同僚からのパワハラへの対処:上下関係がなくても相談できる場合
この記事のもくじ
同僚からの嫌がらせでも、パワーハラスメント(パワハラ)として会社に相談できる場合があります。厚生労働省のパワハラ指針は、同僚や部下からの言動でも、業務に必要な知識や経験を握っていて協力がないと仕事が回らない相手や、抵抗が難しい集団からのものを「優越的な関係」の例に挙げているからです。どちらにも当たらなくても、職場のいじめ・嫌がらせとして社内外に相談する道は残ります。この記事では、相手が同僚のときに使える記録の取り方と、上司への伝え方、社外へ出す順番を手順で示します。
同僚からでもパワハラとして相談できる2つの場合
パワハラ指針の定義は、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就業環境が害されるもの、の3つを全て満たすものです。同僚の場合に迷うのは①ですが、指針は①の例として次の3つを挙げています。
| 指針の例 | 同僚に置き換えた場面 | 記録に書いておくこと |
|---|---|---|
| 職務上の地位が上位の者による言動 | 同僚でも班長・リーダーとして仕事を割り振る立場の人 | 相手が持つ権限(シフト、担当の割り振り、評価への意見) |
| 同僚または部下で、業務上必要な知識や豊富な経験を持ち、その協力がないと業務の円滑な遂行が困難な者による言動 | 取引先との窓口やシステムを一人で握る同僚が、必要な情報を渡さず失敗を責める | 相手が握っている情報と、それがないと止まる自分の仕事 |
| 同僚または部下からの集団による行為で、抵抗または拒絶が困難なもの | 数人で示し合わせて話しかけない、連絡のグループから外す | 加わった人数と顔ぶれ、止めに入る人がいたか |
上下関係がない一対一の嫌がらせで、相手に特別な知識もない場合は、①に当たりにくくなります。それでも、言動の中身が暴言や仕事の妨害であれば、会社に事実の確認と対応を求めることはできます。なお、厚生労働省の解釈事項(問45)は、都道府県労働局が個々の事案がハラスメントに当たるかを判断することはなく、事実関係の確認は事業主の義務だとしています。相談する前に「パワハラかどうか」を自分で決めておく必要はないということです。優越的な関係の考え方は「優越的な関係」とは?同僚・部下からでもパワハラになりうる場面で詳しく扱っています。
手順1:同僚ならではの項目を足して記録する
上司からの言動と違い、同僚からの嫌がらせは「仲が悪いだけ」と受け取られやすい傾向があります。記録には、出来事そのものに加えて、関係と業務への影響が分かる項目を足しておきます。
- 日時・場所・相手・言葉やされたこと:言葉は要約せず、聞いたとおりに書く
- その場にいた人と反応:同調して笑った人、黙っていた人、後で声をかけてくれた人
- 相手の立場と影響力:担当業務、握っている情報、上司との距離
- 業務への影響:締切に遅れた、やり直しになった、顧客対応が止まった
- 自分がしたこと:言い返したか、上司に報告したか、その後どうなったか
記録はその日のうちに、自分の私物のノートや端末に残します。チャットやメールでの嫌がらせは、画面を日時が入る形で保存しておきます。書き方の細かな例はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきを見てください。
手順2:上司には「業務の支障」から伝える
記録が2〜3週間分たまったら、まず直属の上司に伝えます。同僚とのトラブルは「当人同士で解決して」と返されがちなので、感情より先に、業務がどう止まっているかを話し、会社にしてほしいことを具体的に頼むのがこつです。
文例(面談の冒頭):「〇〇さんとの業務の進め方でご相談があります。この1か月、案件の引き継ぎ資料を共有してもらえず、確認のたびに『自分で調べて』と言われています。日付ごとの記録をお持ちしました。業務が止まらないよう、情報の共有の仕方を決めていただけないでしょうか。」
文例(面談の後に送るメール):「本日はお時間をいただきありがとうございました。お伝えした〇〇さんとの件、記録の写しを添付します。共有のルールについて、来週中にご判断いただけると助かります。」
頼む内容は、次のような「会社が決められること」にすると話が進みやすくなります。
- 業務連絡や資料の共有を、チャットの決まったグループで行うルールにする
- 担当の分け方や席の配置を見直す
- 上司が同席する場で業務の分担を確認する
上司と相手の同僚が親しい、または上司が取り合ってくれないときは、上司の上司や社内のハラスメント相談窓口に移ります。伝え方はパワハラを上司の上司に相談するとき:伝え方の文例とメールの型にまとめています。相手が同僚でも、会社の相談体制の整備義務は変わらず、相談したことや事実確認に協力したことを理由とする不利益な扱いも禁じられています(労働施策総合推進法第31条)。
手順3:社内で動かないときの社外の窓口
社内で対応がないときは、都道府県労働局の窓口に相談できます。同僚の言動がパワハラの3要素に当たりうるかどうかで、使う手続が分かれます。
| 整理 | 主な窓口 | 使える手続 | 相手方 |
|---|---|---|---|
| パワハラの3要素に当たりうる(会社が措置を講じたかの問題) | 雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー | 労働局長の助言・指導・勧告、紛争調整委員会の調停(労働施策総合推進法36条・37条) | 会社 |
| 3要素に当たるか迷う・当たりにくいいじめ・嫌がらせ | 総合労働相談コーナー | 労働局長の助言・指導、紛争調整委員会のあっせん(個別労働紛争解決促進法) | 会社(労働者同士の紛争は対象外) |
| 同僚本人の責任を問いたい | 弁護士 | 民事の請求など(個別に相談) | 同僚個人 |
どちらの手続になるかは、相談を受けた労働局が振り分けるので、迷ったまま相談してかまいません。窓口の番号と受付時間はパワハラの相談窓口一覧に、手続の違いは労働局の調停とあっせんの違いにあります。
「同僚を訴えたい」と考えたときは、労働局の手続はどれも会社を相手にするものだという点を先に押さえておきます。加害者個人と会社のどちらにどんな責任を問えるかは、事実関係によって弁護士の判断が要る問題です。整理の入口はパワハラで訴える相手は加害者個人か会社かで扱います。
同僚とのやりとりで避けたいこと
同僚が相手だと、つい同じ土俵で言い返したり、周りに味方を募ったりしたくなります。次の行動は、後で自分の立場を悪くしやすいので控えます。
- 人前で言い返す・責め返す:「お互いさま」のけんかとして扱われ、事実の確認が難しくなります。
- SNSや社外の場で名前を出して書く:名誉毀損などの問題に発展するおそれがあります。
- 周りに広く話して回る:話す相手は、目撃していて協力してくれそうな人に絞ります。協力の頼み方はパワハラで職場に味方を作るが参考になります。
職場で起きていることを見ていた同僚が力になってくれる場合もあります。見ていた側ができることは職場のパワハラを目撃したらで扱っています。相手が指導係の先輩なら、次に読む先輩からのパワハラ・いじめ:指導係が厳しすぎるときの整理が近い内容です。社長の家族など、社内で相談しにくい相手のときは家族経営の会社のパワハラも見てください。
よくある質問
Q. 同期の同僚に陰口を言いふらされています。会社に相談しても「同僚同士のことだから」と言われそうです。
パワハラ指針は、会社の相談窓口に対し、パワハラに当たるか微妙な場合も広く相談に対応するよう求めています。相手が同僚かどうかより、何をされ、業務にどんな支障が出ているかを記録で示すと、会社が動く材料になります。社内で取り合ってもらえないときは、総合労働相談コーナーで職場のいじめ・嫌がらせとして相談できます。
Q. 同僚のパワハラは、労働局のあっせんで同僚本人と話し合えますか?
労働局のあっせんは労働者と会社の間の紛争を扱う制度で、労働者同士の紛争は対象外とされています。同僚の言動について労働局の手続を使うなら、会社に「職場環境を整えてほしい」「事実を確認して対応してほしい」と求める形になります。同僚本人に責任を問いたい場合は、弁護士に相談して別の手続を考えることになります。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
- ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(問45)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第35条〜第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別労働紛争解決制度(総合労働相談・助言指導・あっせん)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。