仕事を与えないパワハラ:干されたときの記録と会社への伝え方
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上司に仕事を与えられず、干されている状態は、厚生労働省のパワハラ指針で「過小な要求」の例として扱われています。指針は「気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと」を、パワーハラスメント(パワハラ)に該当すると考えられる例に挙げています。ただし、能力に応じて業務を一定程度減らすことは該当しない例とされているため、「なぜ減ったのか」「どのくらい減ったのか」を日付つきで残すことが出発点です。この記事では、記録の付け方、評価や賃金への影響の確かめ方、会社への伝え方を順に示します。
仕事を与えないことは、指針でどう書かれているか
パワハラ指針は、職場のパワハラを6つの類型に分けて例を示しています。仕事を与えない・仕事のレベルを極端に下げることは、そのうちの「過小な要求」に当たります。指針の定義は「業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと」です。
| 指針の区分 | 書かれている例 |
|---|---|
| 該当すると考えられる例 | 管理職である労働者を退職させるため、特別な能力や経験がなくても遂行できる程度の業務を行わせること(指針の例の趣旨) |
| 該当すると考えられる例 | 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと |
| 該当しないと考えられる例 | 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること |
分かれ目は、仕事を減らした目的と程度です。体調への配慮や育成のための軽減は該当しない側に入り、嫌がらせや退職に追い込む目的で外す行為は該当する側に入ります。
指針の例は限定列挙ではないため、例と少し違うから当たらない、とも言い切れません。意に沿わない人を仕事から外して長期間別室に置く行為は「人間関係からの切り離し」の例にもあり、別室に移された場合は追い出し部屋に入れられたらが近い内容です。3要素と6類型の全体はパワハラとは?3要素と6類型・指導との境目で確かめられます。当てはまるかどうかは、労働局や弁護士に事実を示して相談するものなので、ここでは判断の材料をそろえることに集中します。
干されているかを見分ける:割り当ての変化を並べる
「最近仕事が少ない」という感覚だけでは、相談先に状況が伝わりません。いつから、何が、どう変わったかを、前と今で比べる形に整理します。
- 以前担当していた業務・顧客・会議のうち、外されたものはどれか
- 外されたときに、上司から理由の説明はあったか(あれば、その言葉どおりに)
- 今の1日の業務時間のうち、指示された仕事が何時間あるか
- 同じ役職・同じ部署の人と比べて、割り当てに差があるか
- 業務を求めたとき、上司はどう答えたか(無視・拒否・「待っていて」など)
- 外された時期の前後に、上司と意見が対立した・相談窓口を使った・休暇を取った、などの出来事はあったか
最後の項目は大切です。たとえば、社内でパワハラを相談した後に仕事を外された場合、相談したことを理由とする不利益な取扱いの禁止(労働施策総合推進法第31条第2項)と関わる可能性があります。出来事の順番が分かるように、日付をそろえて書き出してください。
日ごとの業務内容を記録する
干されている状態を示すいちばんの材料は、毎日の業務内容の記録です。暴言のような一度の出来事と違い、「仕事がない」ことは1日だけでは伝わりません。日ごとの積み重ねで、期間と程度を見せます。
| 日付 | 指示された業務 | 実際に使った時間 | 自分から求めたこと | 上司の反応・周囲の状況 |
|---|---|---|---|---|
| 例:10/14 | なし(定例会議の招集も外れた) | 0時間 | 9:30 Aプロジェクトの作業を依頼(メール) | 返信なし。同僚Bさんに同じ案件が割り振られた |
| 例:10/15 | 書類のシュレッダー | 1時間 | 10:00 口頭で業務を依頼 | 「今はない」とだけ回答 |
| 例:10/16 | なし | 0時間 | 同日、上司の上司に相談のメール | 翌日面談の予定が入った |
書くときのこつは3つあります。
- その日のうちに書く。 後でまとめて思い出すと、日付や順番がずれます。
- 「暇だった」ではなく、時間と業務名で書く。 「9時〜18時のうち、指示された業務は30分の資料整理だけ」のように数字で残します。
- 自分から仕事を求めた記録を添える。 何もしなかったと言われないための記録です。
記録をどのくらいの期間続ければ相談に使えるかはパワハラの記録はどのくらいの期間必要?、業務を求めたメールの残し方はパワハラのメールを証拠にする方法にまとめています。
評価や賃金への影響を確かめる
仕事を与えられない状態が続くと、次の評価や賞与、昇給、配置に響くことがあります。影響が出てから慌てないよう、手元の資料で次の点を確かめておきます。
| 確かめるもの | 見る場所 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 評価の基準 | 人事評価制度の資料、評価シート | 業務量や成果が評価項目に入っているか。割り当てがない期間の扱い |
| 賃金の決まり方 | 労働条件通知書、雇用契約書、賃金規程 | 基本給・手当・賞与の決まり方、減額の条件 |
| 職務や役職の変更 | 辞令、就業規則 | 降格・配置転換の根拠となる規定があるか |
| 実際の支払い | 毎月の給与明細 | 手当の消滅や減額が起きていないか |
労働条件は、本人と会社の合意で変えるのが原則です(労働契約法第8条)。会社は、合意なく就業規則を変えて労働条件を不利益に変えることはできず、変更が合理的で周知されている場合などに限って変更後の規則によるとされています(同法第9条・第10条)。なお、就業規則の作成と届出が義務になるのは、常時10人以上の労働者を使う事業場です(労働基準法第89条)。
評価が下がった、手当が消えたなどの変化があれば、日付と金額を記録表の欄外に書き足してください。評価の付け方そのものの悩みは上司の不当な人事評価はパワハラ?、降格や減給を言われたときは一方的な減給はパワハラ?で詳しく扱っています。
会社への伝え方:業務を求める文例と相談の順番
記録がたまってきたら、まず上司に業務を求めたことを文字で残し、それでも変わらなければ上司の上司や社内の相談窓口に伝えます。感情や相手の人柄ではなく、業務の事実と期間から書くのがポイントです。
文例(上司へ、業務を求めるメール):「〇〇課長 今週は担当業務の割り当てがない状態が続いています。対応できる業務があればご指示ください。以前担当していた△△の作業も引き続き対応できます。ご都合のよいときに5分ほどお時間をいただけますか。」
文例(上司の上司・人事へ):「〇〇部長 ご相談です。9月20日以降、業務の割り当てがほとんどない状態が続いています。日ごとの記録では、この4週間で指示された業務は合計6時間でした。理由の説明を受けておらず、評価への影響も心配しています。今後の業務分担について相談させてください。」
面談では、記録表を見せながら「いつから」「どの業務を外れたか」「求めたときの反応」を伝えます。仕事を外された事実を相談した人に対して、そのことを理由に不利益に扱うことは禁じられています(労働施策総合推進法第31条第2項)。上司を飛ばして相談するときの言い方はパワハラを上司の上司に相談するとき、上司の上司にも動いてもらえないときは、パワハラの相談窓口一覧の公的な窓口を使えます。
仕事を与えられない日々は、忙しさとは別の形で心をすり減らします。眠れない、朝になると体が動かないといった変化が続くときは、記録より先に休むことや受診を考えてください。上司との連絡のつらさが気になる人は、次の記事の上司のLINEがパワハラに?休日・深夜の連絡と私的なLINEの断り方も参考になります。
よくある質問
Q. 仕事がないなら楽だと割り切ってもいいですか?
割り切れるならそれも一つの選び方ですが、仕事がない期間が長くなるほど、評価や今後の配置で「実績がない」と扱われやすくなります。割り切る場合でも、業務を求めたメールと日ごとの記録だけは残しておくと、後で状況が変わったときに説明できます。
Q. 仕事を与えられない間に、給料を下げると言われました。
労働条件は本人と会社の合意で変えるのが原則で、合意なく就業規則を不利益に変えることは、変更に合理性がある場合などを除いてできません(労働契約法8条〜10条)。まず、下げる根拠が賃金規程や評価制度のどこにあるのかを書面で尋ね、その場で同意書に署名しないでください。根拠の当てはめに争いがあるときは、労働局や弁護士に資料を見せて相談します。
Q. 「能力不足だから仕事を減らした」と言われました。
指針は、能力に応じて一定程度業務内容や業務量を軽減することを、該当しないと考えられる例に挙げています。そのため、理由の説明と、軽減の程度・期間・元に戻す条件を尋ねることが大切です。説明がない、全く仕事がない状態が長く続く、他の人には同じ扱いをしていない、といった事実は記録に残しておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点を収録)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働契約法 第8条〜第10条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。