自宅待機の命令を受けたら:給料・期間・理由を書面で確かめる方法
この記事のもくじ
自宅待機を命じられたら、まず「理由」「期間」「その間の給料」の3点を書面(メールでも可)で確かめます。 会社の責任で働けない休業なら、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う義務があります(労働基準法26条)。理由が懲戒(出勤停止)なのか、調査のための一時的な措置なのか、業務上の都合なのかで、給料の扱いも、その後の流れも変わります。この記事では、命令を受けた日にやること、給料の考え方と計算例、会社に送る確認メールの文例、パワハラとの関係、相談先を順に説明します。自宅待機が違法かどうかなど、個別の結論は出せません。確かめる点と動き方を整理します。
自宅待機の命令を受けた日にやること
自宅待機とあわせて「明日から来なくていい」と言われた場合は、解雇か退職勧奨かを先に確かめます。確かめ方は「明日から来なくていい」と言われたら:解雇か退職勧奨かの確かめ方にあります。
口頭で「明日から来なくていい」と言われた日の対応が、その後の交渉の土台になります。次の順で進めてください。
- 命令の内容をその場でメモする。 日時、言った人、場所、言葉をそのまま書く。「自宅待機」と言われたのか、「休め」「有給を取れ」と言われたのかで意味が違う
- 理由と期間を聞く。 その場で答えが出ないなら、「書面でお知らせください」と頼む
- 署名を求められたら持ち帰る。 同意書や誓約書は、内容を読む時間を取る。「確認して後日回答します」でかまわない
- 業務の扱いを聞く。 私物の持ち出し、パソコンやアカウント、連絡手段、担当業務の引き継ぎ
- 給料の扱いを聞く。 休業手当か、通常の賃金か、無給か
その場で理由が示されなかった場合も、聞いた事実と回答がなかった事実が記録になります。記録の型はパワハラの記録の書き方:日時・言葉・場所・目撃者を残す記入例つきにまとめています。
自宅待機の種類で、給料の扱いは変わる
自宅待機には、会社の説明の仕方に応じて主に3つの型があります。名前が同じでも根拠が違うため、通知書の言葉を確かめます。
| 型 | 会社の説明の例 | 給料の考え方 | 確かめる点 |
|---|---|---|---|
| 業務命令としての自宅待機 | 「調査が済むまで待機」「業務の都合で出社不要」 | 会社の責任で休業するなら休業手当(平均賃金の60%以上)。事情によっては賃金全額を請求できる場合がある | 休業の理由と期間。休業手当を払うという回答 |
| 懲戒処分としての出勤停止 | 「懲戒として○日間の出勤停止」 | 就業規則に定めがあれば無給とされることがある | 就業規則の懲戒の種類、期間の定め |
| 年休・欠勤扱い | 「有給を取って休め」 | 年休なら賃金が出るが、取得は本来労働者が時季を指定する | 本人が同意した日だけか |
懲戒処分や加害者とされた側の自宅待機の意味は、パワハラ加害者の処分の種類:懲戒の段階と自宅待機の意味が詳しいので、そちらも見てください。この記事は、理由の分からない自宅待機を命じられた人が確かめる点が中心です。
休業手当の考え方と計算例(労基法26条)
労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払うことを求めています。厚生労働省のQ&Aによると、「使用者の責に帰すべき事由」は、地震などの不可抗力を除いて広く含まれるとされ、注文の減少も該当すると説明されています。休業手当は賃金なので、通常の給料日に支払われます。1日の一部だけの休業でも、その日に支払われた額が平均賃金の60%に届かなければ、差額を受け取れます。
平均賃金は、直前3か月の賃金総額を、その期間の暦日数(土日を含む)で割った額です。賞与など3か月を超える期間ごとの賃金は算入しません。筆者の計算で、仮に平均賃金の1日分が1万円の人なら、休業手当は1日あたり6,000円以上です。所定労働日が20日ある月を丸ごと休業した場合の目安は、6,000円×20日=12万円です。実際には、休業の日数の数え方や賃金の締め日で変わるため、あくまで目安です。
もう1つ、民法536条2項があります。会社の責めに帰すべき事由で働けなくなったときは、会社は賃金の支払いを拒めないという規定で、不当な自宅待機の期間の賃金を全額請求する根拠として説明されることがあります。範囲は26条より狭い一方、額は全額という関係です。ただし、どちらが適用されるか、他の収入をどう扱うかは事案による判断で、確かめる先は労基署や弁護士になります。
理由と期間を書面で求める:確認メールの文例
自宅待機を命じられたあと、できるだけ早く、書面(メール)で次の点を尋ねます。命令を拒むのではなく、内容の確認を求める形にするのがポイントです。
件名:自宅待機のご命令について(内容のご確認のお願い) 本文:「○月○日に、○○部長より口頭で自宅待機を命じられました。業務上必要な対応のため、次の点を書面またはメールでご教示ください。1. 自宅待機の理由 2. 自宅待機の期間(開始日と、終了または見直しの時期) 3. 自宅待機中の賃金の扱い(休業手当か、通常の賃金か) 4. 自宅待機中の連絡方法と、私が行うべき対応(業務、報告、外出の制限の有無) 5. 命令の根拠となる就業規則の条文。回答は○月○日までにお願いします。ご回答をいただいたうえで、今後の対応を検討します。」
回答が得られれば、そのまま証拠になります。回答がなければ、「尋ねた事実」と日付がそのまま記録になります。会社が期間を決めずに自宅待機を続ける場合は、1〜2週間ごとに「現在の状況と終了の見込みをご教示ください」と同じ形式で再度尋ねます。
自宅待機がパワハラの問題になるとき
パワハラ指針は、職場のパワハラを「優越的な関係を背景とした言動」で「業務上必要かつ相当な範囲を超え」て「就業環境が害される」ものと定義しています(3つすべてが要件)。6類型のうち「人間関係からの切り離し」には、意に沿わない労働者に仕事を外して長期間別室に隔離したり、自宅研修させたりすることが該当する例として挙げられています。一方で、新規採用者の育成のために短期間集中的に別室で研修を行うことや、懲戒処分を受けた労働者を通常業務に戻す前に一時的に別室で必要な研修を受けさせることは、該当しない例とされています。
つまり、自宅待機が嫌がらせにあたるかどうかは、期間の長さ、業務上の必要性、他の人との比較、理由の説明の有無などを合わせて見ます。この記事で「パワハラです」と断定することはできませんが、見るべき点は次のとおりです。
- 業務上の必要性の説明があるか(調査、改修、研修など)
- 期間は短く区切られているか。見直しの時期が示されているか
- 同じ状況の他の社員にも同じ措置がとられているか
- 相談や申告の直後に命じられていないか(相談を理由とする不利益な取扱いは、労働施策総合推進法31条で禁じられている)
相談の直後に自宅待機などの不利益を受けたと感じるときは、パワハラを相談して悪化したら:報復・不利益な扱いへの対処も参考になります。仕事を与えられない状態が続く場合は追い出し部屋は違法?入れられたときの記録と、居座る・辞めるの準備で選択肢を確かめてください。減給とあわせて起きているなら一方的な減給はパワハラ?同意していない減給の考え方と相談先が関係します。
相談先:賃金は労基署、嫌がらせの整理は労働局
休業手当や賃金の未払いは労働基準法の問題で、労働基準監督署の所管です(労働基準監督署に相談する方法)。労基署は受付時間が平日8時30分から17時15分で、予約の要否は署ごとに違うため、行く前に電話で確かめます。自宅待機が嫌がらせにあたるか、会社がどう対応すべきかを相談するなら、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーが窓口になります。電話番号や受付時間はパワハラの相談窓口一覧:電話番号・受付時間・できることの早見表で確かめてください。
- 命令の日時・言葉を記録する
- 理由・期間・賃金の扱いをメールで尋ねる
- 回答(または無回答)を保存する
- 賃金の不足は労基署、嫌がらせの整理は労働局・弁護士へ
よくある質問
Q. 自宅待機の間は、会社に言われたら何でも従わないといけませんか?
自宅待機中も雇用は続いています。連絡がついて指示に対応できる状態でいることを求められるのが一般的ですが、外出の禁止や毎日の報告まで求められるかは、会社の命令の内容と目的によります。命じられた内容は書面かメールで受け取り、疑問は文章で尋ねて記録を残してください。
Q. 自宅待機中に有給休暇を使うよう言われたら、応じるべきですか?
年次有給休暇は、労働者が時季を指定して取るのが原則で、会社が一方的に自宅待機の日を有給に振り替えると、給料の扱いが変わります。休業手当との差が出る場合があるため、その場で返事をせず、「自宅待機の日の賃金をどう扱うか」を書面で確認してから決めてください。
Q. 自宅待機が何か月も続いています。どこに相談すればよいですか?
賃金が支払われていない、または休業手当の額が分からない場合は労働基準監督署か総合労働相談コーナーが向いています。仕事を与えない状態がいじめ・嫌がらせにあたるかの整理は、労働局のハラスメント相談窓口や弁護士で、期間と経緯の記録を見せて相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 労働基準法 第12条・第26条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 確かめよう労働条件 賃金 Q&A(休業手当)(厚生労働省)
- 民法 第536条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(パワハラ指針 令和8年10月1日適用時点の本文を収録)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。