハラは労働施策総合推進法36条)
- 調停:紛争調整委員会が調停を行い、調停案を作って受諾を勧告できる(セクハラは均等法24条、パワハラは同法37条で、手続は均等法の規定を準用)
- 不利益取扱いの禁止:援助を求めたこと、調停を申請したことを理由とする解雇その他の不利益な扱いは、どちらの法律でも禁じられている
ここで対象になるのは、会社が措置を講じたか、相談を理由に不利益に扱ったかといった、労働者と会社の間の争いです。どちらの法律も、措置義務に関する紛争は個別労働関係紛争解決促進法のあっせんではなく、この援助・調停の仕組みで扱うと定めています(均等法22条、労働施策総合推進法35条)。手続の流れは労働局の助言・指導と調停で、あっせんとの使い分けは労働局の調停とあっせんの違いで説明しています。
次にすること:被害の整理から始める
どちらに当たるか迷っている段階なら、まず記録を作るところから始められます。言動の日時・場所・言葉・その場にいた人、自分の反応、その後の人事上の扱いや体調の変化を、出来事ごとに書き残してください。メールやチャットはスクリーンショットだけでなく、日付が分かる形で保存しておくと、窓口で説明しやすくなります。
会社への申し出の順番や文面の例はセクハラを受けたときの対応に、言葉の型ごとの整理はセクハラになりうる発言の例にまとめています。マタハラやカスハラなど他のハラスメントとの違いもあわせて知りたい場合は、職場のハラスメントの種類一覧が入口になります。
よくある質問
Q. 同僚や部下からの性的な言動もセクハラになりますか?
なりえます。セクハラの指針は、性的な言動をする側を事業主・上司・同僚に限らず、取引先や顧客なども含めて書いており、パワハラのような「優越的な関係」を要件にしていません。職場で行われた意に反する性的な言動かどうかが出発点になります。
Q. セクハラとパワハラのどちらか分からないまま相談してもいいですか?
かまいません。指針は会社に、セクハラとパワハラなどの相談窓口を一体にして一元的に応じる体制を整えることを望ましいとしています。社外でも、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)がどちらの相談も受けており、話を聞いたうえで手続を案内してもらえます。
Q. セクハラにもパワハラにも罰則はありますか?
どちらの法律も、ハラスメントの行為そのものに刑罰を定めてはいません。会社が措置を講じず勧告にも従わない場合の企業名の公表と、報告をしない・虚偽の報告をした場合の20万円以下の過料が定められています。行為者個人の責任は、民法や刑法など別の法律で問われることがあります。
出典・参考にした公的な情報
- 男女雇用機会均等法 第11条・第22条〜第24条・第36条・第39条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第38条・第42条・第51条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- セクシュアルハラスメント指針(平成18年厚生労働省告示第615号)【令和8年10月1日適用】(厚生労働省)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針本文 令和8年10月1日適用時点を収録)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。